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マサトVSミハエル・グリン<1>

 副会長の事だから地下通路が掘られている旧糧食庫は当然逃走に備えて警戒させていると思う。


 学園の外壁は三階建ての校舎よりも高く、旧糧食庫の比ではない程分厚いので乗り越える事も穴を空ける事も短時間では不可能だ。


 逃走用だけに長い時間と資金を投入して地下通路をもう一本掘るという事も考えにくい。それに予備的な地下通路があるなら糧食庫に不具合があると分かった時点でそちらを使うだろう。

  

 ではどこから逃げるか?


 僕なら一番人員の少ない南門を突破する。


 西正門と北門はどちらも交易地区のフェンスで囲まれていて三か所のゲートをそれぞれ守備隊が守っている。封鎖が可能で多くの兵に囲まれる危険のある門から出ようとは思わないはずだ。


 ミハエルが逃げてから僕が追い始めるまでどれぐらいの時間の開きがあるだろうか?


 間に合うか?


 拍車は無いが僕は馬の腹を蹴り、首を右腕で押して全力で追う。


 およそ30分で魔石灯に照らされた南門が見えた。


 静かだ。読みを外してしまった?・・・いや!


 更に近づくと警衛所前に白い中装備ミドルメイルが数体倒れていた。

 守備隊がやられている!


 更にその先の門前にまさに馬に跨ろうとしている人影があった。


 「ミハエル・グリン!逃がさないぞ!」


 僕は門側に素早く回り込んだ。


 「誰かと思えばティールマンではなく君か。騎士隊を出し抜いて僕を追って来るとはなかなか頭が切れるみたいだが遅かったな。私はこれで失礼するよ」


 「このまま逃がすわけはないでしょう」

 「ふ。あはは。この状況を見てよくそんな事が言えるな」

 グリンは乗ろうとしていた馬の手綱を離し、倒れている十数名の守備隊員を見回した。


 「ふむ・・。分からないのかい?頭の良い男だと思っていたが違ったのかな?」

 

 僕はゆっくりと下馬した。


 「旧糧食庫の地下通路は何処の援助で掘った?横流しした魔鉱石は何処へ持ち去られて何に使われている?それと学園内の協力者は他に誰が居るんだ?」


 「ティールマンに聞いたのですか?本当に目障りな一年生ですね。しかしそのような事話すわけが無いでしょう」


 「じゃあお前がロッテにしたように無理やり全部吐かせてやる」


 「はは。剣も持たず私と戦おうと?愚かな。もう少し魔鉱石を集められる予定だったのですがベアトリッツや君達のせいで計画が台無しになって私の立場も微妙になってしまいました。このまま立ち去るのは苦々しいと思っていたところなのでせめて生意気な一年生に制裁を加えておきましょう」


 『私の立場』か。やっぱり何かの組織に属しているんだな。

 「制裁を受けるのはお前の方だ。あまり人を見下さない方が良い」


 「守備隊のこの惨状を見てよくもそんな事が言えますね。学園トップの魔術師の強さを身をもって知ると良い」


 「なんていうか、それはそれで好都合かな」

 魔術科の学生のレベルを知る良い機会だ。


 「むぅ!いちいち癇に障る奴だ!」

 グリンは右手を前に突き出した。


 1,2,3。

 闇属性収斂攻撃魔法LV1の魔法陣が展開された。

 三秒か。早いな。

 

 「普通科の君は知らないでしょうからお教えしましょう」

 ミハエルの掌からどす黒い霧が発生し渦を巻きながら球状に収束された。


 「闇魔法は標的の細胞組織に作用して運動能力、思考力を低下させ、高いレベルでは瞬時に身体の壊死を引き起こします。光属性と真逆の特性を持つ、対人、対生物戦最強の魔法です。死ぬ前になかなかできない経験が出来て良かったですね!」


 ミハエルの掌で野球のボール程の大きさになった黒い霧が音も無く撃ち出された。


 僕はそれを両腕を下げたまま真正面で受け、黒い球体は霧散した。


 「ふふ。どう・・で・・す・・??」


 僕はミハエルを真っ直ぐに見つめたまま一歩二歩と進んだ。


 「?。ま、魔力量が多いみたいですね。少し油断しましたか」

 そういうとミハエルは再び魔法陣を展開した。


 「今度はLV3か」


 「はあああ!」

 ミハエルの気合と共に打ち出された1m程の球体が直撃したが特にダメージは無い。


 「は?・・バカな。そ、そんな事があるはずが無い!。もう立っていられない・・はず・・だ・・」


 「残念だったな。他の火や氷、石礫なら当たればそれなりにダメージを受けるが、僕に闇魔法は効果がない」


 光属性は対象の細胞組織を活性化させて再生力を大きく上げる治癒魔法だが対極に位置するのが闇魔法でその特徴は彼のお節介な説明通り。


 「ひ、人より我慢強いのは認めてあげましょう!」

 ミハエルは再び魔法陣を展開した。


 我慢がどうかではなく、魔力量の問題だという事はミハエル自身もわかっているはずなのだがどうにも高すぎるプライドが思考を妨げているみたいだ。


 「む、無理に堪えず膝をおっていれば見逃してやったものを!」


 ミハエルの頭上に出現した巨大な黒球が放たれ、三度僕を直撃した。


 しかしこれも霧散、消失。


 「もう一度言います。僕に闇魔法は効きません」

 「な?!!!」

 

 「そ、そんな馬鹿な!わ、私の魔力量は160だぞ!三年時は首席で進級したのだ!あ、あり得ん!」


 なるほど。学生で160レボスは大したものだ。

 王国魔術師の平均魔力量はあるから守備小隊を全滅させたのも頷ける。

 

 だが・・・。


 闇魔法はメリットとデメリットが両極端という特性がある。

 それは他の属性と違い、己のエネルギーを相手に直接ぶつける魔法なので対象の魔力量が小さいと複数人が相手でも無双できるのだが逆に自分より魔力量が大きい相手には効果が薄いというものだ。

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