第27話 装備
「リッツさんが前衛として一緒に行くって……この街のことはどうするんですか!?」
「俺の対処していた問題は現状すぐに動ける状態にはない。ダンジョンに行って戻ってくるくらいの猶予はある」
「そう言うことじゃなくて!リッツさんが怪我でもしたら……「それは全員が同じことだろう」」
母がダンジョンに向かうと言っていた時の悩んでいた顔とは一変して、決意を固めた表情をしたリッツさんは言葉を続ける。
「今戦っている、戦おうとしてくれている仲間に怪我をしていいものや、いなくなっていいものなどいるわけがないだろうが」
「そうですけど……」
「それに、俺が1日や2日指示を出さないと何もできないような奴らじゃない……そして、この現状で安全なところで何もせずに指示を出すだけの奴に皆はついていきたいと思うか?」
今までのリッツさんの指示がなければここまで体制も整わなかっただろうし、街ももっとぼろぼろになっていたに違いない。僕が戦えるのもリッツさんがそう言う場所を作ってくれたおかげだ……だから僕は、僕達はリッツさんを信頼してついていってるじゃないか!!
「僕達はリッツさんの指示があったからここまでスムーズにやってこれたんじゃないですか!」
「それはお前たちだからだ!まだここにきていない住人はどうだ!?俺のことをまだ楽園に逃げた奴らと同じと見ていることだろう……それではこの先立ち行かなくなる!
アーネスの気持ちもわかる……そして気づいた……戦うと決めたやつを支援するだけで、指示だけ出してただ待っている自分に……だから、あいつから託されたお前たちを守るために今回は俺も行こう」
「リッツさん……母さんもいいと思うの?」
「ええ、リッツさんが一緒に来てくれるなら安心できるわ。それに、あの人もリッツさんもこうと決めたら他の人の言うことなんて聞かないのよ」
「……あいつと一緒にするな……」
「ふふっ、そう言うところも変わらないわね」
こうしてリッツさんも一緒にダンジョンに行くことが決まった。
前衛…リッツさん、グレイさん
側面…レントさん、僕
後衛…ハーミット
治療・支援…母
正面戦闘が予想されるダンジョンでは少し戦力不足も否めないが、やるしかない……
「ブレイブ、西門に11時だったな?」
「そうです!みんなそこに集合する様に準備してくれています」
「わかった。アーネスは医療チームから必要な物を分けてもらえ」
「わかったわ」
「ブレイブは俺と来い、装備を整えるぞ」
「装備?このままで行こうかと思ってたんですが……」
そう言って僕は短剣を鞘から抜いてリッツさんに見せる。
「悪くはないが、ダンジョンに向かうとなればもう少しちゃんとした装備を整えろ」
「リッツさんがそう言うなら……」
「武器は予備の剣を1本、ナイフ。防具として胸当て、小手、盾くらいは持って行くべきだ」
「そうね、危険な場所に向かうんだもの。リッツさんの話を聞いて準備してらっしゃい」
「……わかった!」
こうして僕とリッツさんは武器庫に向かい、装備を整えることにした。
「ブレイブは短剣を使っているが、こだわりがあるのか?」
「たまたま最初に狩に行った時に使ったのが短剣だったのでそのまま使ってます」
「だったらここにあるものをいくつか試してみるか」
「分かりました」
「とりあえずブレイブの進捗で扱えるものと言うとこの辺だな」
リッツさんはそう言って大小様々な武器を机の上に広げる。
形の違う短剣や剣、グレイさんの使っていたような片刄の剣や小さな斧、そして棒
「この変な形の短剣は……」
「ククリナイフと言う。枝を薙ぎ払ったり、薪を作ったりもしやすい形状だから、狩猟するのに持っていて損はないぞ。ただ、形状が少し特殊だから今までの短剣とバランスが変わるから注意が必要だな」
「そうですね……狩猟はこの先もしていきますし、予備武器として持っときます。斧はちょっと扱えなさそうです……」
「そうか、こっちの脇差はどうだ?」
「グレイさんの使ってる武器の短いやつですね……確かに良いですが、ほかの剣より薄いですけど強度とかは大丈夫なんでしょうか?」
「脇差はそもそもが武器同士を叩きつけ合うような使い方をしないからな……強度はそれほど高くない。そのかわり、取り回しもしやすいし、切れ味もいいから切りつければ他の剣よりも大きな傷をつける事ができる」
「うーん……魔物と戦うとなるとちょっと心配かもですね」
「確かにゴブリンやコボルトのような皮や肉のあるの奴らだけじゃないからな」
「あとは棒……ですか……」
「腕力が重要にはなるが、切れ味を気にする事なく振り回せると言う意味では有用だぞ」
「そうですか……僕は腕力的に自信もないですから、メインは普通の剣にしておきます」
とりあえず僕の武器はメインとして剣、予備武器にククリナイフと使っていた短剣という形で決まった。
「次は防具だな……とは言ってもここにあるのはほとんどが大人用だからな。ブレイブの使えるものはほぼ決まっている」
「そうなんですね」
「えっと、このあたりに……あった……ほれ、つけてみろ」
「わかりました」
リッツさんからは少し古いような雰囲気ではあるものの、高級感を感じるデザインの防具一式を渡される
さっそく付けていくと思いの外サイズはピッタリだった。
「ピッタリだと思います」
「そうか、それは俺が子供の時に使っていたやつだからな……かなり古いものですまんが、いい防具ではあるぞ」
「そうだったんですね……そんな思い出の品を借りちゃってよかったんですか?」
「防具というのはコレクションじゃない。使われて初めて意味を持つもんだ。そいつも倉庫で埃をかぶってるよりずっと嬉しいだろうさ」
「……ありがとうございます!」
「かまわん、準備もできたしいくぞ」
「はい!」
僕が防具の着用に手こずっていると、すでに着替え終わったリッツさんがいた。
リッツさんの装備は兵士さんとほとんど同じだが、使われている素材が違うのか重厚感のある雰囲気を感じる。
盾も一回り大きく、外周部はかなり尖れているのか縁をなぞると指が切れてしまいそうな感じだ。
「それがリッツさんの装備なんですか?」
「いつもはもう少し身軽だぞ。あくまで今回は盾役だからな、防御力をメインにした装備で固めている」
「よろしくお願いしますねリッツさん」
「ああ、任せろ!」
そう言って2人ならんで大広間へと移動する。
「あらカッコ良くなったじゃないブレイブ!」
「母さんそんな遊びに行く前みたいな感じで言わないでよ」
「大事なことよ、ハーミットちゃんもいるんでしょ?」
「ほう、ブレイブ……そうなのか?」
「リッツさんまで……まだそんなんじゃないって言ってるじゃんか」
「「まだ……ね?(か)」」
「もう!だから違うって!僕トイレ行ってくる!」
装備を整えた僕を見て母とリッツさんから揶揄われてしまい、恥ずかしくなった僕はトイレに逃げ込むことにした。
2人とも慣れない装備をつけて、これからダンジョンに行くんだと気負っていた僕を気遣ってくれていたのかもしれない。
「ふふっ……少しは気が楽になったかしら?」
「なったと思うぞ、さすがアーネスだな……」
「あの子の母親ですから、緊張してるかどうかくらい分かりますよ……」
「さて、じゃあブレイブが戻って来たら行くか、そろそろいい時間だ」
「そうね」




