土下座は精神に優しくない件について
タイトルは天から降ってきました。。
適当??いいえこれは神からの思し召s...
一部加筆修正いたしました
羽ばたく事もなく優雅に空を舞うロディの上で、俺は惰眠を貪っていた。
空の上とはいえ、魔獣は多くエンカウント率も半端ないのだが、そこはそれ。
ロディに防衛するよう頼んでいたので全く危険はない。
なんとも安全な空の旅だ。
だから揺れも無く、結界のおかげで風圧もない居心地のよさについついうとうとし始めてしまったのだ。
俺に罪はない。うん。
まあ最初は、物珍しさから「おぉ!」とか歓声を上げていたんだけどねー・・・
何せ今は海の上を航空中だ。
俺の興味を惹くようなものは何一つ無い。
というか、目につくところには何もない。
意外と島と島の間は遠いんだなーと地図上の感覚を訂正するが、急ぐ旅でもないので別に困りはしない。
疲れ知らずのロディも、横から飛んできた空飛ぶ蛇を叩き落としている。
・・・――――――今日も平和だ。
・・・・とかのんびりしていたら目の前に突然鳥頭人間×2が現れた。
魔力は感じられないから突然という訳じゃないんだろが、うとうとしていた俺からすれば普通に突然だ。
辺りに注意など俺は払っていなかったからな!!
鳥でも人間でもない、バッチリ鳥頭人間は警戒度100%な雰囲気を隠そうともしない。
猛禽類系の顔は、鷹とか鳶系に似ていて鋭い顔つきで睨まれると若干怖いモノがあるんだがね・・・。
頭以外の体は人間で、背中には茶色い羽、そんで手には俺に向いた鋭利な槍。
羽根が覆う顔と人肌の境界線が気になるところだが、言うまでもなく今はそんな事を言っていられる状況ではない。
――――・・・おぉう??
もしかしなくても俺、敵認証されてるー??
余談だが、何故ロディがこの鳥頭さん達を攻撃しないのかというと「人型のモノに関しては攻撃されるまで待機」という命令が俺から下されているからだ。
人型だったら、お話が出来そうじゃん??
とりあえず、敵意が無い事を示すために両手を上にあげるが相手は警戒心を無くさない。
一応魔獣という疑いもあるので、油断はしてないがこの世界には獣人という種族がある。
下手に攻撃して、この世界来て初の獣人との絡みを無くすのは忍びない。
「何者だ!」
おぉ、喋れるってことは獣人か。
グスタフ情報曰く、魔獣でも知能のある力あるものは喋るんだがそれは高位のものだけなんだってさ。
つまり、喋れる動物に出くわしたらそれはイコール獣人と考えて良いとのこと。
誰何をする声に俺は、なんと答えるべきか一瞬迷った。
答えは同じく一瞬で出たけど。
「俺は、キラ。ギルド所属のただの旅人だ」
【魔王】がただの旅人かどうかは兎も角として・・・ね?
彼らは俺の事を知らないんだから問題は無いだろうけど。
ちなみに、本名を名乗らなかったのは素性を隠したかったわけじゃない。
俺の名前の知名度なんてこの世界じゃ高が知れているしね。
そうじゃなく、この世界に居る間は名字など意味が無いと悟ったからだ。
いちいち馬鹿正直に名乗ったところで、名前と名字を一緒くたにされるだけ。
ならば、もう良くないか?という惰性気分で名字を名乗るのはやめたのだ。
面倒は嫌いなんだ
呪文「衣嚢」を小さく唱え、ポケットに手を突っ込みギルドカードをこれ見よがしに見せつける。
ギルドカードに身分証明証としての威力が生まれるのはランクが上位のモノだけで、下位のモノにはこの恩恵を期待することはできない。
が、これ以外に身分を証明するものを生憎と俺は持ち合わせていないのだ。
藁にも縋る・・・というよりは「これで済めばいいなー」という淡い希望からの行動だが当然のように俺がもつカードのランクは最低ランク。
な・の・で、勿論俺自身これで納得して貰えるとは思っていない。
「ランクの低いギルドカードに身分証明をする力が無いのはこの世界の常識です。ご存知ですよね?」
「あー・・・、まぁ一応。
―――・・でも、ここでこんな風に尋問するのがこの世界での常識だとは流石に知りませんでしたよ。」
思っていなかった・・・が、相手の断定的な言葉にさしもの俺も、イラっとした。
ただ入国したいだけなのに、何故こんなところで足止め食らって、なおかつ尋問を受けなければならないのか。
