前の席のあの女
春のそよ風が吹き、さくらの花びらが散る。ごく当たり前の風情ある春の陽気だが、俺、松野卓也はとてつもない緊張をしていた。
「お前どうしたんだよ、そんな緊張して」
「啓介、今日は俺の3年間が決まる大事な日だぞ!
この意味分かんないのか?」
こいつは俺の唯一と言っていい親友、斎藤啓介。お前、そんなジト目を向けてくんなよ、、
「お前のその話聞き飽きたよ、高校受かってから毎日のように言ってたからな、「絶対にお前以外の友達を作る」って」
なんだろう、とてもむかつくが俺には友達という友達は啓介以外いない。しかも啓介とは幼稚園からの付き合いなので、中学校では友達ができなかったということになる。
その点、啓介はなぜ俺と友達なのかってくらいの陽キャだ。
こいつは顔が良くモテるし、友達はたくさんいるし、おまけにこんな俺と仲良くしてくれていることからわかるように性格もとても良い。、、、神は平等に人間を作らないのだ。が、彼女は今はいない、、、今はね、
「というか受験のときは災難だったよな、卓也」
「あー、まあしょうがないよ」
心配されないように無表情を装う。
啓介をちらって見てみると心配してそうな顔で俺をみていた。だが俺はなんてことないように校門をくぐった。
わんちゃん啓介と同じクラスになれるかと思ったがそんなことはなかった。現実は厳しい。
ここ都立荻浦高校はいわゆる普通の学校だ。少しだけ、頭が良いという特徴はあるが、それ以外は普通だ。入学式も普通にやり、担任はクラスメイト達に自己紹介をしようと持ちかけてきたのだった。
こういうの苦手なんだよなぁ。
キラキラしたピアスをつけた女子の自己紹介を見ながら苦い思い出を思い出してしまった。
ここでは、ああならないようにするんだ。
しばらくして自分の前の席までまわってきた。
前の席の黒髪ロング美少女が立つと、感嘆の声が聞こえてきた、主に男子のものだが、それらに冷たい視線を送ってから
「本田麗奈です。女の子は仲良くしようね!」
となかなかな発言をしたのだった。
「好きなものはイラストを描くことなんで描いて欲しいものがあったら言ってねー」
うわ内容被ったんだが、、
俺もイラスト(内容はあっち系の)を描く。だから自分の趣味の中で一番引かれない、、、マシなものを選んで言おうとしていたのに、
「じゃあ、次の人」
担任が呼ぶ。
どうする...もう、いいか、
それ以外の趣味をいうとなんか引かれる未来しか見えなかったため、俺は覚悟を決めた。
「えーっと、松野卓也です。偶然なんですが、僕もイラスト描くので、えーっと、あの、、よろしくお願いします...」
俺の高校生活、終わった...
なかなか酷い挨拶をして座る。
そしてやっと自己紹介が終わった。
その休み時間だった。
「ねぇ、君もイラスト描くの?」
「えっとまあはい、」
突然前の女が話しかけてきた。
近くで見るとさらにその美しさがわかった。
長い艶がかった黒髪。長いまつげ。大きな目。こりゃあ男どもが感嘆の声を漏らすのも分かるなと思いながら女子と話す。
「松野くんだよね、どんな絵描くの?」
「えっと、そのー、アニメのキャラ、とかですかね、」
「見せてよ、それ!」
どうしよう、絡めれるのも面倒だし、マシなやつもう見せるか。
俺はそう思いスマホを操作してその女に見せた。
「えっ上手!!」
そこにはアニメキャラの必殺技シーンが細部まで描かれていた。
「じゃあ、、そっちも見せてくださいよ、」
ずっと見せると自慢に思われるかもしれないし、話題がなかったのでそう言った。
「えっ、あの、ちょっと今日は厳しいかなぁ」
正直この時俺は同じ趣味の人間を見つけ、上がってしまっていた。普段はネットの交流でイラストを見せ合うということをやっていたため、生の人間とのイラスト鑑賞に興味があった。だから少し強引に言ってしまった。
「えっと本田さんだっけ、俺は見せたんだから、見せてもいいんじゃない」
そういうと少しの間、本田さんとやらは考えた。
そして赤面し、少し俯きながらスマホ画面を見せた。
俺は見た。小学生の落書きとしか思えないものを。
「これ、何?」
「笑わないで...聞いてね、」
「わかった」
「これはね、鬼斬りの主人公...」
鬼斬りは人気漫画だ。俺も過去にその主人公をかいたことがある。
でも俺にはやはり小学生の落書きにしか見えなかった。
俺は堪えきれなかった。
「ハッハッハッ」
爆笑である。
「笑わないでって言ったでしょ!」
赤かった顔がさらに赤くなって、さっき男子を冷たい目で見たようにキッと俺のことを見た。その時起こったのだ、あの出来事が。本田さんは見た目通りの清楚ではなかった。
本田さんは椅子に反対に座って俺と座っていた。(といってもうちの学校の椅子は背もたれ部分に隙間が開いているタイプじゃなかったため、ラッキースケベイベントは起きなかったが、)
だから怒った本田さんは俺がリラックスして伸ばしていた足を思いっきり踏んづけた。
「もうっ」
と言いながら。
その瞬間、俺の性へ....俺の趣味はくるってしまった。俺は女子に足を踏まれる気持ち良さを知ったのだ。初めての経験に胸が高鳴り、色んな感情が入り組んででた感想は
きもちい
だった。俺の語彙力は第三宇宙速度を超え太陽系を脱出したのだった。
本田さんはそんな変態のことなんて露知らず、赤い顔で俺の顔を睨みながら踏みつづけたのだった。
そして限界を突破した俺は無事死んだのだった。
これは本田さんに新たな扉を開かせられる俺の物語である。