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第31話 ダンジョン攻略中編II


ーーパシャン!ーー


 僕は体が少し温まったので、水底を目指して潜水していく。底は20mくらいだろうか……流石に息が続かない。

 僕たちが休憩していた建物の下を掘り進めたかのような横穴は奥が暗すぎて距離感もわからない。

 しかし、脱出できる可能性があるとしたらこちら側だろう……問題はこの横穴をどのように進んでいくのかと言うところだ。一度上に戻ろう……


「ぷはぁ!」

「ブレイブ、なにかわかった?」

「母さん、僕たちが足場にしている建物の方向から中央の建物方向に向かって横穴があるのはわかったんだけど、暗くて先がどうなってるのかまではわからなかった」

「困ったわねぇ……」


 やはりそんなにすぐに解決の糸口は掴めないか……そもそも何でここに水が溜まっていて、なんのためにここは出入りが出来ないんだろうか……


「ねえ、2人とも……なんでここだけ水が溜まってて、出入りができないんだと思う?」

「……水を溜めときたかった?」

「だとしたら水を取り出せないとあまり意味はなさそうよね」

「向こう側には水を使える何かがあるってことなのかな?」

「魔物がそういうことをするのかはわからないけれど、台所とかに引いてきていた水道管は虫が入らないようにこんな感じでS字になってるわよね」


 母はハーミットの作ってくれた足場に歪な形のS字を描く。今いる僕たちの場所は上に向かってまっすぐになっているので、同じような構造と考えるのならUの形のになっているのだろうか


「可能性はあるかもしれないね……でもそうすると向こう側に行くと魔物が水を使っているところに出くわす可能性があるのか……」

「……どうにもならないですよね…これ……」


 半ば諦めムードが漂う中、なんとかできる方法は無いのか今まで経験したものを思い出していく。


「……そういえば今まで使わなかったけど、ハーミットの探知魔法で構造とか、敵がどのくらいの距離にいるのかわからない?」

「そ、そうでした!……登ったり泳ぐことばかり考えてましたけど、探知すればこの水がどこまで行ってるのか分かります!」

「やってみましょう」

「はい!……『プレミスサーチ!』」


 ハーミットは目を閉じて魔法を使う。

 前回僕の魔法の才能を見た時のサーチとは違って時間がかかるようだ。

 しばらくしてからハーミットは目を開ける


「この水は150mくらい中央側に横に移動した後一度水路が登っていって、登り切ると水が無くなって、また水路が始まるみたいです……その先は探知の範囲外でわからなかったですが……」

