5話 #選ばれし者へ
ピンポーン――。
ビクッ
甲高いチャイムの音に、心臓が跳ねた。
だれ!!?
一瞬、何が起こったのかわからなかった。
ぼんやりとした意識のまま、目を開ける。
「……ばあちゃん?」
隣にいたはずのばあちゃんが、いない。
布団の中はほんのり温かいのに、その姿はどこにもない。
外は……まだ暗い。
「……嘘だろ、どこ行ったんだよ!」
慌てて隣の姉を揺らす。
「ん……なに……?」
「ばあちゃんがいない!」
「はぁ!? どこ行ったの!?」
寝ぼけ眼の姉を無理やり引きずり起こし、二人で寝室を飛び出した。
――
「どうしたの、そんなに慌てて」
ソファには、マグカップを手にしたばあちゃん。
いつも通りの笑顔だ。
ニュースでも見るかのように、真っ暗の中、やってもないテレビを見ながらくつろいでいる。
「……驚かせないでよ……」
「ほんと……心臓止まるかと思った……」
二人で同時にため息をつく。
しかし――
「ねぇ、今のチャイムって何?」
そう尋ねると、ばあちゃんが小首をかしげた。
「あぁ、それね。さっき、注文したやつが届いたのかも」
「……は?」
「……注文?」
俺と姉は、同時に固まる。
「だってね、いつもの時間に目が覚めちゃって。テレビつけたら、ログインボーナスとかいうのがもらえたのよ」
テレビの画面を見ると、そこには
【ログインボーナス獲得!+1000Mポイント】
という表示が残っていた。
「そのあとテレビショッピングが始まってね、今だけの特別価格だかって言うもんだから……」
「ばあちゃん……もしかして、なんか買ったの?」
俺は半ば呆れながら尋ねる。
「剣と杖のセットだかっていうのをね……。あなたたち、そういうの好きでよく遊んでたでしょ?」
「ば、ばあちゃん……」
「俺たち、もうおもちゃで遊ぶ年じゃないよ!!しかも、それおもちゃじゃないし!」
早起きをしてテレビショッピングを見ているばあちゃんだけが、変わらない日常の中にいた。
二人の心配とツッコミをよそに、ばあちゃんはにこにこと笑っている。
俺と姉は、顔を見合わせてため息をつく。
でも、ばあちゃんは楽しそうに続けた。
「それよりもね、“大当たりのしげこさんに特別なプレゼントがあります”って、スーツ姿の男の人が言ってたね〜」
「……っ、そっち先言って!!!!」
俺と姉の声がハモった。
――
「っていうか……今、何時なんだ?」
「スマホ、スマホっと……」
俺はスマホを手に取り、時計に光をかざす。
針は相変わらず、昨日の夜のままピタリと止まっていた。
「ねぇ……まだ暗いけど、本当に朝が来るのかな?」
心配そうにこちらを見る姉。
その顔を見ていると、こっちまで不安が移ってくる。
しかし――
「外、見てみなさい」
ばあちゃんが静かに言った。
俺と姉は顔を見合わせ、恐る恐るカーテンを開ける。
その瞬間――
まだ薄闇の残る外に、淡い光が差し込んでいた。
「……朝だ!!!!」
思わず二人で声を上げる。
たったそれだけのことが、信じられないほど嬉しかった。
そのとき、姉がはっと声を上げる。
「あ! 荷物!」
「忘れてた!取りに行かないと……。
でも本当に荷物? 昨日Wで言ってた外にいる危ないやつじゃないよね?」
俺はドアの前に立ち、息を殺した。
覗き穴を覗く――誰もいない。
「……誰もいないよ」
「でもチャイム、鳴ったよね?」
俺は恐る恐るドアノブを回した。
ひやりとした空気が足元を撫で、心臓が小さく跳ねた。
そして――
「……あった」
玄関の前に、見覚えのあるロゴ入りの段ボールがひとつ。
HeyHeyHoHo Inc. ――と「M」の文字。
その文字が、夜が明けてまもない薄暗闇の中で、ぼんやりと光を放っていた。
「……やっぱり。とりあえず、中に入れよう」
二人で息を合わせて箱を引きずり込み、ドアを閉める。
バタン――。
音が響いた途端、家の中が再び静まり返った。
段ボールの表面に、金色の文字が浮かび上がる。
『To the Chosen Ones ― 選ばれし者へ』
息をのむ。
この箱を開けた瞬間、何かが“始まる”気がした。
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