第22話 信じる気持ち
僕たちが、背後から急襲したこともあって、動揺したまものは力を出しきれず、順調に数を減らしている。
あと5体になった魔物達は、僕たちに囲まれ、絶体絶命といった状況だ。
「おら!!」
『ギャァ!』
『グゲ!!』
ーーーシュッーーーボトリーーー
ガーディさんがコボルトに向かって斧を振うと、避けようとして、隣のゴブリンにぶつかる。
お互いがお互いの動きの邪魔になり、ますます動きが単調なものになっていくと、グレイさんが一気に3体の首を切り落とす。
「す、すごい……」
「ヒュー……兄貴とは違う方向でやばいっすねあの人」
隣にいたリンスさんが呟く。
そうこうしているうちに、グレイさんはあっという間に残りの2体の魔物を切り裂いた。
「ピーターさん!ご無事でしたか!?」
「ブレイブくん!助けに来てくれたんですね!ありがとう!!」
「ずっと戻ってこないから心配しましたよ!!」
「それは申し訳ない事をしました……実はですね……」
ピーターさん達は、僕たちと分かれた後、西側の森にある果実の群生地の元に崖を超えて向かった。果実の確認ができたため、少し収穫してから一度戻ろうとすると、サーベルタイガーが群をなしているのを発見。少人数では突破できず、足止めを食らっていたそうだ。
諦めて野営をして、日が登ってから突破しようと様子を見にくると、街道沿いを街に向かって進んでいる集団を発見して合流。
サーベルタイガーと事を構えようと崖まで戻ると、戦闘の痕跡があって姿が見えなかった。群れのいない間に急いで崖を超えようと進んできたら魔物の集団と鉢合わせしてしまったらしい。
「こちらがその時に合流したレントさん達です」
「さっきは助かったぜ!レントだ!よろしくな!」
「おう!ガーディだ!なんにせよ無事でよかったぜ」
ピーターさん達やレントさん達に大きな怪我がない事を確認すると、魔物達から使えそうな物を回収して隊列を整える。
「動けるかお前ら!」
「「うっす!こっちは問題ねえっす」」
「こちらも問題ありません」
「大丈夫だ!すまねえな護衛までしてもらって」
「向かう先は同じですから、一緒に行きましょう」
「前は俺らで受け持つ!ピーター達は側面、戦えないやつや女子供は真ん中だ!レント達は後ろからついてこい!いくぞ!!」
「「おーー!!」」
ガーディさんの号令に合わせて全員で来た道を戻っていく。レントさん達の集団には女の人や僕よりも少し小さな子供もいたので、助けが間に合って本当によかったと思う。
「君はブレイブくんって言うんだっけ?」
「そうですけど……お姉さんは?」
「私はフローリア!よろしくね!」
「あなたがピーターさんとグレイさんの言っていた……」
とても明るくて、優しい雰囲気をした栗毛のお姉さんはフローリアさんと言い、グレイさんの恋人だった。
大地が空を飛んでいく異常事態を目撃したウェスタンの人々は、大いに揺れ、そのまま街に残る人と、街を出てより大きな街に合流する人で分かれたらしい。
最初は街に残ろうかと思ったが、大きな街に向かった人があまりにも多くこのままでは生活できないと思った時に、レントさん達が僕たちの街に向かうと聞いて、一緒についていく事を決めたそうだ。
「結構思い切ったことを考えましたね……」
「うーん……そうでもないのよ?レントさん達はそれなりに名前の知れた人だったし、こっちにはグレイとピーターさんが行商に向かっていたんだもの。きっとどこかで会えると思っていたわ」
「……すまない」
「もう!こうして会えたんだもの!気にしてないわ!」
僕たちの話が聞こえたのか、すぐにフローリアさんを迎えにいけなかった事を気にしてグレイさんが謝る。
フローリアさんは気にしてないようで、グレイさんの頬に手を当てると優しく撫でる。
「……お前はこうして向かってきていたのに……俺はピーター達にも探しに行くなと……諦めると……すまない……」
「グレイ……」
「フローリアさん、グレイさんはきっと……」
「ブレイブくん、わかっているわ……グレイは優しいから、自分の都合でピーター達を危険な目に巻き込めないって、だから遠ざけるためにわざと『諦めた』って、そう言っていたのよね?」
「……あぁ」
「もう!本当に不器用なんだからあなたは……言葉も足りなすぎなのよ!」
結局の所、グレイさんがフローリアさんのことを諦めきれないのをわかっていたピーターさんが、どうしても日持ちのする西の果実を確認しておきたいと言ってグレイさんを巻き込んでこちら側に連れてきたという話も聞くことができた。
「グレイは本当に不器用ですからねぇ……」
「ピーター、グレイを連れてきて来てくれてありがとう」
「いえいえ、フローリアのことを気にしすぎてソワソワしてましたからね、このままではいつか1人で飛び出してしまいそうだったので」
「ピーター……余計なことを言うな」
「こら、グレイ!ピーターさんはあなたのことを心配して一緒に来てくれたのよ!」
「……あぁ、わかっている」
こうして無事に出会えて、合流することができて本当によかった。家族が他の街に残っていると聞いたら……逆に自分だけが残っているとしたら……その時、僕はどうしただろうか。
ピーターさん達のように探しに行けたのだろうか
フローリアさん達のように家族の元に向かえたのだろうか
きっと……昔の僕は街に残ったままで、なにもできなかっただろう。自分は戦えないから、父が迎えに来てくれる。父はきっと別の街にいても戻ってきてくれる。そんな期待をしたまま家でじっとしていたのではないだろうか。
そう思うと戦えないけど歩き出したフローリアさんはすごい決断をしたのだと思う。
家族や大切な人のことを信じて歩き出す
お互いのその気持ちが通じ合ったからこうして出会えたのだろう。仲間の本当の気持ちをわかって、何も言わずに行動してくれる。そんな素敵な人達がまだまだたくさんいるのだから、きっと未来は明るい。
そう信じて僕はみんなと歩幅を合わせて街へと足を進める。