「魔物はいたのかしら?」

「ここの、周囲200mには少なくとも反応はありませんでした」

「そっか……縦に10m、横に150m、縦に10m泳ぐことになるのか……」

「あ、あの……もしかしたらなんですけど……」

「どうしたの?」

「他の壁には無かったんですが、この壁の後ろに大きな空間があるみたいです……」


 そう言ってハーミットは僕たちの休憩している足場の飛び出した壁に向かって指を刺す。


「魔物はいないんだよね?」

「はい、それに……なんだか不思議な感じがあるんです……」

「それって大丈夫なのかしら?危なく無い?」

「は、はい……優しい雰囲気を感じると言うか、悪い感じでは無さそうです……ただ、私も今まで感じたことがない気配なので……」

「うーん……でも150m泳ぐよりは現実的な気もするし、穴をとりあえず開けてみる?」

「そうしましょうか」

「ハーミットの魔法でなんとかなりそう?」


 僕たちの言葉を受けて、ハーミットはしばらく壁を触りながら考え込む。

 壁が思ったより分厚いのか、頑丈なのか……すぐにできると言わないと言うことは何かしらの問題があるようだ。


「最大まで魔力を練って攻撃魔法を使えばなんとか壁は破れると思います……ここで魔法を発動するとお二人を巻き込むので、2人は反対側に待機していてください」

「ハーミットは?」

「私は魔力を使い切ると気絶してしまうので、ここで魔法を打ちます……まあ、怪我くらいはするかもしれませんが……大丈夫です……」


 ハーミットは僕たちに怪我をさせないように距離を離して置いて、自分だけは怪我をしてもしょうがないと言う。

 僕はそんなことを認めたく無い。


「ダメだよハーミット!自分は怪我をしてもいいなんて……僕はそんなやり方認められない!」

「でも水中で魔法を使って気絶したら……」

「その時はまた僕が助けるよ!さっきみたいに!」

「さっきみたいに…………」

「ブレイブ?ダメよ、今は真面目な話をしてるの」

「母さん!?僕ちゃんと真面目に話してたよね!?」

「ハーミットちゃんも嫌なら嫌って言わないとダメよ?」

「い、嫌じゃ無いです!……あっ、違くて……あの、その……///」

「ほら、ブレイブのせいでハーミットちゃんが真っ赤になっちゃったじゃない」

「うぅっ……///」

「これ僕が悪いの!?」

 

「でもブレイブの言うとおりよハーミットちゃん、誰1人傷ついていい人はいないのよ。みんなで助け合って、協力して進みましょうね」

「わ……わかりました…じゃあ、魔法を撃った後はおまかせしてもいいですか?」

「任せなさい!ちゃんと私が溺れないようにしてあげるから」


 ちょっとしたすれ違いもありながら、3人で協力して進んで行きたいという気持ちでまとまった。

 さっそく準備を始めよう。


「ハーミットはお母さんに抱えてもらって魔法を使ってもらって、水を吸って重たくなるローブは僕が預かってるね」

「お、お願いします」


 全員で足場の反対側の壁まで移動した。

 ハーミットは魔法の準備をするために目を閉じて魔力を高めている。

 僕にも魔法の才能があるからなのか、ハーミットがそれだけ魔力を高めているのかはわからないが、ハーミットを中心に何かの力が集まっていくような気配を感じる。


『フレイムランス!!』


その力が集まりきったタイミングでハーミットはいつものファイヤではなく、フレイムと言う呪文を唱えて魔力を解放した。


 燃え盛る火炎の槍は射出されるとあっという間に足場の少し上側に接触する。壁にあたり、その先端が少し食い込むと、一気に爆発した。


 ーーーードォォォォォン!!!!!ーーーー


「母さん!一瞬だけ潜って!」

「ええ!」


 爆発の衝撃と、それにより辺り一面に広がる炎の波を回避するように水中に避難する。

 ハーミットが溺れないように口と鼻を押さえてくれているが、早く上がった方がいいだろう。


 数秒して頭上を炎の波が超えていくのを確認して浮上する。


「ぷは!……危なかったね……」

「さすがハーミットちゃんね……」

「ハーミットは大丈夫!?」

「ええ、溺れてはいないわ、呼吸はちゃんとできてる……ただ、やっぱり魔力切れで気絶してしまってるみたいでしばらく起きれそうに無いわ……」

「わかった……とにかく足場の方に戻ろう」


 僕たちは足場に戻り、母と2人で協力してハーミットを水面から引き上げる。


「ちょっと中を確認してくるね……」

「ええ……流石にこのままって訳にはいかないものね、お願いするわ」


 ハーミットの開けた穴から中を覗くと建物の中は薄暗くはあるが、目が慣れればどこに何があるのかはわかると言ったくらいの明るさは確保されていた。

 外からの光が全く入っておらず、完全に密閉された空間なのに、どうやって明るさを確保しているのかは疑問だったが、危険があるかどうかの確認はしておいた方がいいだろう。


「よいしょっと……いってきます」

「何かあったら呼んでちょうだいね」

「うん!」


 足場より少し高い位置に穴が空いているため、手をついて登り、そのまま中に飛び込む。


「明かりはないけど不便はない……ダンジョンの中なのに本や箱が、たくさんある……なんなんだろうこの部屋は……」


 ダンジョンなんて初めて来て、宮殿を見た時には驚いたが、この部屋は驚きと言うよりも違和感を強く感じるようなものだった。

 手当たり次第物色していきたいが、ハーミットが感じた不思議な感じの正体を確認しておきたい。


「この先かな……」


 本が押し込められている棚の間を通り、少し広い空間に出た。周囲には本や箱などの物が散乱しているのに、この場所だけ中央の灰の山を起点に円を描くように物が置かれていない。

