聖女とは
明けましておめでとうございます。
しばらく黙ってお休みしてごめんなさい。
また週一更新目指してガンバります。
上流の教育に一生懸命になってたある日、宰相さんからの伝言で、翌日は勉強を休みにして、朝迎えに行くと言われた。
聖女としてに関することだと使いの人に聞いて、緊張で昨夜はあまり眠れなかった。
「もしかして初仕事かな? でもそもそも聖女ってなにするの…?」
アルラにドレスを着付けてもらいながら呟く。
普段着のドレスにはいい加減慣れてきたけど、Tシャツとデニムが恋しくなる。
締め付けられるし、動きにくいしで良いことない。
幼児用はさすがに絞めて着ることはないみたいだけど、基本ズボンしか履かせてこなかったあかりは感覚が掴めないらしくて、パニエで広がったスカートがテーブルやソファーの角に当たるたびにビミョーにバランスを崩して転びそうになってる。
その後をアワアワしながら追いかけるリーサを見て、どっちが母親なのか分からなくなる。
「聖女様のお仕事と言えば、教会でございましょうか?」
髪を器用に編み込むアルラを鏡越しで見ていたら、わたしの独り言に返事をくれた。
「教会かぁ。聖女の儀をやったとこだよね。小さいガラス玉みたいなのを持っただけっていう…。もっと厳かに呪文を唱えたりするのかと思ってたから、ちょっと拍子抜けしちゃったけど、何時間もかかるようなのとかでなくて良かったって思ったんだよね~」
「まあ、そうでございましたのね。マリー様にはお疲れが出ないようでよろしゅうございました」
「え? 聖女の儀ってみんなどんなのか知らないの?」
「はい。聖女様がそもそもこの国にいらっしゃること自体が珍しいことでございますから…わたくしは大変幸せでございます」
いやいや、ここで快適に過ごさせてもらってるわたしら親子がすごく幸せでございますよ。
「わたしはアルラがわたしと一緒にいてくれるのがすごく幸せだよ。いつもありがと」
準備が終わってお茶を楽しんでると、メイドが来客の引き継ぎをしてくれた。
「聖女様。宰相様がおいでになりました」
「マリー様、急なお呼び立て申し訳ありません。ラーディア王国で宰相を勤めさせていただいております、ジェイコブ・ライガと申します。ジェイクとお呼びください」
「ジェイク様、おはようございます。マリコ・シノハラです。マリーとお呼びください。今日は聖女としてに関することだと伺いました。もしかして初仕事でしょうか?」
国王様といい、クラウドさんといい、美中年寄りの人たちと会ってたから期待していたら、宰相様はなんと!
フツメンだった。
(変な話だけど、ちょっとホッとする)
アルラ曰く31歳だそうで、若くで宰相を勤めるなら当然中身非凡ってことなんだけど。
でも、それでも見た目平凡ってホッとする。
美形の集団って遠くから見てる分にはミーハーできるけど、近づきたくはない。
美形を見たい気持ちと、フツメンにホッとする相反する気持ちにモヤモヤする。
(でもホッとする方が強いかな)
「聖女様とはなにかということをお話しさせていただきます。我が国においての聖女様の意味と役割です」
宰相様曰く、聖女とは異世界から迷いこんだ人のことで、これまで男性が現れたことはないそうだ。
ほとんどの人が聖女の儀で聖女としての力が認められるそうで、わたしが思ってた聖女の条件は一切関係ないそうだ。
………。王様め。
ただ、当然いろんな性格の人がいるわけで、性格に難ありと思われた場合、出なかった色が聖女の色だと言って聖女としては認めず、最初だけこの国や世界の常識を教えて、生活の援助や就職の斡旋をして市井で暮らしていけるようにするだけだそうだ。
わたしがクラウドさんにお願いしてたことそのままだね。
「そんなことまでわたしに教えてもいいんですか?」
「あなたは聖女様として認められましたし、なにより、性格にも問題がないようですからね。これから国の中枢で仕事をしていただくにあたり必要な知識はお伝えしなければなりません。今後も新しい聖女候補が現れることもあります。国の運営は人に言えないことの方が多いのです。きれいごとだけでは国民が安心して暮らせる国はつくれないのですよ。それに、あなたはすでに大人です。汚いことも割りきっていただかなければいけません」
哀しいことですが、と言って宰相様は微笑む。
「聖女様が現れるのは国に何らかの災害が起きるときと言われています。戦争か、天変地異か、魔物の急増か。そのときに聖女様としての仕事があります。大変な仕事だとは思いますが、どうぞよろしくお願いいたします」
宰相様は頭を下げて、仕事に戻っていった。