卓也の秘密
あの死から数日後、俺は、ファミレスにいた。
目の前には、睨んでいる本田さんがいた。
正直、俺は人生で初めての女子とのファミレスに興奮していたが、相手がそんな顔をしているので、無関心を装っていた。
先に口を開いたのは本田さんだった。
「で、何で松野は、最初のテスト、学年一位だったのかなあ??」
いつの間にか名前から君が抜けているが、良しとする。
俺は、なんとなく聞かれることを察していたので、ため息をつく。
事の発端はこうだ。この学校はそこまでの進学校というわけではないが、毎年の伝統で新入生のやる気向上という名目で、中学校の範囲で五教科のテストをおこなっていた。しかもそのテストの順位は廊下に張りだされるというおまけつきだった。
そんなの漫画の中の世界だけだと思っていたんだけどな、
結論から言うと俺はこのテストをノー勉で、オール満点をとってしまった。
しかも各教科の最後の大問は、いわゆる100点阻止問題で結構な難易度だったらしいが。
質問されることを見越していたため、俺は、詰まることなく答える。
「そんなの簡単だ。めっちゃ勉強したからだよ。」
ちなみに俺と本田さんは、何かと接点が多かったため、なんだかんだいって普通にしゃべれるようになったのだった。
「......嘘よ」
俺は耳を疑った。先ほどの嘘に盾を突かれるとは思っていなかったからだ。
「だって、隣のクラスの斎藤君と登校中に話してた話、聞いてたから.....」
それは、テスト当日の朝だった。
「卓也、今日のテスト、勉強したか?」
啓介が聞く。でももう答えは知っているって顔をして。
「そんなの当たり前だろ。してない。」
なんてことない顔で、俺は言った。
「さすが、全国模試二桁は伊達じゃないぜ」
啓介はニヤッとした顔で言う。
「ちょっ、その話すんなよ...」
「悪い悪い、ちょっとムカついてな」
..........すべて思い出した。
「テストの日の朝の話、私その時あなたの近くにいて、聞いちゃったの」
「......」
俺の答えは沈黙だったが、本田さんはつづける。
「何でそんなに頭がいいのに、この高校にきたの?」
手元の炭酸飲料に目を落とし、本田さんがポツンと言う。
俺的には触れられたくなかった話題。
しかし、俺は決心した。
「しょうもない話なんだが、聞いてくれるか?」
俺は話し始める。
あれは私立高の受験日の前日。
最後の塾のしごきを受け、帰っていた時だった。
その日はあいにくの雨で、いつもは自転車で塾に行っていたが、その日だけは、歩きで帰った。
ふと顔を上げ、前を見ると一匹の子猫が車道を横切っていた。その奥には、、車が迫っているのが見えた。子猫は小さいから、運転手には見えないだろうな...
持ち前の頭脳で一瞬でそう判断した。
その時はしょうがないと割り切ったはずだが、次の瞬間、俺は傘を投げ出し、走り出した。そこから後は覚えてない。
だけど運転手が飛び出した俺に気づき、ブレーキを踏んだおかげで俺と猫は助かった。だが、まだスピードが完全に落ちていなく、俺は車とぶつかり、まあまあなケガで二週間入院し、退院した時には、すべてが終わっていた。俺は公立高の二次募集を受けないといけなくなった。が、荻浦高校に入学辞退者が、一人いたためそのひと枠を勝ち取った----------
「どうだ?面白い笑い話だろ」
俺は茶化してこの話と地獄を終わらせようとして、前にいるやつの顔を見た。
「!」
本田さんは泣いていた。
「ごめん、私無神経だったね」
しおれた声で、本田さんが言う。
「つらかったよね、悔しかったよね、松野」
嗚咽をもらしながら言った言葉は俺の心に響いた。
俺の両親も結構無頓着なので、大学受験で頑張ればいいとか言っていたが、
俺自身は結構傷ついていたのだった。....あの妹は兄の気持ちを気遣い、いつも通りふるまっていたが、
俺は目頭が熱くなったが、ふと前を見ると、もうそこには、泣いている本田さんはいなかった。その代わり、思いっきり笑った本田さんがいた。
「だからさ、私と一緒に楽しい思い出、作ろうね!」
その笑みに、俺は初めてこの運命をいいものだと思うことができた。
そして、そしてあの苦い記憶を経験した後で、初めて‘’本当の笑顔‘’をしていった。
「おうっ」