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第38話 深層ダンジョン攻略前編

階段を降りている時にも感じていたが、こうして階段を降りて下から見上げると一つ一つの大木がどれほど大きいのかがわかる。

 20mは超えているのだろうか……近くで見れば見るほど正確な大きさがわからない……


 その大木の生い茂った葉の間から漏れてくる光を浴びようと成長したのだろうか、足元には人の背丈ほどもある多種多様な草が生い茂っていた。


「この中を進んでいくのか……」

「どんな形の魔物がいてもおかしくない……気をつけよう」

「ええ」


 みんなの顔にも疲労が溜まっているように見える。それに集中もきれているようだ……


「僕が前に出ます」

「ブレイブ……」

「大丈夫です!やらせてください」

「わかった……頼む……」


 僕はククリナイフと剣を手にして草木の枝を祓いながら先に進んでいく。


 ーーパキッーー

    ーーーシャク!ーーー


 どちらに進めばいいのかも検討がつかないが、とにかく前に進む。必要以上に強く枝を祓って前に進むことで、僕も不安を紛らしていたのだろう。


 ーーードチュ!!ーーー

『キュルァッ!』


「っ!?」

「なんだ!?」

「虫の魔物が枝に擬態していたみたいです……」


 たまたま僕の振るったククリナイフが胴体部分を真っ二つにしたのか、木の枝のような柄をした鋭い牙をもつ魔物が目の前で奇声を上げて倒れた。

 やはりダンジョンは終わっていない……ボスが生きているんだ……


「こんな形の魔物は見たことがない……」

「それでも魔物……と言うことはダンジョンはまだ攻略できていないってことですね……」

「ああ……そのようだな……」

「ちくしょう!!」

「とりあえず、魔物がいるとわかったので、集中してゆっくりと進みます!」

「は、はい!」


 なけなしの集中力ではあるけど、先ほどよりもしっかりと目の前の草木を見極めて進んでいく。

 擬態した魔物というのはなかなか厄介ではあるが、基本的に2つのパターンで存在していることがわかった。

 

 1つが僕たちを待ち伏せて積極的に攻撃してくるタイプ。こちらは相手の攻撃範囲に入れば必ずこちらを狙う予備動作が起きるので、よく見ていればわかる。

 残るもう1つの方が厄介で、接触するまで動かず、接触することで自己防衛をするようにトゲが体から突き出てきたり、ガスを放ってくるのだ。


「ぐっ……またガスです!」

「吸い込まないように注意しろ!」


 注意して進んでいても葉っぱに擬態していたり、足元に落ちていたりして気づくのが遅れてしまう。

 ガスを吸い込むと体が少し痺れたり、温度の感覚がおかしくなるのか、武器が氷を持っているかのように冷たく感じたりする。

 

 解毒するための薬草は母がダンジョンに持ち込んでくれていたが、それほどたくさんの数がある訳ではないし、フェニーの回復も全ての異常を治せる訳ではないらしい

 なるべく吸い込まないように口や鼻を袖で覆ったりするのが精一杯の対処だった。


「……少し広い場所に出られそうです……気をつけてください!」

「……ああ……」

「ようやくか!」

「ブレイブ、少し下がれ」


 開けた場所に出るということで、盾を持ったリッツさんが前に出てくれた。

 隊列を改めて整えて少しずつ茂みから出ていくと、そこは小川の始まりとも思える湧水がでている場所だった。


「水……ですね……」

「つ、疲れました……」

「そうだな……少しだけ休憩するか」


 集中しても防げない草木の魔物に気力も体力も奪われてしまった僕たちは、一度この場所で休憩を取ることにした。

 周囲の草木に擬態した魔物がいないかを確認してから腰を下ろす。


「水は綺麗そうだが飲みたければハーミットに頼め」

「そ、そうですよね……何があるかわからないですもんね……」


 僕は手を湧水につけて洗いながら、水を掬ったところでリッツさんに止められる。

 ハーミットがいてくれてよかった……忘れていたけど、魔法の水なら安心して飲むことができるんだった。


「ハーミット……お願いしてもいい?」

「……///は、はいっ……『クリエイトウォーター』」


 少し見上げる形でハーミットにお願いすると、なぜか顔を赤くしながら魔法を使ってくれる。

 やっぱり疲れているんだろうな……


「ありがとう、美味しかった!!」

「い、いえ……これくらいならいつでも言ってください」

「助かるよ!一家に1人ハーミットがほしいね!」

「っ……///ありがとうございます……///」


 顔をさらに赤くするハーミットは僕に背を向けると近くの切り株に腰かけた。

 疲れているんだろうし、休めるうちにしっかりと休んでほしい。


「この先どうすんだ?川に沿っていくか、右手の獣道っぽい方に進むか」

「どうするかな……」


 レントさんが寝っ転がりながらみんなに問いかける。

 僕たちの進んできた道をそのまま進むと小川に沿っていく形となり、獣道を進むと右にそれていくような形になっている。


「フェニー、少しだけ上から見えたりする?」

『行ってくるの〜』


 先ほどは茂みの中を進んできて魔物も多く偵察もできなかったため、フェニーは張り切って飛んでいく。


「川沿いを進めばなんかありそうな気はしますよね……」

「ただ、水が流れたり溜まるってことは他よりも低くなってるってことだ……その分今まで以上に視界は悪くなるし、襲撃された時には相手に高い位置を取られたり、場合によっては引き返せないようなトラブルに遭う可能性もあるぞ」

「だったら獣道ですか?」

「……獣道は獣が使うから獣道だ……何かと遭遇するだろう……」

「それをいったらこの水場まで道が繋がっちまってるんだからあんまり変わらねぇような気もするがな」

「確かに……結局はフェニーの偵察を待ってって感じですね」


 この先どう進むかという話も一旦落ち着き、話題が無くなってしまった。

 今頃外は夜になっているのだろうか……ダンジョンの中では時間の感覚がわからなくなってくる。太陽などの時間の目安になるものが存在しないからだ……

 僕はレントさんと同じように寝っ転がると、地面は思いの外ひんやりとしていてなんだが眠たくなってくる……


「……眠たい……」

「あぁ……そうだな……」

「……zZZ」

「ふぁ〜……」


 疲労が溜まっていたのか、全員が眠たそうにしている。レントさんに関してはすでに眠ってしまっているようだ。


「寝ずの番を立てないのは危険ですよ……」

「……そうは言ってもだな……こうも眠たくては……zZZ」

「……待て!……これは!……」

「……グレイ……さ……ん?……zZZ」


 グレイさんが何かに気づいたような言葉を言っていた気がするが、この重たい瞼を開ける力は僕には残されていなかった。

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