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3話 # マジカルスーパー

 ダウンロードのバーが少しずつ進むあいだ、俺と姉はソファに座ってあーだこーだ話をしていた。


「なぁ、俺たち以外どこ行ったんだろうな……」


「まさか、私たちだけ異世界に飛ばされたとか?」


「ヘイヘイホーホーが言ってた、マジカルワールドってやつ?」


「マジカルキャンディになんか変なもん混ざってたんだよ。薬とか」


「え、俺、四つも食っちゃったんだけど!?」


「やば、普通に危険物摂取!!

それか、もしかして、ハロウィンのドッキリとか? “当たりの家にドッキリ仕掛けてみた!”的な?」


「いや、こんな田舎の庶民に仕掛けねぇだろ……」


笑いながらも、心臓の奥がずっと落ち着かない。

何かがおかしい。空気が静かすぎる。


そのとき――


ピロン


通知オンらしき音が鳴り響いた。

俺と姉は顔を見合わせた。


「もしかして……ダウンロード終わった?」


画面を見ると、進行バーは100%に達していた。


――


「とりあえず、アプリ開けてみるか」


みんなが見えるように、まずはばあちゃんのテレビから操作することにした。


テレビにも、スマホと同じ、アプリMのアイコンが光っていた。

他のアプリはすべて消え、“M”と描かれたアイコンがひとつのみ、ポツンと表示されている。


俺はアプリを選択し、リモコンの決定ボタンを押す。


すると、不気味な起動音がなり、アプリが開いた。


HeyHeyHoHo Inc.


真っ黒な背景に、白い文字が浮かび上がる。


――マジカルワールドへようこそ。


まるで、ゲームのログイン画面みたいだ。

画面がぱっと明るくなり、次の表示が現れた。


【マジカルユーザーの登録を開始します。

登録するユーザー名を入力してください(仮名可)】


マジカルユーザー名?

仮名の方が良いんだろうけど……。


「ばあちゃん、名前どうする?」


「ん〜、“しげこさん”でいいよ」

ばあちゃんは軽く返事をする。


「本名でいいの!?」


「なんでもいいよ〜」


いいのかよ。

まあ、本人がいいなら、いいか。


“しげこさん”で登録。


続いて、生年月日、顔認証……。


ん?テレビに顔認証機能なんてあったっけ?

まあ、いいか。

疑問に思いながらも、そのまま認証を進めていく。


【登録完了。タップしてください】


リモコンの決定ボタンを押すと、画面に小さなキャラクターが現れた。


しげこさんのアバターが、なぜか踊っている。


「うわ、マジでゲームっぽい……」


画面には、〈ステータス表示〉という項目があった。開くと――


〈ステータス〉

HP、攻撃力、防御力……すべて1の表示

スキルなし

武器なし

防具なし


「は? 本当にゲームじゃん……どういうこと……?」


俺と姉はただ呆然と、ばあちゃんのステータス画面を見つめていた。


そのとき、画面がふっと明滅し、新しい項目が音を立てて浮かび上がった。


〈マジカルスーパー〉


なんだ、これ。


「開いてみて!」

そう姉に言われ、俺は〈マジカルスーパー〉のタブを開いた。


「これは……」


画面いっぱいに、カラフルな商品画像が並んでいた。


ネット通販…?いや、何か違う。


試しにカテゴリーを選ぶと、水や食料、日用品、

武器、防具といったタブが現れる。


武器や防具が売っているのは、まあ予想の範囲内だった。


でも、日用品や野菜の見た目が、どれも微妙に“現実と違う”気がした。


トマトはツヤツヤしすぎていて、まるでプラスチックの模型みたいだし、


ペットボトルのラベルは、文字がぐにゃんと歪んでいて読めない。


どの商品も、AIが「それっぽく」描いた画像みたいで、リアルなのに、どうしても本物っぽくない感じがする。


そこに並ぶ商品すべてが、微妙に歪んで見えた。


『ここではマジカルポイント(Mポイント)を使って、あらゆるものを交換できます』


画面に釘付けになっていると、突然、無機質な声が流れた。

同時に、画面の中央に文字がスッと浮かび上がる。


画面左上には「Mポイント残高: 0」の表示。


「水一本……1000Mポイント?たっか……!」

姉が叫んだ。


ばあちゃんはそんな俺たちをよそに、

画面をじっと見つめて、穏やかに笑っている。


「なんか、スーパーっていうより、ファンタジー通販サイトじゃない?」

姉は興味津々といった様子だ。


「うわ、こっち見て! 小さな剣10万Mポイント!?こっちは“見習い魔女の杖”120万Mポイントだって!」

陽気にはしゃぐ姉。


相場は分からないが、所持ポイント0の俺らにとっては手の届かない代物だ。


ページをスクロールするたびに、

キラキラと光る商品画像が滑らかに切り替わる。


「今週のおすすめ!」と表示された欄には、

“初心者向け防具セット”が50万Mポイントで並んでいた。


「……これ、マジで買う人いるのか?

てか、“買う”って、どうやって? Mポイントって……なに?」


試しに【購入】ボタンを押してみたが、

画面には「Mポイントが不足しています」と赤く点滅した。


「だよな……」


「とりあえず、私たちもユーザー登録してみる?」

姉の言葉が、どこか楽しそうに響いた。


俺はうなずき、スマホを取り出す。

画面には、ばあちゃんのときと同じ“M”のアイコンが浮かんでいる。


「……ああ。やるしかないな」


指先でアイコンをタップした瞬間、

スマホがかすかに震え、起動音がなった。


――マジカルユーザーの登録を開始します。


無機質な声が、リビングの空気を震わせた。

それは、まるで新しい世界の扉がゆっくりと開く音のように聞こえた。


最後まで読んでくださってありがとうございます☺︎

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