10話 #マジカル♪
――外に、出る?
いや、絶対やばいモンスターいるやつじゃん!
マジカルワールドなんて、名前からしてやばいんだから!嫌な予感しかしない!
「モンスターの攻撃力はわかんないけど、一撃で死ぬ未来しか見えん……」
俺はぼそっと呟いた。
「うん、防具必須だね〜」
姉は軽い調子で返事をする。
さすがの姉も、防具は必要って思ってるみたいだな。
剣は手に入れたから、防具があれば完璧なんだが……。
「でも防具買うポイントが……」
ちらり。
俺は、おずおずとばあちゃんの方を見た。
俺と目が合あうと、ばあちゃんは優しい顔で微笑んだ。
「かわいい孫のお願いなら、断れないわね〜」
そう言いながら、マジカルスーパーを開くばあちゃん。
【Mポイント残高:1,000,000】
「神か……!」
「ばあちゃん、マジ神!」
二人はばあちゃんに心から感謝し、一斉に装備ページを漁った。
「うわ、高っ!初心者セット50万!?これ買ったらばあちゃんのポイントゼロになるよ?
この、10万の“ただの硬めの服”にしとく?」
姉がテレビの前で跳ねながら、あれこれ言いながら装備を指差している。
「いやぁ、怖いな……」
「ポイントは全部使っていいわよ?」
ばあちゃんの声は相変わらず穏やかだった。
あの豪華な剣と杖が1000Mポイントで、この安っぽい防具たちが10万ポイント以上?
……物価、バグってない?
ばあちゃん、どんなテレビショッピングみたんだよ!!
俺がそんなことを考えていると、姉の目は初心者向け防具セットに釘付けとなっていた。
「えーでも、この防具のセットが欲しいな〜」
姉がおねだりするように、もじもじと指先をいじりながらこちらを見てきた。
……でも、今ポイントを全部使っちゃうのは、ちょっと怖いよな?
食料問題もあるし、これから何が起こるかもわからない。
外の様子見くらいだったら、安い防具でも良いか?ポイントはあるに越したことはないし。
「んー、ポイントはちょっと残しとこ。これから何があるかわかんないし」
俺は姉を説得させるよう、落ち着いた声で言った。
「えー。まあ、そうだね。食料のこともあるしねー。ポイントはちょっと残しといた方が良いか」
姉も納得した様子で小さく頷く。
よし。安めの硬い防具を買おう。
「……あれ、リモコンどこだっけ?」
さっきまで近くにあったリモコンが消えている。
ポチ。
「マジカル♪」
軽快な決済音が響いた。
「え?」
「ばあちゃん?」
二人同時に驚きの声をあげる。
「あら?これが二つ欲しかったんじゃなかったの?」
――ピンポーン。
玄関のチャイムが鳴った。
二人は顔を見合わせ、ばあちゃんの方を見る。
「……ばあちゃん!?!?」
テレビ画面には【購入完了】の文字が光っていた。
――――
外に出ると、玄関前にお馴染みのダンボール箱が置かれていた。
中身はもちろん――
初心者向け防具セット。
二人で100万Mポイント!高すぎ!!
俺は全てを諦め、リビングに段ボールを運びこむ。
そして、ゆっくりとダンボールを開いた。
「おぉ」
ダンボールを広げると、新品の皮の匂いが鼻につき、テンションが上がった。
「ざ、初期装備って感じ!!!!」
上衣の装備は、硬そうな茶色の皮でできたジャケット。
ブーツは、なんだか分厚い革で出来たやつ。
見た目は、アニメとかゲームで見たことある初期装備そのものだ。
新品の装備を手に取ると、スマホから通知オンが鳴るのが聞こえてきた。
ピロン――
「ステータス更新されたっぽい!見てみよ!」
俺たちは急いでアプリを開き、ステータスの通知を確認した。
――――
New:初心者用ジャケット
分類:防具(皮ジャケット)
レア度:★
【特徴】
・耐久性:低
・防御力+15
素材:メルーサの皮100%使用
Mワールド入門者用の基本防具。
軽くて動きやすい。攻撃の反動を軽減してくれる。
New:初心者用軽量ブーツ
分類:防具(靴)
レア度:★
【特徴】
・耐久性:低
・防御力+15
靴底にカロライズの舌ベラを一部使用。移動時の素早さが軽度上昇。
――――
――まあ、防御力は良いのか悪いのかよくわからんけど、最低限、生き残るための装備って感じだ。
俺と姉は意気揚々と装備に身を固める。
腕を通し、革のジャケットを着ると、肩にずしりと重さがのしかかってきた。
その重みが、なんだか安心感を与えてくれる。
ここに、剣を入れれば良いのか?
俺は、腰にあったベルトに剣を差し込んでみた。
「おお!ぶら下がった!」
なんだか急に様になった気がする。
見た目は安っぽいが、意外といいぞ!
テンションがさらに上がってきた。
でも、剣は豪華、防具は貧弱。
……全体で見るとチグハグすぎて、コスプレ感がすごい。
二人で思わず顔を見合わせる。
「……これ、大丈夫かな?」
姉が恥ずかしそうにくるりと一回転する。
「うーん……まぁ、見た目より中身ってことで」
ばあちゃんはそんな二人を嬉しそうに眺めていた。
まるで、初めてランドセルを背負った孫を見守るみたいに。
とりあえず――外に出る準備は整った。
アプリ内の俺のアバターも新しい装備と剣を持って嬉しそうに踊ってる。
「でも実際に外へ出てる人、いるのかな?」
俺がぼそっと呟くと、
「こういう時こそ、Wチェック!」
姉がウィンクしながらスマホを揺らす。
俺と姉は、Wでタイムラインに外に出た人がいないか探してみることにした。
「どうか!有益な情報あってくれ!」
俺はそう願いながら、Wをタップして開いた。
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