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6. サファゼ村

 小川の対岸沿いに街道があったらしい。もう気が抜ける程近くに。

そこから30分も歩くとサファゼ村に着いた。


 村の境界は簡単な木の柵だ。この近くには大型獣が来ないのでそれで充分らしい。

村の入り口付近は学校のグラウンド位の大きさの広場になっていて、

野菜や生活雑貨を売る露店が盛況だ。

ケモ耳の子供達も元気に走り回っている。

広場の周りにはロッジ風の素朴な建物が並んでいて、

それらは宿屋や酒場・教会・商店・集会所などだそうだ。

街道沿いだけに、ちょっとした駅前通りって感じかな。

その奥には、民家や畑。

村の奥の方が、おれが思ってた村ってイメージに近い。


 100人ちょっとの小さな村だけど、工芸品で盛んなジロー町に続く幹線道路沿いなので、

立ち寄る人も多く活気がある。厩つき、荷車も停められて安心の大きめの宿屋も数軒ある。




「父ちゃーん! おかえりガォ! 遅かったガォ!」

跳ねてきたコロコロとした黒い物体が、アマーボさんの首に飛びついた。


「ウン、ただいま。今日はイノシシ」

「ナットー! ただいまピョ」

「《ナットー》言うなゴ。狩りはどうだった、足引っ張らなかったガォ?」

この面倒見の良さそうな子がナットのようだ。


 と、いうことは……呑んで喧嘩してブラブル母にぶん殴られたのはアマーボさん?!

ブラブル母、おっかない。


「うん、オバスライムに追いかけられて、迷子になったピョ。お兄ちゃん達に助けてもらったピョ」

上機嫌に報告してるけど、迷子は恥ずかしいと思うよ。


「このお兄ちゃんはイイニオイがするニャー」

ぼんやりしてる間に、おれは広場で遊んでいた子供たちにとり囲まれてた。


 なに、おれから動物魅了とか、変なフェロモンでも出てる?

自分で嗅いでみた……ほんのり汗臭いけど……イイニオイって、もしや食欲的な……。


 抱きつかれ、よじ登られ、頬を擦り付けられ、匂いを嗅がれ。

子供たちの重さに耐え切れず、尻もちをつくおれ。


「兄ちゃんはぼくのだピョー! ぼくが拾ったピョー!!」

と地団駄を踏み、泣き叫ぶブラブル君。拾われてません。


「お兄ちゃんが潰れるから、乗るのはやめなさい」

慌てて子供たちを引き剥がそうとして、肘鉄を受けるサンダー。

本当に、いつもお世話かけます。




 ちょっとした騒ぎに、大人たちも集まってきてしまった。

暇そうなお爺ちゃんお婆ちゃんだけじゃなくて、買い物中の奥さん達や露店のおじちゃんまで。


「何の騒ぎだい。大物が狩れたのかい」

「いや、いつもの獲物だ。イノシシ2頭ってとこだ。

そこに埋もれてる兄ちゃんと犬族の兄ちゃんに、うちのブラブルが助けてもらったんで

村に連れてきたんだが……。あー。見ての通り、子供らに懐かれて揉みくちゃにされてるようだな」


 ジュラブルさんは、「誰かタオル投げてくれ!」って有り様のおれを見ながら、

おれ達が移界人であること、この世界に来たばかりであることを話した。


「犬族の移界人さんは初めてだね」

「兄ちゃん達はどの神の恩寵で来たのかね」

「お兄ちゃん、だっこー!」

「移界人が住むとなりゃ、サファゼも田舎とは言われないぜ」

「可愛いお兄ちゃんに、男前なお兄ちゃんねぇ。異界の人はみんな美形なの?」


 この村の住人は好奇心旺盛なんだろうか。

うわーなにこれ、皆ガッツリ前のめりで食いついてくるんだけど。

子供たちも引いてるわ。


「まあ、待て待て。一度に話かけるな。困ってるじゃあないか」

「うん。来たばかりだし、質問されても分からない事ばっかりだし。

先にこっちの世界の事を教えてくれると、ありがたいんだけど」


「それなら長老の所へ行くといい」

村人が異口同音に言う。

やっぱりこの世界でも、頼れるのは長老だね。

で、長老の所へ行くこととなりました。



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