『 っくしゅン! 』
クスノキのそばにあった朽ちた社のかわりに、小さな石がたててある。
ダイキチが、鎌と黒い瓶をおさめた寺の坊主が、この塚石のような『墓』をつくってくれたという。
《清め》が終わるまで、ひとりでいかないよう、ダイキチにさきまわりされたようにいいつけられていたので、我慢していたのだが、ようやく、もう行ってもへいきだろうということになり、来られたのだ。
ダイキチから預かってきた、鋳物のような重く小さな香炉で、『先生』にわたされた抹香を焚く。
手をあわせた石のおもてには、ひとのような、そうでないようなものがが二人、寄りそうように彫ってある。もっと年月がたち、ここにあった社のことを知る者がいなくなれば、この《墓石》も、ただの《道祖神》のひとつになるだろう。
最後にいまいちど楠をみてからゆこうと、まだ煙のたつ香炉をそのままにして立つ。
っくしゅン!
「 っっつ!?」
誰かがいるのかとあわてて楠をふりかえると、太い枝のうえに、くちもとを手で押さえた十二、三の男のこどもがいる。
こちらも驚いているが、むこうも驚いた目でヒコイチをみていた。
「 ―― ・・・あんた、そいつらの知り合いか?」
くちをおさえたままのくぐもった声できく。




