兄と弟
「 あのウ・・・ その、ダイキチさんの『しりあいの坊さん』ってのは、さっきのお山にあるお寺にでもいるのかい?」どうも、たいした法力の坊さんらしい。
「いえ、あのお寺ではないですが、―― まあ、そのうちに・・・。 ともかく、人をおそっていたのは、憑りつかれてしまったサブロウさんの幽霊でしょう。そんなお兄さんが心残りで、シロウさんも幽霊になってまで、どうにかしようとしていたのでしょうが、まあ、あんな呪いにサブロウさんがのっとられていたのなら、シロウさんひとりでは、とめるのも難しかったでしょうなあ・・・」
ダイキチは錆びた鎌をやさしくみつめ、首を守ってくれたてぬぐいでゆっくり包んだ。
「 ―― ヒコイチさんのおかげで、ようやく休める」
「 はあ?そりゃちがうでしょ。 ダイキチさんがおれをかばってくれたのと、その手ぬぐいがあったおかげで、どうにか、ふたりとも無事でいられてるんだ。ああ、あと、シロウさんのおかげだな。あんなアニキをのこしておけねえ、っておもってたからだ。 おれは兄弟もいねえからよくわからねえが、やっぱり、そこまでおもうってのは、うん、 ―― たいしたもんだ」
『アニキが待ってらア』とわらったシロウの顔は、こどものようだった。