真夏の公園で
死神―そう、僕がその死神に出会ったのは夏の夜中、家の近くの公園だ。
その死神はまだ幼い少女であり、
その死神は白のダウンジャケットを羽織り、
その死神はブランコに乗っていて、
その死神は大きな鎌を背負っていた。
虫の鳴き声と重なるブランコの揺れる音と鉄の軋む音。
ブンブンと音を立て、ギィ・・・ギィ・・・と軋んでいた。
それと同時に背中の鎌がカシャ、カシャと音を立てている。
鎌の刃は綺麗に磨かれていて月を映している。
その反射で僕の顔に月光が差す。
とりあえず僕は話しかけてみることにした。
この時僕は、正直目の前にいるのは死神とは思ってもいなかったし、そもそもこの真夏の夜に、ダウンジャケットで、しかも大きな鎌を背負っている、この時点で何がなんだか分からなくなった。
「おい、そこの。」
死神は俯き加減な顔を正面にいる僕へと向けた。
しばらくお互いの目を合わせていると、死神はブランコの勢いをつけるのを止めてブランコを止めた。
虫の鳴き声だけになる。
しかし虫の鳴き声もなくなった。
静寂しきった。
死神はブランコから降りると足音立てずに僕の目の前までやってきた。
上目使いで僕を見つめる。
一瞬目を反らし、辛そうに、寂しそうに口を開いた。
「あなた、私が見えるの?」
僕は思う。
この死神は何かを願っている。それは死神としては願ってはいけないことなんだと。
それがわかったのはもう少し後のことだ。
掟、ルール、条約、決まり。
この幼い死神にはまだ―。