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聖女の儀

 ギリギリ日曜日。

 土日どっちかにはアップするようにガンバります!

 読んでくださってる方、ブックマークをしてくださってる方、そして、評価してくださった方、いつもありがとうございます。

 王城に隣接されている教会の一室に祭壇とテーブルと一人用ソファーが2つずつ向かい合うように計4つ備えてある。

 そのソファーに座るように言われて、あかりをだっこして座った。

 ここまで連れてきてくれたアシマさんはわたしの後ろに控えるように立っている。まるでわたしが護衛対象のようだ。


「それでは、始めさせてもらいますな。わしは教会の責任者でガート・ハバルデートと申します。〈聖女の儀〉を執り行います。そして、この者は宮廷魔術師長のジョセフ・ヴルーリです」


 そんなわたしたちに向かい合うように座るおじいさんと初老に手が届くかといった年齢の男性。

 真っ白な髪を肩までで揃えて、優しげな目でわたしとあかりを見てるのが教会責任者のガートさん。

 魔術師らしく黒くて足元まで隠すほど長いローブを体に巻き付けてるのが宮廷魔術師長のジョセフさん。魔術師長ってことは、わたしをここまで案内してくれたアシマさんの上司ってことかな。


「第二騎士団大隊長のクラウドさんに助けていただきました、マリコ・シノハラとアカリ・シノハラです。マリー、アーリーとお呼びください。アカリはわたしの娘です」


 王様たちとのやり取りを二度も繰り返したくなくて自分とあかりの関係も伝える。

 たぶん王様たちがここにいたらまた笑ってたと思う。


(それにしたって、15歳はないよね)


 たとえ顔が童顔でも肉の付きかたとか、骨格とかでもわかるんじゃと思うが、実際勘違いされたからには伝えた方が後からの面倒は減るだろう。


「ほう…。親子でしたか。それは、いや…」


 やっぱりというか何というか。

 勘違いを正せて良かったのだと思う。


「はい。あかりはわたしが産んだ子です。小さい頃はわたしもこの子とそっくりだったみたいです。同じ顔だと言われましたから」


 アルバムを見ると父親の面影は全くないと言えるほどわたしの赤ちゃんのころとそっくりそのままだった。

 今のところ父親似なのは髪質くらいじゃないだろうか? それも赤ちゃんの時期を過ぎるとどう変わるかわからない。

 写真なんてものはないだろうから、聞いた話ということにしたけど、今後父親の面影を見ることがあるのか…。ガンバれ、パパの遺伝子。


「ずいぶん若くして結婚をしたのですな。…それでは始めさせてもらいましょう」


 ガートさんがそういうと、魔術師長のジョセフさんが懐から凝った意匠の木の箱を取りだした。

 そう大きなものではなくて、5㎝×5㎝×5㎝くらいの箱が開かれると、出てきたのは透明だけど、虹色に反射して輝く球だった。大きさはビー玉より二回り大きいくらいだ。


「はぁぁぁ~~~~~~…。あかり、見て見て。キレイねぇ。キラキラしてるねぇ」

「あ~、あ~」


 頭の上によじ登ろうとしてたあかりを抱き直して球に向かせると、あかりの目の色が変わった。

 球を我が物にしようと体ごと手を伸ばして力ずくで取ろうとする。

 わたしがネックレスや指輪が好きなせいか、あかりもアクセサリー系を見かけると着けたがるから、そうなるかなとは思ったけど、予想より力が強い。


「あぁ、ごめんごめん、あかり! ママの指輪貸してあげるね~、はいどうぞ! これで遊んでてね!」


 運気が上がるとかいうピンキーリングをあかりの指にはめる。メレダイヤが一つ付いたわたしのお気に入り。

 いずれはあかりが使うか売るかすると思う。ピンクゴールドだし、地金で1000円くらいはするでしょ! …って日本に帰れるの?


「これは〈聖女の儀〉に使う〈珠〉でございます。貴女が聖女であれば触れると光るようになっています。お二人とも手にとってください」


 あかりが落ち着いたところでジョセフさんが説明してくれる。

 〈聖女の儀〉って呪文やら祝詞やら唱えたりするんじゃないんだ。

 これもうっかり落として割れたら恐ろしいことになる…。しかも、わたしはともかくあかりも判定してもらわないといけないから、投げたり逆に手放さなかったりしたときのことまでもう考えたくない。

 朝早くからずっとそんなことばかり考えてて疲れてしまった。

 いっそのこと、この人達がこんな小さい子に持たせるんだからと、責任転嫁してしまいたい。


「これを持てばいいんですね」


 それでも子どものしたことの責任は親がとらなきゃいけないんだから、慎重に持つ。だっこしたままだと何かの拍子に落とすといけないので、あかりは隣のソファーに座らせてから。

 心配性で将来ハゲるよと友達にも言われ続けてるけど、こればっかりは性格だから仕方ない。

 両手でしっかり持って深呼吸したとき〈珠〉の内側から黒い光が広がって柔らかく光始めた。

 てゆか黒って。しかも黒く光るって。


「えっ、わ、マジで!?」


 ジョセフさんに言われた通り本当に光った! 黒だけど!

 てか聖女ってフツー純潔が絶対条件でしょー!?

 聖女なら光るって言ってて実は誰が持っても光るんじゃないの、この〈珠〉!


「ほぉー、これはまた綺麗に光りましたな。では次、アーリー様ですな」


(えっ? 二人とも調べるって、どっちかが聖女だからって意味じゃなかったの?)


 二人のうちどっちかが聖女だから二人ともだと思っていたから、これで終わりかなとだんだんと光が収縮していって持つ前みたいに表面が虹色に反射する〈珠〉を戻そうとしてたわたしの手が止まる。


「マリー様、アーリー様にその〈珠〉をお渡しください」


 ジョセフさんに促されて隣のソファーに立ち上がってたあかりを座らせて〈珠〉を渡した。


「あかり、落とさないようにしっかり持ってね。お手てちょうだいしてごらん」


 ソファーの前に膝立ちになってゆっくり手渡す。

 じっと持ってると今度は白く光だした。

 どうなってるの?


「おぉ、これは素晴らしい。マリー様、アーリー様、お二人とも聖女としての力は十分にありますな。マリー様は闇の聖女、アーリー様は光の聖女。光と闇は表裏一体。どちらが欠けても生き物は生きていけません」


 ガートさんが嬉しそうに言うのを聞きながら、あかりが意外とあっさり返してくれた〈珠〉を箱に戻すと、ジョセフさんが懐にしまった。


「お二人ともお疲れ様でございました。先ほどのお部屋にご案内します」


 アシマさんに促されて立ち上がる。


「ガートさん、ジョセフさん、ありがとうございました。これで失礼します」

「と」


 わたしが二人に挨拶すると、あかりも頭を下げた。

 まだまだ下げかたが足りないよ。


「いやいや、こちらも有意義な時間でした。また何かの折りには教会に遊びに来てくだされ」


 あ~、あっさり終わって良かった~。

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