社の下
あのとき、シロウという男が消えてしまい、ここまでに起こった事がまだよくのみこめずにいたヒコイチは、ダイキチにせかされて朽ちた社の縁の下にもぐりこみ、土をほりかえすことになった。
社の下には、黒く大きな瓶が埋まっていた。
ダイキチにわたされた上等な水晶の数珠を手に、半分ほりだした瓶のくちへ、幾重にもまかれた紙とヒモをとると、中には砕けた人の頭の骨がくち近くまで詰まり、いちばん上に、黒く立派な刀の鍔がのっていたが、それは、まっぷたつに割れていた。
「 ―― かまきり、だ・・・」
鍔に、蟷螂がカマをあげる意匠がほどこされている。
「ヒコイチさん、さわらないよう、そのままで。割れているのを確かめたかったので、もう、もどしましょうか」
ダイキチはここになにがあるかを、はじめから知っていたようだ。
「 ダイキチさんよお、 あの、はじめに来た男のことを、はじめから幽霊だってわかってたんだろ?」
それもきっと、よくないほうの幽霊だと。
「ええ、まあ、少し、―― 出てきたようすが見慣れないものだったので、ようすをみようと思いましてね」
『 ヒコイチさん、―― なにもしゃべらないでください 』
あのダイキチのことばのおかげで、ヒコイチは刀をもった男には、みえていなかったのだろう。