わたしよりもえらいひと
「ドゥカスさま!お待ちしてました!」
「おお、ドゥカスさまちょうどいいところに!」
一日中誰かに呼び止められています、スーパーバイザーのドゥカスと申します。
気がつけばひよっこの女神だったはずが、後輩を指導する立場となり、あっという間に指導者を取りまとめる役目をいただいていました。
神とはいってるけど、魂に戻っている時は神も人間も同じ状態。その中で、次に神として世界を導くのかはたまた人間として徳を積み更なる高みを目指すのか。道が違うだけなのです。
とはいえ、神と人間では与える影響の大きさが全く違うから神を選ぶ際にはとても緊張するわ。
だから私だけでは流石に荷が重くて、適材と思われる魂をいくつかピックアップしたら、この神の世界を創ったとされるバシレウスさまに相談するの。
「ふむ、今回は中々バラエティに富んでるな…」
「はい、今まではできるだけ美しい輝きを持つ魂をピックアップしていました。ただそれだと…」
「あの…えーとテオスだっけ?アイツが担当した神みたいにプレッシャーで潰れちゃうこともある、と。」
「はい。同じ選び方をしたディオサもまた同じところで躓きかけたのです。今回はテオスと私が先回りしましたが。」
「なるほどなぁ。ある程度の清廉は必要だが、それだけだと悪に飲み込まれることもあるんだろうか。」
「そのようです。ディオサを見ていると…"悪意"というのが理解できないようです。もちろんそれが強みになることもあるでしょうが…清濁併せ持つ魂も候補に入れてみた方が良いかと判断しました。」
「ふーん。なるほどなぁ。お前も色々と苦労しているなぁ。ドゥカス、どうだ?スーパーバイザーは性に合ってるか?」
この後に続くバシレウスさまのお話のせいで、私はここ数日上の空になってしまっていた。
「もう!ドゥカスさまっ!」
「はっ!ごめんなさい、ディオサ。どうしたのかしら。」
「いえ、用事ではないんです。ここ数日、みんながみんなドゥカスさまの様子がおかしいって気にしていて。私も心配してたんですよ!」
プンプン怒られてしまった。
「そうなのね、ごめんなさいね。少し考えないといけないことができてしまったから。もうしばらくこんな感じかもしれないけど、急ぎの用事があったらいつでも呼び止めて、ってみんなに伝えてくれるかしら。」
「はいっ!了解です!」
「でもドゥカスさま。…私たちはドゥカスさまを頼れますけれど、ドゥカスさまは誰か頼れますか?」
※※※※※※
「バシレウスさま。先日いただいたお話ですが…。」
「おお、考えてくれたか。どうだ?その気になったか?私の後継の話。」
そうなのだ。先日のバシレウスさまのお話は、そろそろ自分も輪廻転生の輪に戻りたい、というものだった。
そうなると当然後継は必要で、今のところ私が筆頭候補らしい。
自分で言うのもなんだけど、多分私が一番の適任だ。それは間違いない。けど…
「先日、ディオサに言われてしまいました。あの子は案外鋭いところがあって。」
"ドゥカスさまは誰か頼れますか"
バシレウスさまも目を見開いた。
「スーパーバイザーに向かってそんなことを言うとは。中々の大物だな。だかお前の様子を見ていると」
そう、あながち間違いではないのだ。私は誰かを頼りたい。今の仕事も、バシレウスさまに相談できることでこなしている部分も多い。
「むむむ。そうか。誰かを頼りたい時もある、か。」
これは難問だなぁ。
バシレウスさまの呟きが響いていた。
※※※※※※
「で、なんでオレに?」
「もう!バシレウスさまの後継になるなら私の後継だって必要でしょ?」
「イヤイヤイヤ、もっと適材がいるじゃないですか!」
テオスが顔の前で必死に手をブンブン振っている。そんなに?そんなに嫌なの?スーパーバイザー。
「いや、スーパーバイザーが嫌なわけではなくて。今までオレ、ドゥカスさまに頼りっきりだったわけで。」
そっか。なんだかテオスと話していてバシレウスさまの言っていたことが腑に落ちた。
"頼りたい気持ちなんてどれだけ頑張ったって無くならないんだよ。だって、全部が全部上手くいくわけないから。指名した子が上手くいったらホッとするし、躓いてたら自分の何が悪かったろう?って思うもんさ。そういうことがあると誰かに相談したくなるんだよ。けどよくよく考えてみなよ。ドゥカスはさ…"
"ほぼ自力で全部やり遂げてるだろ?"
そう言われて、確かにそうだ!と思ったの。それでも迷った時に背中を押して欲しくてバシレウスさまに相談に行ってたんだわ。
"でさ、相談するなら上じゃなくてもいいわけでしょ?"
「貴方には私の後継としてだけではなくて、私の相談相手にもなって欲しいのよ。」
「それはまた心穏やかじゃない一言で。そんなのオレのキャパオーバーですよ!」
必死で否定するけど、私はもう決めたの!
「でもね、私にそれだけフランクに雑談をしてくれるのって貴方だけなのよ。」
ニヤリ。
「これはもう決定ですから!これからもよろしくね!」
こうして私は創造主となり、スーパーバイザーとしてテオスと二人三脚で管理していくことになったのだった。
バシレウスさまはどうなったかって?
ふふふ。
「な、な、な…なんで!なんでじききょうこうこうほなんだあっ!ていうかなんできおくがのこってるんだよおおお!」
彼の気持ちが周囲に伝わることはない。だってまだ赤ちゃんだからね。
「サンテに神託しておきましたよ!次期教皇候補として大切に保護してくれって!」
「ありがとう!ディオサ!」
「バシレウスさまー!!今度はそちらで頑張ってくださいね!」
「ちょっ、ディオサちゃんもドゥカスさまも容赦ねえなぁ…おおこわ。」
女神さまシリーズはこちらで一旦終了です!
読んでいただいてありがとうございました。




