『 どうした? 』
残虐、血の表現あり!ご注意を!
「 なんだ、このじじい、 なぜ、首がとれぬのだ?」
おのれの首に鎌の刃をくいこませたまま、ダイキチをにらんだ男は、またワキザシをふりあげた。
「いいかげんにしてくれ!!」
手ぬぐいがまかれた鎌を、もう片手にもちかえた男がどなる。
「おめえはサムライなんかじゃねえ!おれのアニキだ!もう、とっくに死んでンだ!」
さけびながら鎌をふりあげたままむかうのに、当然ながら刀をもつ男はわらった。
刀のほうがはえエ
ヒコイチがそう思ったとき、むかってくる男を斬りすてようとした刀がおかしなところで、びたり、と止まる。
「 な、 」
刀をもつ男は、先のひとふりで首をとることのできなかった年寄りが、数珠をすりあわせながらなにかを唱えているのに気づいた。
だが ―― 、
その間に、おろされた鎌の刃が、おのれの脳天につきささったことには、すぐには気づけない。
「 っご 、 そ、 く、 首を、 くびを、 」
ようやく、額を血が伝うと、鎌をつきたてた相手をみる。
目が、なにかを見つけ、おどろいたようにみひらいた。
「 ―― ・・・シロウ? ・・・どう・・した?」
そう聞くと、そのままうつぶせで倒れたが、雨水のはねかえる地面はなんの音もたてなかった。
「 あ、あにき、 そうだよ、おれだよ、 ああ、さいごだけ、 おれのことがわかったのか・・・」
手をのばすまえに、たおれた男はそのまま煙のようにうすくなり、あとにはなにも残らなかった。