ジャロディスタ鎮静
主人公最強伝説です。
チート設定の前では軽い軽・・・エフンエフン
今回の話は残酷描写0(ウチの感覚では・・・)ですが
この話以降から入ってくる戦闘は残酷描写が入ってくると思います
苦手な方はお気を付け下さい・・・・と事前に予告してみたりして
「グスタフー、ジャロディスタについてなんか知ってるー??」
『ジャロディスタの鎮静化に今日は行きますよ。』とか鬼畜虎に叩き起こされた俺は教会にあるグスタフの執務室を訪れていた。
昨日はグスタフに夜中まで懇々と説教されていたので、こんな朝っぱらに起こされたら完璧寝不足だ・・・とか朝思ったのに睡眠不足によるダメージは全くなかった。
こっちに来てから体の機能が完璧に変わっているようだ。
なんて、チート。まぁ、今更だけどね!
「ん??ジャロディスタか??ちょっと待ってろ」
筋肉に似合わないデスクワークをこなしていたグスタフは、俺が突然執務室に入ってきても何も言わずに背後にあった大きな本棚から一冊の本を抜きだす。
「あー・・・、仕事の邪魔した??」
「構わんぞ。どうせ休憩する予定だった」
嘘だね!まだ朝の8時頃だもん!!
いやはや、申し訳ない限りですね、はい。
でもお言葉に甘える事をして、俺はソファーにちょこんと腰かける。
ジャロディスタについては子供向けの図鑑程度の知識しかないのだ。
このままいけば確実に殺られる。
いや、命を奪わないとの情報はあるんだけどもね。。
「これが、ジャロディスタだ。」
本棚から図鑑を持ってきて俺の向かい側に座ったグスタフはジャロディスタのページを開いてトントンと指で示してくれる。
子供向けの図鑑とは違い、精密な絵で描かれているジャロディスタは何とも美しい。
純白の西洋風のドラゴンの体に、鳥のような羽根の生えた翼。
ドラゴンと言われてイメージするような逞しい感じではなく、しなやかな猫のような生き物だ。
「神聖」そんな感じの言葉がぴったりだと思う。
「ジャロディスタはこの国の国獣だ。殺すことはおろか、傷を付ける事すら許されていない。」
つまりは、保護動物ってことか。。
グスタフが説明してくれるジャロディスタについての説明を聞きながら俺はふむふむと頷く。
必要な事だけをちょいちょい質問をはさみながら聞きだし、どうやらジャロディスタは本当に命を奪わないという事が判明した、
グスタフ曰く「ジャロディスタは生き物の命を奪うと自らの命も消えてしまう」のだとか。
え、それってじゃあ普段は何食ってんの??とか疑問に思って聞いてみたら大気中に溢れている「神力」とやらを食べているらしい。
「ふーん。なんか、超優しい生き物なのな」
「あぁ。基本は・・・・な」
「ん??どゆこと??」
「逆鱗に触れると怖いってことだ。ジャロディスタは寛大だが、たまにプチッとな。。堪忍袋の緒が切れる事があるんだ」
この世界に「堪忍袋の緒が切れる」って言葉がある事の方が俺には驚きだよ、グスタフ。
おっと、無駄な思考が入ったな。
「そうなったらどうすんの??」
「そういう時は、光の巫女が静めに行ったりとか、あとは、冒険者の中にいる「鎮静魔法」が使える者をギルドが派遣したりするな」
「え、暴走した時は巫女が全部やればいいんじゃ??」
「巫女が出るのは切羽詰まった状態だけなんだ。今の巫女はあまり力が強くなくてな」
つまりは、巫女が弱いからそれより効果のある鎮静の魔法で鎮める・・・と??
・・・だめだめじゃん、巫女サマ。
しかも、鎮静魔法ってのを使える冒険者はかなり少ないらしい。
なるほど、だからBランクだったのかと納得する。
鎮静魔法は発動させるまでに時間がかかる上に、少しばっかりジャロディスタを弱らせなきゃ効いてくれない。
なのに殺しちゃいけない傷をつけちゃいけない、と制約がかかりまくってるんだ。
そりゃ、高位任務になるよな。
「納得。情報サンキュー」
余計な事を聞かれる前にグスタフに礼を言って、俺は執務室から自分の部屋に「転移」する。
ちなみに余談だが、俺は教会の中にある一室に泊めてもらっている。
トライト神が直々に『泊まっていってください』と言ったから、断れる訳もなく。。
まぁ、存分に言葉に甘えさせてもらうことにしたわけだ。
部屋に戻った俺は、ブレザーのままではやりづらいと判断し「創造」で異世界風の服を製造することにした。
いやぁ~、一回やってみたかったんだよねー!某錬金術師アニメのア・レ♪
パンッと両手を合わせた俺は軽快に鼻歌を歌いながらバチバチバチッと光を伴いながら装備作成をする。
勿論、スペックは反則なほどに限界まであげておいた。
自分の能力が既に反則っぽいのでいらないかなとは思ったが一応ね、一応。
・・・・・別にチキンな訳じゃないぞ。うん。
およそ防具とは呼べなさそうな見た目のシャツとブーツ、ズボンと真っ黒いコートというスペック的には最強防具を作成したところで俺は「ナイト」と自分の影に呼びかける。
『なんですか??』
「ジャロディスタがいる場所、分かるか?」
『はい。南西2ガットのところです。』
・・・・2ガットってどんくらいすか。。
異世界の距離単位にまさかのブレーキを食らう。
『1カロンがそこの棚の高さくらいです。で、1ガットは1000カロン。常識ですよ??』
異世界から来た俺にとってそれは十分非常識なんですがね??
