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 わたわたと毎日が過ぎて今年もあと一月となりました。

 忙しい時期は怪我や病気も増えてきます。

 健康には気をつけてお過ごしください。


 読んでくださってる方、ブックマークを付けてくださってる方、いつもありがとうございます。

 《聖女の儀》のあと王様との昼食を終えて案内されたのは、お城の中に用意されたわたしとあかり用の部屋だった。

 客室として使われる部屋のうち一部屋を好きに使っていいと言われたけど、花瓶の花や壁には絵画が飾られていて、撤去をお願いした。

 わたしたちを案内してくれた部屋付きの(!)メイドさんは少しビックリしたあとはすぐに手配してくれた。

 せっかく用意してもらってたのに余計な仕事を増やしてしまって申し訳なかったけど、傷を付けてしまうかもしれないのとあかりが怪我をしてしまいそうなのが怖くてどうしても譲れなかった。

 最近は家のイスやテーブルの上によじ登って遊ぶことが多いから、チェストやテーブルの上には物を置かないようにしていたから。もちろん行儀の悪い足はペチペチと愛の平手打ちを食らわせて。


「マリー様、お茶をお持ちいたしました」


 お昼寝をしてるあかりをベッドに寝かせてソファーで一つ大きな伸びをしたわたしの前にわたし付きの侍女のアルラが紅茶を置いてくれた。

 …そうです、メイドさんとは別に侍女さんまでつけていただきました。


「アルラさん、ありがとうございます。すみません、いろいろお仕事増やしてしまって。せっかく部屋もキレイに飾ってもらってたのに」

「お気になさらないでくださいませ。わたくしどもの考えが至らなかったせいでございます」


 わたしが頭を下げると、アルラはゆるく微笑んでくれた。


「マリー様とアーリー様のお世話をさせていただく者達がみな未婚でございまして、特にアーリー様にとって何が危険かというものも一通りしか学べておりません。こちらの不手際でご不便をお掛けすることがないよう気をつけてまいりますが、何かございましたら都度お言葉をいただいてもよろしいでしょうか?」


 うわふっ。


(わたしそんな風にしていただくような高尚な者ではありませんからー!)


 心の中で叫ぶけど声には出来ない。

 《聖女の儀》なんて選定の儀式があるような地位に何故か選ばれてしまったんだし、これがこの世界の…この国の? 常識なんだろうから。


(立場を知らなきゃいけないだろうな…)


「あの、アルラさん。お願いがあるんですが…」

「アルラでけっこうでございますよ、マリー様。申し訳ございません、途中で遮ってしまいまして」

「あぁ、いえ。あの、わたしこの国に来て一月も経っていません。それに、産まれてこのかた、一般庶民として暮らしてきました。急に聖女なんて地位になってしまってもどう振る舞って良いか分かりません。なので、どなたかにいろいろと教えていただきたいと思ってるんですが、どうなんでしょうか? 国王陛下にお願いするのは迷惑になりますかね?」

「……、教養の教師をご希望されるということですか?」


 図々しかったかな?

 こういうことは国の恥になるから寧ろやらされるくらいなものだと思ってたけど。

 アルラは目を丸くしてこっちを見返した。


「はい…、やっぱりダメでしょうかね? 国王陛下もお忙しいでしょうし、お仕事増やしちゃいけないですよね…」

「いいえ、申し訳ございません。教養の教師を付けさせていただくというのはもともとマリー様にお伝えすることでしたので、マリー様から仰っていただいてこちらとしても有り難いことでございます」


 あ、良かった。やっぱり付けてもらえるんだ。

 ホッとして入れてもらった紅茶を飲んだ。

 おいしい。


「マリー様は勉強熱心な方なのですね。ご自分から教師をご希望されるとは思いませんでした」


 わたしが息を吐いたのを見計らって言った。

 こういうのを見習えばいいのか。ふむふむ。


「勉強はキライです。物覚え悪いし」

「でもご希望されるのでごさいましょう?」

「クラウドさんや国王陛下にはこんなに良くしてもらって、なおかつ聖女としてお城にいさせてもらうので、それなりの身分の方々とお会いすることもあるかなって思ったら、下手な所作は出来ないですよ。それこそ国王陛下に恥をかかせてしまったら恩を仇で返すことになりますから」


 ホントは聖女じゃないって証明されたらもうちょっと気楽だったかもしれないけど。とは言えないな。

 恩も返せないしね。


「マリー様が聖女でいらっしゃる理由がわかりますわ。大人になってから教師を付けると言われると怒ってしまわれる方が多いですのに」


 プライド的な問題で。

 なるほどとしか言えなかった。

 貴族がそんなこと言われたら確かに怒るかもしれない。

 家でのそれまでの教育を否定されるんだから。


「今のわたしは子どもと一緒です。お金の単位も標準価格も知らないし、生活すら一人で出来ませんから」


 だからそんなに誉めないでください。とってもいたたまれないです。





 と、いうわけで、わたしには無事、教師を付けてもらえることになった。

 読み書きと世界史を紺色の長い髪を綺麗に編み込んだ琥珀色の縁の眼鏡をかけた、ウィンダリン先生。

 一般教養とマナーを黒髪と碧色の目が印象的なカーラ先生。

 ダンスを薄茶色の短髪を後ろに撫で付けた初老の唯一の男性教師のアレックス先生。

 どうぞ、お手柔らかにお願いいたします。

 子どもみたいには飲み込みも良くないので、見捨てず、くれぐれも、お手柔らかにお願いいたします。

 大事なことなので二度言いました。

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