第24話 選択肢
「この街で臨時で指揮をとっているリッツだ」
「ウェスタンからきたレントだ。世話になる」
「フローリアよ、よろしくお願いするわ」
「この街に来たからには全員責任持って守らせてもらうつもりだ」
リッツさん達は手短に挨拶を済ませる。
「ウェスタンの状況について知りたい」
「ウェスタンか……正直どうにもならないと思う。動ける大人達ほぼ全員大きな街に行っちまった」
「そうね……もう街に残っているのは街を離れられない老人や身寄りのない子どもくらいだと思うわ……」
「戦えないなら助けに行ってあげないと!」
「ブレイブ……話はそう簡単じゃ無い」
「なんで!」
「何人いるかわからないが、その人達を連れてきてどうするんだ!こっちには水も食糧にも限りがある。街の防衛や狩猟をできる人員ならともかく……悔しいが、ただ守られるだけの人達を受け入れられるだけの力は今のこの街にはないんだ」
「そんな……」
ウェスタンの状況は思ったよりもよくなかった。それに、この街の状況も芳しくない。
狩猟で賄える分では全員分の食料は足りず、水問題も水脈の位置は確認できたが、組み上げる目処が立っていない。
「ブレイブ、俺たちはなんでもできるわけじゃない。世界中の人を助けられるなら俺だってそうしたいさ。
しかし……優先順位を履き違えてはいけない。周りの人を助けようと無理をして、守るべき人を守れないのは本意じゃないだろう」
「そうですけど……それでも……僕は……」
「ブレイブの心意気は嬉しいが、今ウェスタンに残ってるやつは自分の意思で残ったものがほとんどなんだ」
「ええ、私たちもこちらに向かう時にたくさんの人に聞いてまわりました。子供達も決断をした子は連れてきています……これ以上は難しいかも知れないですわ」
「2人まで……」
僕はこの残酷な決断を認められず、拳を握りしめる。
悔しい……せっかく僕は戦えるようになったのに……
戦えるだけじゃみんなを守れないのか……いや、そうじゃない!諦めちゃダメだ!さっき言ってたじゃないか、身寄りの無い子供も残されているって。
「僕は!それでも!身寄りがなくて、動けなくて、仕方なく残っている人がいるなら助けたいです!」
「そうは言ってもだな……ブレイブ、どうやって助けるつもりなんだ……」
「魔物がいるからですか?」
「ああ……魔物が出てきているということは、新たなダンジョンが出現したんだ。俺たちはそこから出てくる魔物の対応にも当たらないといけないぞ」
「ウェスタンに残されている人を見捨ててもですか?」
「残念だが……この街の人達の命とは秤にかけることはできん」
リッツさんの言うこともわかる。そして、僕よりも多くのことを知って、決断しているリッツさんが正しいのだろう。
でもここで、ウェスタンの人達を見捨てることを選択してしまえば、この先状況が悪くなった時に今度はまた別の人達を見捨てるという選択肢が頭に出てきてしまうと思う。
それでは胸を張って、『みんなを守る』と言って、前を向いて歩いていけない。
だから僕は諦めたく無いんだ!
「だったら……だったら僕がダンジョンに行って、魔物をやっつける!」
「ブレイブ……それはいくらなんでも無理だ!」
「無理じゃ無い!僕はウェスタンの人を見捨てたおかげでこの街が守れたなんて、そんなの……母さんにも!父さんにも言いたく無い!」
「ブレイブ……」
「ふっ、若いな……だが嫌いじゃねぇ」
「あらあら……男の子ねぇ」
僕はウェスタンを見捨てる原因が魔物なら魔物と、ダンジョンと戦うと決めた。
リッツさんは最後まで危険だと反対したが、レントさんは認めてくれた。フローリアさんは僕のことを優しく温かい目で見つめてくれている。
「はぁ……どのみち、どこかでダンジョンには行かなきゃならんが……」
「リッツさん!!」
「あぁ、くそ!……わかった!俺の負けだ!」
「だったら!!」
「行ってこいブレイブ!全く、変なところだけあいつに似てきやがって……」
「ありがとうございます!」
リッツさんは渋々といった形ではあるが、折れずにお願いする僕の姿を父と重ねたのか、僕がダンジョンに向かうことを許してくれた。
「ウェスタンのために戦ってくれるってんだ、俺も付き合うぜ」
「レントさん!ありがとうございます!」
「ふふっ、グレイ!そこで聞いていたんでしょ!一緒に行ってあげなさい!!」
「…………あぁ、わかった……」
「グレイさん!」
レントさんとグレイさんが一緒にダンジョンに来てくれることになった。
2人ともとても強いし、とても心強い。
罠の様子の確認や採取の方はガーディさん達に任せて僕たちはダンジョンに向かう準備を整えることにした。