ナイトの馬鹿にしたような言い方にはもう、慣れたので気にしないが。
人間は慣れる生き物だって、ホントだね!!
棚、棚ーと棚の横の並んでみて目測で1カロンが地球で言う1メートルくらいだと判断した俺は、大雑把に「転移」で軽く2キロほどを飛んでみる事にした。
普通、勇者とかって歩いて移動するのが通常なんだろうけど俺は魔王だからそういう暗黙の了解は軽くスルー。
ずるっこいって??そんなの最初っから分かってた事でしょー??
無事に転移を果たした俺は、トスンッと何かしらの柔らかいものの上に危なげなく降り立った。
なんて便利なんだろうね!この転移という魔法は!
とか自分の能力に満足していたら足元から
キューイ!!!!!!
という甲高い鳴き声が響いた。
な に ご と で す か ?????????
と疑問に思う間もなく吹っ飛ばされる俺。
頭の中が完璧にフリーズする。
「カハッ・・・・・!!」
吹っ飛ばされた勢いのまま、木に激突して肺の空気全てを吐きだす。
痛みはなかったが、衝撃が物凄かった。
コートの改良点がさっそく見つかったわけだが・・・・さて。今の状況は何事??
ゲホゲホせき込みながら呼吸を確保し、顔をあげるとそこにはグスタフの執務室の図鑑で見た白いドラゴンが居た。
黄金の瞳はなにやら怒りでゆらゆらと揺れていて、なるほど、これがプッツンした状態かと一目で判明。
それにしても、まさかの転移がどんぴしゃりだったらしい。
さっき俺が降り立ったのが彼(彼女?)の体の上だったのだと理解した瞬間に長い尻尾が俺が吹っ飛ばされた場所をなぎ払った。
さっきの攻撃と言い、今の攻撃と言い常人だった死んでんぞとか思ったけど「ジャロディスタは相手の力量を見抜く能力がある」というグスタフの言葉をふと思い出す。
なるほど。さっきの攻撃は俺なら死なない力加減だったというわけだ。と納得。
尻尾の攻撃を今度はしっかりと避けた俺は親指を立て、人差し指をジャロデスタに向けた。
子供が鉄砲ごっことかやる時のような手の形だ。
「光弾発射!」
威力を抑えめにして、牽制の為にジャロディスタの足元に数弾撃ち込む。
当たっても衝撃と光だけで傷はつかない良心的な攻撃なのだが、何がどうして。
そんな思いやりなど無視する形で、素早い動きでジャロディスタはそれを鳥の様な翼で風をおこして光弾をなぎ払った。
・・・うそーん
「【二重詠唱】火炎:無傷!!」
一瞬ビビって呆けたが、こちらの事など読み取ってくれないジャロディスタは情け容赦ない。
爪、尻尾、爪、爪、尻尾とまるで格闘ゲームの○×ボタンみたいな連続攻撃は止むことなく、俺を襲う。
いや、これ普通に死ねると思うよ??
最大火力で火柱をあげる火炎魔法を発動し、そのまま当てるとジャロディスタが傷だらけになってしまうので、咄嗟に考えた無傷魔法を重ねる。
・・・・が、ここでもまた俺の思いやりを無視する形でジャロディスタは軽快な動きでそれを避ける。
「チッ!!」
大きな体に似合わず素早いらしいジャロディスタに内心舌打ちしつつ、出て来て援護しようとしないナイトに思わず本気で舌打ちする。
ん?普通は逆か?
『一人で頑張ってください。これは貴方の修行ですから』
とかクソウザいことをかましている虎はあとで抹殺することにして、俺は両手を上にあげた。
気分的には「オラに力を分けてくれ!」だ。
「発光弾!!」
太陽が目の前で爆発したんじゃないかという威力で俺の頭上に現れた光の球が爆発する。
ちゃんと予測して目をつぶっていた俺は、瞼越しでも分かる光の強さに目をチカチカさせつつ目が眩んで無防備になったジャロディスタを全力の3分の1くらいで蹴り飛ばした。
凄い勢いで吹っ飛ばされるジャロディスタ。
傷かつかないようにとかいう優しさはこの際、宇宙の彼方に置いておく事にしたんだ。
多分、あの威力で蹴り飛ばせば結構体力削れてると思うんだよね~
という俺の予想は正しく、フラフラした足取りでジャロディスタは立ち上がる。
おぉ、完璧じゃん俺!!
「鎮静!!!!」
ということで、鎮静の魔法発動。
俺の場合は時間がかかるとかいう面倒な事もなく正常に即作動してくれた鎮静魔法は蒼い光の線となってジャロディスタを包み込んだ。
なんか、神秘的な光景だな~とか自分の作りだした魔法ながらしみじみ思いつつ拍子抜け。
「なんか、意外と簡単なのな」
『普通だったら死んでますけどね。これは通常であればB.ランクの冒険者が5人程はいる任務なんですが。まぁ、予想通りな結果です』
大人しくなったジャロディスタが森の中に消えていくのを見送りながら、俺はふぅと息をついた。
チートチートとは言ってたけど、ここまでとはさすがに思ってなかった。
自覚出来ただけでも行幸だな~と身に沁みて思えた。
次からは気をつけよう。うん
・・・・にしても、5人分を俺は一人でやったのかと地味に吃驚した。
ジャロディスタを簡単にのしてしまいました。。
この位のレベルは綺良クンの敵ではありません(笑)
次回話はグスタフ目線を予定中。
あ、「衝撃の出会い」の回の話をちょっと訂正してグスタフの性格がちょっと変わりましたので改定前を読んでない方は若干違和感があるかもしれません・・・
キャラの性格の芯がブレブレで申し訳ないですorz