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16話 #モンスター図鑑登録方法

俺たちは薄暗い裏路地にいた。


建物の外壁が影を落とし、光はほとんど届かない。そんな暗がりの隅で、俺たちは地べたにちょこんと腰を下ろしていた。


横に目をやると、スマホの光に照らされた姉の横顔がぼんやりと浮かんでいる。


その目は真剣そのもの。まるで、その光に心が操られているかのようだった。


俺は、そんなスマホに取り憑かれた姉に問いかける。


「姉ちゃん、これからどうする?」


とりあえず、目標のスライム討伐は成功した。


でも――


スライム1体でMポイント1しかもらえないって……。


姉はチラリともこちらに視線を向けることなく、スマホを見つめたまま答えた。


「とりあえず、Mポイントもっと集めないとだよね?」


「そう、だね……」


また、お得意のWで情報収集やらコメントに返信やらでもしてるのだろうか。


「……」


会話しようって時にスマホを触られているとどうも興醒めしてしまう。


「はぁぁ」


俺は小さくため息をつく。 


そのため息を気にする様子もなく、スマホを打つ手が止まらない姉。


仕方ない、俺もスマホ見るか。

俺は渋々とスマホを開いた。


スマホの電源を入れると、薄闇を裂くようにして人工的な光がパッと放たれ、俺の顔を照らした。


無意識にWのアイコンに指が伸びる。


Wを開くと、すぐに姉の投稿がおすすめに上がってきた。


「姉ちゃん、有名人じゃん」


俺はぶっきらぼうにその言葉発した。


正常な判断ができる人ならば、これが褒め言葉には聞こえるはずもないが……。


「でしょ!やばいの!通知が止まらない!」


やっぱり……。


姉は嫌味……それどころか貶してるだなんて微塵も思っていないのだろう。


なんなら、この言葉を待ってたまである。


「はぁ」


ため息がとまらない。


「姉ちゃん、そろそろ行かないと」


俺は肩を落とし、俯いたまま姉に声をかけた。


「待って〜もう少し!これ返信したら〜」


跳ねた声の割に無表情な姉。

明らかに待ってもらう人の態度ではない。


最近のJKはみんなこんな感じなのか?


いや、そんなことないか……。


俺は眉を寄せて目をぎゅっと瞑り、胸の辺りまで込み上げてきた怒りを静かに抑える。


ゆっくり目を開けるとスマホの光がスッと消えるのが見えた。


俺は反射的にスマホをタップして画面の光を点け直す。


スマホの画面には黒いMのアイコンがこちらをじっと見つめていた。


そういえば……。


スライムの討伐をしてから図鑑にどうやって登録されたか見てなかったな。


俺は黒いMのアイコンを軽くタップし図鑑のタブを開いた――


「はぁ!?」


俺は思わず声が出た。


なんで、モンスター図鑑にスライム登録されてないの?


なんと、完全に登録されていたと思っていたはずのスライムが、モンスター図鑑に登録されていなかったのだ。


図鑑には、確かに“001スライム(ラメ入り)”の名前が載っていた。スライムらしき黒いシルエットの斜め上には、討伐成功の赤いスタンプが押されている。


でも――


“スライム(ラメ入り)【未登録】”の表示。


「どういうこと?」


討伐しただけじゃモンスター図鑑は登録されないってこと?


「意味がわからん」


突然耳もとで姉の声がした。


「やっぱり、はるともかぁ」


先ほどまでスマホに釘付けだった姉がすぐ右横におり俺のスマホを覗き込んでくる。


「……ちかっ……やっぱりって?」


俺は眉をひそめ姉と少し距離をとる。


「Wで“スライムの討伐は成功したのに、モンスター図鑑に登録されない!”っていう報告がたくさん上がってるの」


「へぇ……」


俺だけじゃなかったのか。


「じゃあ、どうすればいいんだろう……?」


「えっへん」


鼻高々に腰に手を置き、こちらをチラチラと見る姉。


「え、知ってんの?」


「それが……これ、秘密なんだけど……」


と人差し指を鼻の前にやり、誰もいないのに周りをキョロキョロと見渡してから小声で話し始める姉。


「考察班の一人から、特別に情報をいただきまして……」


「うん、それで?」


姉は目を瞑り、少し間を置いてからニヤリと口元を歪ませる。


もったいぶらずにさっさと言ってくれないかな。


姉はごくりと唾を飲み込んだ。


「誰にも言わないでよ……」


「うん……」


言わねーよ。姉ちゃんじゃないんだから。


雰囲気だけは作っているようだが、姉の目と口にはニヤケが浮かんでいる。


「なんと……

モンスター図鑑に登録するためには、モンスターとツーショしないといけないんだって」


「は?ツーショット!?」


「しっ!」


姉が人差し指を口の前に置き、静かにするようにとジェスチャーしてくる。


少し声が大きくなってしまった。


「ツーショットってどういうこと?」


俺は少し声を抑えて姉に聞き返す。


「なんか、この前のアップデートでスキャン機能っていうのが追加されたらしいんだけど……」


「自分の顔とモンスター全体が映る写真ををとると、勝手にスキャンが始まってモンスターの情報を解析してくれるらしいのね。

で、解析した後に討伐成功すれば、図鑑にモンスターが登録されるらしい!」


「……ん?つまり、モンスターと一緒に写真を取らないといけないってこと?

モンスターだけじゃだめなの?」


「そう。それが、モンスターの写真に自分の顔も載ってないとダメらしい!」


「な、なるほど……」


つまり――


①モンスター遭遇

②モンスターとツーショットを撮り、モンスターの生体情報と自分の顔を認証、登録。

③討伐成功

④モンスター図鑑登録完了


って流れってことか?


確かに、アプリMを登録するときに顔認証登録みたいなのもやった気がする。


討伐だけで良くない?

なんでそんな面倒くさいことをするんだろうか。


図鑑のコンプリートをさせないためとか?


「だから、今からスライムとツーショ取り行くよ!!」


上を向き軽やかにスッと立ち上がる姉。

やる気に満ち溢れた顔だ。


モンスターとツーショットって、一瞬の油断を作ってるのと一緒だよな?


攻撃してください!って言ってるようなもんじゃん。


……結構ハードル高くない?


「とりあえず行ってみよ!はると!早く!!」


うるさいな……。さっきまでスマホに夢中だったくせに。急にやる気出しちゃって。


姉の騒がしい声に押され、俺は重い腰を上げた。


ツーショット、行くか……。


その瞬間、誰かの視線が闇の奥で動いた気がした。

最後まで読んでいただきありがとうございます!

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