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人がわるい
「 退治されたのは、『バケモノ』だ。杉の葉を着こんで鎌を振り回すおれの兄のかたちをしてはいたがな。 ―― その『バケモノ』の魂を鎮めるためにつくった社だから、退治したあとに、骸はあの下へうめられた」
「お社の下へ?それなのに、お社があんな放っておかれているのでございますか?」
「『バケモノ』は退治され、もう《出てくることはない》のをみな知っておったからな。おかげでこの山もまた、何事もなく通れるようになったというわけだ」
「 っつ 」ヒコイチは怒鳴りそうになるのをどうにかこらえた。
とたんに大きな笑いを男があげ、いやすまぬ、とダイキチに頭をさげた。
「 ―― つくりばなしをしてみたが、どうもうますぎたか?」
「これは・・・、おひとが悪い」
ダイキチは首にあるてぬぐいをまき直している。
すまぬすまぬ、とわらった男は社をみやり、息を吸うようにわらいをおさめた。
「 ―― あのような『あやしい社』があるのでな。つい、はなしをつくりたくなってしまった。雨宿りの暇つぶしになるかとおもうてな」