つぎの花の名を
ここで終わりです。『藤の 』にでるオチョウとユズスケがはいってます。。。
山道をおりてゆく背を、楠の枝にこしかけたこどもがふたりで見送っていることに、ヒコイチは気づかなかった。
「まったく、ユズスケはあんな煙もがまんできないのかい?」
「だって、あんなの嗅いだことねえもの。オチョウねえちゃんはあるのかよ?『ヤオビクニの香』だって、ジョウカイさまも言ってたぞ」
「あ、あるのは、知ってたよ。それに、このまえのひとが、その『ヤオビクニ』だろう?」
「え?あのひと、髪あったよな?ジョウカイさまみてエに、剃らねえのか?」
「いまは、あのダイキチさんのところにいるから、いいんだってさ」
こそこそと交わされる、こどもふたりのはなしは、ヒコイチの耳にはとどかない。
とどかないが、ちょっとだけ、後ろ首がむずかゆくなったヒコイチは、道をふりかえる。
もう、楠もみえず、あたりは育ちすぎた杉や松のせいでうすぐらいが、さしこんだ陽はあかるく、木々のかわいた肌を照らしている。
キ イー とどこかで山の鳥が鳴いた。
暑くなる夏のまえにきたら、あの香炉にはなんの花がさしてあるのだろうか。
ダイキチといっしょにまた、ここへくるまでの道中に、花の名を言い当てることにしよう。
目をとめてくださった方、おつきあいくださった方、ありがとうございました!