旅に時間がかかるのは別に気にしないが、無駄なところで時間が取られるのは全く面白くない。
「えぇ。普段はこのような事はいたしません。ですが、貴方が騎獣としているその生き物が少々問題でしてね」
表情の読めない鳥顔が、ロディを見る。
一瞬の沈黙。そして瞬時に理解。
・・・・しまったー。原因はロディか。。。
全くもって俺は気にしていなかったが、確かにロディは傍から見ると恐ろしい。
白いジャロディスタは神聖で荘厳だったが、黒いジャロディスタは瞳が深紅なのも相まって確かにぞっとする見た目かもしれない。
それも、初見ならなおさらだろう。
それが突如空を飛んで来たのだ。警戒もしようというものだ。
俺の認識不足。
今の状況はどう考えても、この世界には沢山のモンスターがいるんだから問題なかろうと思ってしまった俺の甘さが招いたことだった。
「あー・・・、申し訳ない。
・・・浮遊」
純粋に悪いと思ったので素直に謝って、俺は魔法で体をロディから軽く浮かせ、宙に制止したまま微動だにしない操り人形に影に戻るよう頼む。
俺の命令に反応したロディは溶けるように俺の中に消えていき(飛んでいて影が無い為だと思われる)、後に残ったのは俺と鳥頭さん達だけ。
「驚かせてしまって申し訳ない。アレに害は無いし、勿論俺にも害意は無い。・・・だからとりあえずその槍を下ろしてくれないだろうか??」
もう一度素直に詫び、頭を下げる俺を見た鳥頭さん達はとりあえず脅威は去ったと判断してくれたのか、言った通りに槍の矛先を下ろしてくれた。
先端恐怖症って訳じゃないけど、地味に怖かったので一安心。
分かってくれる人(鳥??)でよかったー
「身分証明になるかどうかは分からないが、俺はアルテミス王国のシャーリア街の教会の神官長と面識があるんだが・・・。確認して貰えないか??」
槍は下ろしてもらえても、警戒が解けていない様子なので両手を上にあげたまま俺はお願いしてみた。
神官長と言えば、他の国でも有名なんじゃねーかなー??
とグスタフの威光に期待した訳だが・・・・
「何!?お前、七大教会の神官長様と知り合いなのか!!??」
と大いに驚かれた。
・・・・・・・・うぇーい。
グスタフったら、意外と有名人なのねー
てか、七大教会ってなんぞや?
「ま・・・まぁ・・??」
勢いよく訊ねられて腰が引ける俺を見つめた鳥頭さん1号は2号さんに「至急確認を!!」と指示を飛ばす。
神官長ってそんなにスゴイ立場なのかーとかのんびり考える俺の傍らで、2号さんが風のように吹っ飛んでいく。
お手数おかけしまして。。
ごめんねー
しばらく時間が経ち
軽く威光を借りるつもりが、何だか結構な大事になりかけているのかも・・・・と心配になりかけたころに2号さんが、去った時と同じような速度で帰ってきた。
慌てたように1号さんに耳打ちをして・・・・・・
「申し訳ありませんでした!!!!!!」
と二人して同時に土下座した。
日本風のおでこを地面に擦りつけて謝るアレだ。
地面なんか無いけど。
ここ、空中だけど。。。
「えー・・・っと??」
戸惑う俺に、頭を上げない鳥頭さん達。
・・・・・・・何故に俺は土下座されてるんでしょう????????
「神官長様のお知り合いとは知らなかったとはいえ、ご無礼を働いてしまった事をお許しください!!!」
あまりの気迫に思わずたじろぐが、ずっとそのままという訳にもいかない。
というか、他人の威光を被っただけで俺はただの一般庶民だ。
グスタフの威光の威力の大きさは予想外で驚いたけど、俺が頭を下げられる理由はこれっぽっちもない。
「ちょ、頭!頭を上げてください!!!!」
呆けていたのも一瞬だ。
現状を理解した俺は慌てて鳥頭さん達に頭を上げさせようとする。
「ですが・・・」
「良いから!俺に頭下げる価値なんて無いんだから!!」
自分で言うのもなんか、哀しいけどね・・・・・
俺は、不安そうに顔を上げた二人(・・・・2匹?2羽??)に、必死に「自分は何でもない存在だ」と自分の精神に傷を付けながら宥めすかすことに何とか成功した。
なんだろうね、このやるせなさ。
今話も読んで頂けてありがとうございます♪
活動報告上にてアンケートという無謀な事に挑戦中です。。
出来ればお答えいただければ嬉しいなー・・・みたいな(苦笑)