聖女の条件ってやっぱり、
魔法がまだ出てきません…タグ詐欺になってる…。
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「取り乱してすまなかった。えーと、何の話だったかな?」
騒ぎだしてすぐ、王様が仕切り直した。
ちょっとみんなでパニックになって、あかりがびっくりして泣いたためだ。
大人ばっかり五人、みんなバツが悪そうな表情である。
ごめん、あかり。
「ご自分が聖女だと思わない理由です、陛下」
「そ、そうか。ではマリー、あー、自分が聖女ではないと思う理由は今までそう思うような能力も出来事もなかったからだと、そういうことだな?」
あれ、なんだったっけ? なんて思ってたら、文官さんが王様の後ろからボソッと応えた。あれだけ騒いで元を覚えてるって凄ーい。なんて、話を書き留めてたみたいだから当たり前か。
非公式の場だから公文書にはならないけど、わたしたちの処遇を決めるために話したことはメモっとこうなんてところかな。
「そうですね、あとさっきも言った通り、わたしは結婚して子どもも産みました。勝手なイメージでしかないですが、聖女というのは若くて乙女であることが条件じゃないかと思っているので、そもそもわたしは聖女ではありえないと思ってます」
やっぱり一番はそれだ。
所謂異世界召喚ものだと、そういう能力が付与されてるとかあるだろうけど、聖女の条件は若いこと・純潔であることがセオリーじゃないかと思うから、わたしは隊長さんに聖女ではないと言われた後のことを聞いたのだ。まさかわたしが15歳くらいで姉妹だと思われてたとは思わないし…。
それはそうと若いのはともかく、純潔はやっぱ外せない条件でしょ。
「なるほど。マリーの考えは分かった。しかし、手間をとらせるがマリーとアーリーには先見師の言葉にあったヲルト草原に現れた者として聖女の鑑定を受けてもらう」
「はい。もともとその条件で人がいるところまで連れてきてもらいましたので」
「うむ。お前ならば大丈夫だ。終わったら食事にしよう」
「ありがとうございます。遠慮なくご馳走になります。でも、できれば賓客用ではない、高くない食器でお願いします。うっかり壊したらと思うとお茶も飲めません」
「ブッ…フッ、フッフッ、分かった。そう伝えておこう。」
一滴も口をつけられてないカップをチラッと見て噴き出した王様は大事な約束をしてくれた。
紅茶に全然口をつけないのもどうかと思ったのに、ご飯もとなると、こっちの腹の中を変に勘ぐられてしまうかもしれない。
飲まなかった理由と解決策はしっかりとお願いせねば、なにより余りにも礼儀知らずだしもったいない。
まだ今後どうなるのか確定してないが、飛ばされたのがヴィッセル陛下の国で良かった。
聖女じゃない、じゃあ出ていけ、なんて言う王様だってきっといるだろうから。下手したら連れてきておいて、聖女を名乗った反逆者なんて言いがかりをつけるようなのもいるのかもしれないし。
(うわ、ゾッとした)
考えないようにしよう。幸いにもそういう王様じゃなかったんだから。
あかりを抱きしめると少し気持ちが落ち着いた。無事だと確かな確認が出来たからだろうか。
「そろそろ迎えが…来たな。宮廷魔術師のアシマだ。聖女関連の責任者だ。終わったらまたここまで案内をさせたらいい」
わっほい、魔術師!
軽やかなノックからすぐに部屋に入ってきたのはまた若い女性だった。20代前半くらいの菫色の髪と薄い空色の目をした、キャリアウーマンっぽい雰囲気の人。
「アシマ・シヴァントと申します」
「マリコ・シノハラです。この子は娘のアカリ・シノハラです。マリー、アーリーとお呼びください。よろしくお願いいたします」
『娘』を強調しておく。
そこの王族と騎士達と文官! 笑わない!
「ではマリー様とアーリー様、ご案内します。半時ほどで終わると思いますが、先にすませておきたいことなどはありますか?」
「あ、じゃあお手洗いに寄らせてください。あかりを連れていきたいので」
「分かりました。それでは陛下、しばらく失礼いたします」
「ああ。マリー、アーリー、行ってこい」
「はい。あかり、いってきますして」
あかりの手をとってバイバイの形に振らせる。
「あーしゅ」
「行ってきます」
◇◇◇◇◇
「文献と違ってずいぶんとかわいらしい聖女だな」
「はい。鑑定を受けていただける方で良かったです。いかな聖女でも人間性に難有りでは城に据え置く利はあまりありませんからね」
「しかし聖女が本当に現れたとなると何か対策を取らねばなるまいな」
「すでに各地に偵察を送ってあります。我々もヲルト草原から王都までの道中は探ってまいりましたが、特筆すべき点はありません」
「そうか。引き続き頼む」
「はっ!」