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エッセイ・詩・告知などのシリーズ

高校で一年だけ通っていたプレハブの校舎

作者: ウナム立早


 その校舎はもう跡形あとかたも無くなっている。


 跡地にはなんの痕跡もない。記念碑だってない。


 その校舎はプレハブだった。私は高校に入学してから一年間だけ、そのプレハブ校舎で授業を受け、学校生活を送っていた。


 なぜ、一年間だけ校舎がプレハブになったのか。実はそんなに大した理由ではない。


 旧校舎が老朽化して、私が入学する前から新校舎の建設が行われていたのだが、どうも新校舎の完成が遅れてしまったようなので、緊急で、校庭に二学年分のプレハブ校舎が建てられる形となった。


 三年生はもう卒業となるので、最後の一年も旧校舎で過ごすことになった。プレハブ校舎に入るのは一年生と二年生。一学年に10のクラスがあったので、プレハブ校舎の廊下はやたら長かった記憶がある。


 のちに入ることになる新校舎と比べると、さすがに見劣りをする部分が多かったものの、空調エアコンは効いてたし、廊下は長いかわりに階段が無かったので、あまり不便さを感じることは無かった。


 難点と言えば、ちょっとでも雨が降るとすぐ廊下がジメジメベタベタすることと、トイレが仮設式で冬場は寒かったことぐらいだろうか。


 あとは校庭がほとんど使えなくなったので、球技大会と体育祭をほとんど体育館内で行うことになったのも、なかなか無い体験だったと思う。


 そうこうしているうちに一年は過ぎ、二年生になってからは新校舎に移動。プレハブ校舎は、いつ撤去されたのかわからないぐらい、いつの間にか消えてなくなってしまった。




 高校生の時に一年だけの出来事であったけど、最近になって、テレビでプレハブ型の校舎を目にすることが多くなった気がする。


 テレビで見るのは、地震や水害などで以前の校舎が使えなくなった場合に、建てられたものである。だから建てられた理由の切実さも、私のものとは比べ物にならないはず。


 そんなプレハブ校舎をみていると、ちょっと懐かしいと思うのと同時に、その校舎に通う生徒たちのことも考えてしまう。


 私は一年のみだったけど、彼らは、もしかしたら在籍期間のすべてをこの校舎で過ごすことになるのかもしれない。それに、新しい校舎が建ったり、以前の校舎がまた使えるようになったとしたら、このプレハブ校舎も撤去されてしまうだろう。そうなったら、実質的な母校が跡形も無く消えてしまうことになる。寂しくないだろうか?


 だけど、このエッセイで自分のことを書いてみると、校舎自体は無くなっても、思い出は案外残っているものだということに気がついた。もちろん、記憶が薄れて思い出せないこともあるけど、確かにその校舎は、そこに存在していた。


 たとえプレハブで、何も残らない校舎だとしても、その思い出は消えて無くなったりはしない。


 様々な事情でプレハブ校舎に移動することになった生徒たちも、青春を謳歌して、いい思い出を作ってもらいたいと思うばかりです。



最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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