 

「この灰がハーミットの言っていた気配ってやつなのかな……」


 リッツさんやグレイさんがいれば不用意に触るなと警告してくれたのかもしれないが、僕は深く考えずにその灰に触ってしまう。


「ぐぅっ!!!」

 

 灰に触れた手のひらが燃えるように熱くなり、ズキズキと痛む。手のひらを見ると、焼け爛れ、血が滲み地面に滴り落ちる。

 灰は僕の血を欲しがるかのように、溢れた血を求めて蠢き地面を這いずり回る。


「これが……優しい気配って……やばいでしょ……」


 手のひらの痛みがどんどん強くなり、灰は手のひらから肘、肩と侵食してくる範囲を広げる。

 範囲が広がるたびに焼ける痛みは強くなり、出血も増える。

 落ちてくる僕の血を飲み干すかの様に吸収すると、その山積みの灰の形が燃え盛る鳥へと姿を変えていく……やはり魔物の類だったのか、なんとかしないと。そう思い剣を握ると頭に声が響く。


『待って……ごめんね!危害を加えるつもりは無かったの!』

「誰だ!」

『私はフェニー……不死鳥なの……』

「フェニー……不死鳥ってなんだ!」

『不死鳥は死なない火の鳥なの。再生や不死の象徴……今はこの空間に閉じ込められて、復活に必要な魔力も炎も無くて灰になっていたの……』

「それで……僕の血から魔力をもらって……復活したら敵になるのか?」

『不死鳥はもらった恩は忘れないの。貴方を契約者として死ぬまで一緒にいるの』

「……うーん」

『まずは傷つけてしまった部分を癒すの……ごめんねなの』


 そう言ってフェニーと名乗る不死鳥は涙を僕の手のひらに押し付けてくる。

 すると、あれだけ焼け爛れ痛んでいた手や肘から痛みがなくなり、皮膚も元通りになった。

 燃え盛る炎の体も人肌ほどの心地よい暖かさに感じる。


「ありがとう……」

『私がやってしまった事なの……気にしないでなの……』

「そういえば炎の体なのに熱くないんだね」

『不死鳥は体の温度を自在に変えることができるの』

「そうなんだ……それでここがどう言う場所なのか聞いてもいい?」

『ここはダンジョンの中で産まれた私から再生の力を引き出そうとしたリッチが作った実験施設なの」

「ボスを知ってるの?それに実験って」

『ボスはきっとリッチなの。体は不死でも肉体は朽ちてるから体を取り戻したかったみたいなの』


 フェニーが語ったのは、ダンジョンのボスはおそらくリッチと言う魔物で、不死の体を求めた魔法使いという概念で姿が作られた魔物らしい。

 魔法使いとしての概念と知識が魔物にもたらされた結果、不死と再生を司る不死鳥を確保・研究して、その力を奪って不死だけでなく、肉体を再生し、さらに上位の存在へと進化をしたかったらしい。

 結果としては失敗に終わり、不死と再生の力を持つフェニーを憎み、魔力を断った建物の中に封印していたのだと言う。


「フェニーもダンジョンから産まれたってことはリッチを倒したら消えちゃうの?」

『私は貴方と契約してダンジョンとは切り離されたから心配ないの』

「そうなのか……じゃあ改めて、これからよろしくねフェニー!僕はブレイブ。このダンジョンを攻略しに来たんだ」

『よろしくなの』


 こうして僕は新たに仲間ができ、ダンジョンのことやボスらしき魔物の情報を手に入れることができた。

 一度母とハーミットの元に戻ろう。

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