第21話 合流
だんだんと空が白んできた。
ハーミットと話をしてからはしっかりと周辺を警戒し、些細な音にも敏感に反応するように意識をしていたため、周りが明るくなってきたことで、視覚によっても警戒できるため少しだけ安心できる。
幸いにも夜のうちは魔物は襲撃して来なかった。
あのゴブリンの笛が周囲のゴブリンに聞こえていなかったのか、もともと近くにはいなかったのか、理由はわからないが、ひとまずは夜を超えることができたことを喜ぶ。
「ブレイブ!お疲れ」
「おはようございますガーディさん!」
ベットから起き上がり、一人一人に言葉をかけて労うガーディさん。こういうところがみんなから好かれているところでもあるんだろうな。
「とりあえず、飯もねぇからな、確認がてら昨日の荷物を捨てたところは確認しにいくぞ!」
「うっす!サーベルタイガーあんまり美味くねぇって聞くんであれっすけど……」
「んだと、リンス!文句あんならお前だけ飯抜きだ!」
「い、いや!新しく狩りをするよりはましっすよねって言いたかったんすよ!まじっす!!」
「「あはは!」」
リンスさんはいつもみんなを明るくしてくれる。
さあ、僕も準備をしてみんなと一緒に荷物を取りに行こう。
しばらく周囲を警戒しながら進み、昨日荷物を放棄した所に辿り着くと、目の前にはほとんどを食い尽くされたサーベルタイガーの肉と散らかされた牙や爪、毛皮という光景が広がっていた。
「こ、これは……」
「うーん……ハイター、リンス、どう思う?」
「これは間違いなく、ゴブリンと……コボルトあたりの仕業っすね……」
「リンスの言うとおりだと思うっす……」
「そうか……なんにしても、肉は捨てて使える分だけは持って、さっさと旦那の所に戻るしかねぇか」
「そうですね……」
魔物がいるのは間違いない。
そう結論づけると、撤退を決意する。ピーターさん達のことは心配だが、このまま魔物が出たと言う情報を街に届けないのはまずい。
昨日異常事態を知らせる明かりはつけたが、街の方にはどんな状況なのかを知らせることはできていないからだ。
「さっさと荷物をまとめろ!飯は一旦諦めてさっさと街に戻るぞ!!」
「「うっす!!」」
手早く毛皮に牙や爪を包んで縛り、荷物をまとめていく。
痕跡の様子から魔物達がここを離れてからそんなに時間は経っていない。どれくらいの数がいるのかは不明だが、間違いなく近くに魔物がいる。
あたりが明るくなって視認性が上がっているから、いきなり遭遇することはなさそうだが、逆に見つかりやすくもなっている。
「兄貴!こっちはまとめました!」
「ブレイブ!遅れてんぞ!ハイター!手伝ってやれ!」
「うっす!」
「すいません!上手く結べなくて……」
「気持ちが焦ると手元が狂うっす、まだ見つかったわけじゃねぇんすから、落ち着いて、確実に結べば大丈夫っすよ!」
ハイターさんは落ち着くように声をかけてくれ、僕の荷物を手早くまとめて、結ぶのを手伝ってくれる。
「すいません!お待たせしました!」
「よっしゃ、一旦撤退すんぞ!ケツはハイターが警戒しろ!」
「うっす!」
隊列を整えて出発しようと陣形を整える。
ーー後ろ髪を引かれる思いで歩き出すーー
ーーキィンーー
……いぞ!
「ハイターさん!」
「ブレイブも聞こえたっすか!?」
「ガーディさん!!後ろの方で音が聞こえました!ピーターさん達かも!!」
「んだと!?ほんとか!?」
「兄貴!俺も聞こえたっす!」
「ちっ!……ここで行かなきゃなんのために行ったんだって話だよな……」
ガーディさんは一瞬悩むそぶりを見せてから、決断したようにあたりを見渡す。
「お前ら!助けにいくぞ!ドッチとカーズ、ハーミット!お前らだけは街に戻れ!」
「くっ、なんでですか!兄貴!」
「お前みたいな怪我人連れてってもしょうがねぇだろうが!物資もって、索敵しながら街まで帰って状況を伝えろ!」
「ドッチ!兄貴の言うとおりだ!」
「報告は任せたっすよ!」
「わ、私も残ります……」
「ダメだよハーミット、魔力ももうほとんどないんだし、先に戻ってて」
「ブレイブくん……」
「必ず帰るから、街で待ってて!」
「……うん……でも、約束して、無茶はしないって!」
「わかった。約束する……」
ハーミットと指切りをする。
ドッチさんとカーズさんに荷物を預け、陣形を改めて整える。
「いつもの前がいねぇからな、リンス、俺と前だ!ブレイブは中央、ハイターは後ろに下がれ!」
「「りょかいっす!」」
「わかりました!」
「いくぞお前ら!!」
「「おう!!」」
音が聞こえた方へ警戒を怠らず、それでも可能な限り急ぎながら向かっていく。
ーーカン!ーー
『ギャァ』『ゴブ!ゴブ!』
「抜かれてはいけません!少しだけ耐えてください!」
遠くでピーターさんの声が聞こえる。
やっぱり無事だったんだ!急いで向かわないと……
昨夜サーベルタイガーと出会った崖の手前辺りまで来ると、戦闘をしている集団が目に入ってくる。
ピーターさん達は出発した時以上の人数になっていた。
それでも対峙しているゴブリンと犬のような顔をした魔物の方が数が少しだけ多い。
「コボルトまでいるっすね」
「ああ、だがこっちには気づいてねぇ、チャンスだな」
「一気に行きますか?」
「だな、挟み込んで逃げ道を塞いで全滅させるぞ」
「ゴブリンの笛はどうしましょうか……」
「いや、あのタイミングで吹いていないってことは聞こえる範囲のやつは全員集まってるんだろう。問題ない」
様子を伺いながら、作戦を立てていく。
「それじゃ、救出といくぜ!!突撃!!」
「「おおーー!!」」
数で劣る僕たちは大きな声を出しながら、魔物達の背後から急襲する。
『ギャァ?』『ゴブ!!』
魔物達は僕たちに気づくと、動揺して対峙しているピーターさん達に隙を見せる。
「ふっ!!」
ーースパン!!ーー
グレイさんがその隙を見逃さずゴブリンの首を切り落とす。さあ!反撃だ!!
「はぁ!!!」
僕は1番端にいた少し小柄のゴブリンの元へ、短剣を突き刺すように前に構えて走って突っ込む。
ゴブリンは目の前にいる人よりも走って向かってくる僕のことを脅威と感じたのか、持っている棍棒を構えて短剣を防ごうとする。
ーーブンッ!ーー
『ギャァ』
「そこだ!」
ーーザクッーー
ゴブリンが振り返ったのと同時に前にいた人が棒を振り下ろし、ゴブリンの頭部を殴る。
怯んだ隙を見て、首筋に短剣を突き立てる。
「坊主!助かったぜ!」
「ブレイブです!怪我はないですか!?」
「とりあえず大丈夫だ」
「よかったです!動けそうなら他の魔物の所に行きましょう!」
「あ、ああ!わかった!!」
ゴブリンにトドメを刺すと、対峙していた男性と一緒に次の魔物に向かって走り出す。
とにかく早く倒し切らないと……




