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第19話 遭遇

ハイターさん達の元になるべく急いで戻っていく。

先ほど崖を越える前までは凶暴な獣は出てこなかったとは言え、夜は何が急に出てくるかわからない。

 サーベルタイガーほどの獣は出てこないかもしれないが、みんなサーベルタイガーを背負って動きが鈍いし、ドッチさんのように傷を負っている人もいる。

 比較的倒しやすいボアと不意に遭遇すれば、突進されて大怪我を負う可能性もある。


「もう少しだ、気合い入れろ!」

「う、うす……」


 みんなも疲労困憊と言った雰囲気で動きが鈍い。

 あと30分ほどでハイターさん達のいる橋の元に辿り着けそうだ。あと少し、あと少しだ……


ーーガサガサ!ーー

10mほど先の茂みが不自然に動く。

 

「警戒ー!」

「お前ら、荷物下ろして警戒しろ!!」


 あとちょっとなのに!

 なんでこんな時に限って……

 みんな同じ気持ちを抱きながら、重たい体に鞭を打って武器を構える。


『ゴブ!?』


「ゴブリンだ!!!」

「くっそ!なんでこんな時に!!」


 よりによって獣ではなく、魔物……

 人型で知能があり、武器も扱える。人間と違い力をセーブしないため、僕と同じくらいの体格でもガーディさんレベルの力を振るってくる化け物だ。

 ゴブリンが首から下げてる笛を吹けば、周囲にいるゴブリン達が押し寄せてくるのも厄介で、単体であれば、戦い慣れているものであれば負けないと言われているが、集団になればこちらも同数以上の人数で当たらなければ勝てない相手だ。


 ーースッーーー


こちらに気づき、数の差を理解したのか、首に下げている笛に手をかける。


「あれを絶対吹かせるんじゃねぇ!!止めろーーー!!!」


 ガーディさんが、みんなに指示をだす。こんな満身創痍の状態で、集団のゴブリンと戦うなんて……無理だ!

 僕は少しでも手元が狂ってくれればと願いながら短剣を投げつける。

 しかし、10mも離れたところに正確に当てるなんて技術はない。


 ーーニヤッーー

 ゴブリンはこちらを馬鹿にするような、いやらしい笑みを浮かべ、笛を口に当てる


「くそ!!」

『ファイヤーアロー!!!』

 ゴブリンが息を吸い込む直前、ハーミットの魔法の詠唱が間に合う。

 ゴゥ!!と音を立ててゴブリンの元へ炎の矢が突き進む


間に合ってくれ!!

 ゴブリンは魔法に気付いたものの、自分がやられても、先に息を吐き込めば仲間が来ると確信しているように息を吹き込む

 ーーーベヨ……ゴウ!!ーー


 ゴブリンの笛から最初の音が出た瞬間、ハーミットの魔法が着弾する。

 そんなに大きな音は出なかった……けど……吹かれてしまった……


「ガーディさん……これは……」

「俺も流石に話からねぇ……あのレベルの音じゃあ周りに聞こえてるとは思えねぇが……」

「楽観視は危険っす!荷物は諦めて一旦橋まで急いで戻るっす!」

「だな!一旦荷物は放棄する!何もなければ後で拾いに来ればいい!今は急いで撤退だ!!」

「「うす!」」

「はい!」


 残念だが、一旦サーベルタイガーの肉や牙、爪は放棄して橋の方まで駆け抜ける。

 周囲の索敵なんてする間もなく、後ろを振り返らずに駆け抜けていく。

 あと少し……僕たちは隊列を乱しながらもなんとか橋の麓まで戻ってくることができた。

 

「橋のバリケードは無事みたいっすね」

「ハイター!無事か!?全員いるか!?」

「兄貴!むしろこっちのセリフっすよ……大丈夫でした?」

「ヤベェかもしれねぇ、帰りがけにゴブリンがいた」

「マジっすか!?」

「んな冗談言うわけねぇだろうが……とりあえず早いとこ撤退したいんだが……」

「ピーターさん達がこの先に行ってるなら、この橋を落とすのはヤベェっすよね」

「ああ、そう言うわけだ……できればここは死守してぇな……」

「リッツさん達に応援をお願いするのはどうでしょうか」

「こっちの方にゴブリンがいたってことは南側にも出てるかもしれねぇ……こっちに応援を送った結果、街が落とされましたじゃ話になんねぇ……」

「とりあえず暗いうちに『異常事態発生』と『発見ならず』の合図を送っておきやしょう」


 ハイターさんは手早く火を2箇所に起こし、それぞれに何かの粉末を振りかけると炎の色が変わる。


「これでこの光が見えていれば応援を送るなり、街の防御を固めるなりしてくれるっすね」

「だな、今日はここでバリケードを少し強化した上で、ここで野営する!」

「マジっすか兄貴、魔物が来るかもしれねぇんすよ!?」

「むしろここで橋を放置して帰る方がやべぇだろ、ピーターたちがいたら助ける。魔物が来たら橋をなんとかして落としてから帰る。それが1番だ」

「……わかりやした」

「すまねぇな……」

「いや、兄貴が戦うってんなら俺らもやってやりますよ!」


 ガーディさん達は最後まで戦うことを選んだ。

 僕とハーミットも野営は初めてだが、ガーディさん達と一緒なら安心だ。野営の時は前半後半で睡眠を交代するのが基本ということで、僕とハーミットは先に休ませてもらうことになった。


「ハーミット、疲れたでしょ……大丈夫?」

「ブレイブくん……身体はまだ大丈夫。でも……魔力の方が心配かも……あと魔法は打てて1発分って感じかも」

「そっか……寝たら少しは回復できる?」

「少しだけなら……」

「じゃあ早く寝よう。みんなが警戒してくれてるし、僕も今日は疲れたからね……」

「あの……ブレイブくん……」

「どうかした?」

「ちょっと不安で……よかったら手を繋いでもいい?」

「あ……う、うん、いいよ……///」

「あ、ありがと……ブレイブくん、おやすみ……///」

「お、おやすみハーミット……///」


 ちゃんとした布団も毛布もない。少しだけ柔らかい草を積み重ね、上着を下に敷くことで作った簡易的なベットでハーミットと隣りで仮眠をする。

 今日はいろんなことがあった。初めての狩りに、罠の作成。死ぬんじゃないかと思うような激しい戦闘。

 ハーミットも同じだろう。それを思えば、1人で眠るのはとても怖い。この先またゴブリンが出るかもしれない。今、こうして誰かと一緒に寝られるなら手を繋ぎたくもなるだろう。

 少し恥ずかしい気持ちを抱きながら、柔らかいハーミットの手をしっかりと握り、眠りについた。

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