第20話 寝ずの番とは?
「んぅ……ブレイブくん……起きてください……」
「んん……お、おはよう、ハーミット……」
交代の時間が近くなり、先に目を覚ましたハーミットに起こしてもらう。
周囲はまだまだ暗く、日が昇るまでは時間がかかりそうだ。
「おう!起きたか!」
「おはようございますガーディさん!」
「お、おはようございます……」
ガーディさんはずっと起きていたのにまだまだ元気みたいだ。魔物とあれだけ戦って、サーベルタイガーに関しては2匹も持って移動していたのにどこにそんな体力があるのだろうか……
不思議なものを見る目をしていると、ガーディさんから野営についての注意事項を説明される。
「さっきはちゃんと説明できなかったからな、改めて説明するぞ、野営の時には必ず『寝ずの番』を立てること。そして、寝るやつはさっさと寝て、1秒でも長く体を休めることが大切だ。
寝ずの番は周辺の音をよく聞いておくんだ。夜は極端に視界が狭まるからな。バリケードに音が出るものを設置したり、少し遠くに篝火をいくつも立てて視界を確保する手もあるが、今回みたいな魔物が近くに来ている場合には、火をたくさんつける方は、場所がバレるからあまりおすすめできねぇな。状況によって使い分けろ。
そして、敵襲があった場合には、大声を出して仲間を起こせ、最初は体勢を立て直すのにどうしても時間がかかっちまうから、寝ずの番は仲間の準備ができるまでは耐えるしかねぇな……と、まぁ、簡単にはこんなもんだ」
「分かりました……」
「じゃあ俺も少し休む。リンスとハイターも起きてきてるから、あいつらにある程度頼っていい。気楽にやってくれ」
「おやすみなさい」
「お、おやすみなさい……」
ガーディさんは僕たちに伝えることだけ伝えるとそそくさとベットに横になる
一瞬で眠りにつけるところを見ると、ガーディさんは野営にもかなり慣れているみたいだ。
「ブレイブとハーミットはまずは起きてられるように頑張ることっす!」
「はい!」
「が、頑張ります……」
僕たちが寝起きでぼーっとしていると、リンスさんが少し揶揄いながらいってくる。
ハイターさんもリンスさんも寝起きなのにシャキッと動けていてすごいなと感心する。
「2人は野営とか慣れてるんですか?」
「そうっすね……兄貴とはよく腕試しだー!なんていって森に入ったりしてたっすから、遠征には慣れてるっすね」
「でもこんな魔物が近くにいるってのは初めてっすよ」
「そ、そうですよね……」
魔物……その言葉を改めて聞くとこの暗闇がすごく不気味なように感じる。
僕の緊張した雰囲気が伝わってしまったのか、なんとなく落ち着かない、張り詰めた雰囲気になってしまう。
「い、いや〜それにしてもサーベルタイガーの時のブレイブはすごかったっすね」
「あの時は僕も夢中だったと言いますか……」
「でもブレイブくんほんとにすごかったです!」
「なんすかそれ?」
「ハイターは知らないっすもんね、さっき崖を抜けて向こう側に行ったら、サーベルタイガー10匹に囲まれたんすよ」
「やべっすね、死にますね……」
「いや、ほんとにマジやばかったんすよ!でも、ブレイブがサーベルタイガーをこう……ザクッ!!って感じで1人で4匹くらい倒してくれたんすよ!あれがなかったら全滅してたっすよほんと」
「マジっすか!?やばいっすね!!」
「お前らうるせーぞ!!ちゃんと見張ってろ!」
「「すんません!!」」
リンスさんが、みんなの緊張を和らげようと、サーベルタイガーと戦ってた僕の様子を身振り手振りでハイターさんに伝えていると、思ったよりも声が出ていたのか、寝ていたガーディさんに怒られてしまう。
流石にもう怒られたくないのか、急いで2人とも持ち場に戻り、周囲の警戒をしにいく。僕たちはリンスさんやハイターさんより少し後ろで並んで待機する。
「それにしても……あの力はなんだったんだろう……」
「私もブレイブくんが死んじゃったと思って……最初はちゃんと見れてなかったけど……最後の方に戦ってた感じだと、魔力由来の力みたいでした」
「ごめんね心配かけて……それにしても魔力かぁ……ハーミットは魔力の流れとかなんとなくわかるんだもんね」
「うん、自分で使ってる分にはどんなふうに魔力が体を巡ってるとかもわかるんですけど……流石に人の体の中の流れはわからなくて……」
「魔力の流れが意識できるようになったら同じことができるようになるのかな?」
「可能性はあります……けど、今回どのくらいの魔力を使ったのかわからないですから、もしかしたら同じことを意識しても魔力が足りなくて発動しないこともあると思います……」
あの力を自在に使えるようになればもっと戦える。そう思ったけど、まずは自分の持ってる魔力量や発動の仕組みについて理解をしないと再現するのは難しそうだ。
「ちなみに、ブレイブくんはあの時どんなふうに感じていたんですか?」
「みんなを守るんだって思って、集中していたら……なんかこう、体の中から力が、グワッ!って湧き上がってくるみたいな?」
「う……うん……そっか……特に呪文があったわけじゃないんですね……」
「うん、僕詠唱とかハーミットが使ってたやつ以外知らないし……」
「そうなると、精神状態とか……その時の状況とかがトリガーになる魔法なのかもしれないですね……」
「へー……そんな魔法もあるんだね」
「私もあまり聞いたことないですけど……でも、あんまり無茶なことしないでくださいね」
「うん、僕も死にたいわけじゃないからね、無理はしないよ」
「ほんとですか?」
ジトーっとした目でハーミットは僕のことを見つめてくる。今回1人で勝てない相手に立ち向かって行ったのは確かに無茶だったかも知れない……けど、みんなが傷ついているのを見過ごすこともできなかったからな……
きっと同じ状況になったら飛び出して行ってしまうと思う。それをわかってハーミットは『止めて』ではなく、『無茶はしないように』と言ってくれているのだろう。
「この先何があっても、ハーミットの所にちゃんと帰るよ」
「……/// ブレイブくん、それ、ほんとにわかって言ってるんですか///」
「え?だってちゃんとハーミットに魔法のこと教えてもらわないといけないし」
「……ばか!……もう知らない!!」
ハーミットは顔を赤くして怒って、端の後ろ側の様子を見に行ってしまった。
「なんか怒らせるようなこと言ったかな……??」




