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第1話 激動

人々がパニックに陥る中、震えて動けない僕の肩にそっと大きな手が置かれる。


「お、おとうさん…」

「ブレイブ、落ち着いてお父さんの言うことをよく聞くんだ」

「う、うん…」


正面に回り込み、震える僕の肩を両手で掴み、視線を合わせながらいつに無く真剣な顔で父は話を続ける


「魔物がやってきて、このままでは街にいる人はたくさん怪我をすることになる。お父さんはみんなが怪我をしないように街のはずれに行ってくるから、お母さんと一緒にリッツの所に向かうんだ。お母さんのことを頼むぞ!」

「わ、わかったけど…リッツさんももしかしたら…」

「なに、リッツなら絶対人を見捨てたりしないさ、母さんを頼むぞ」


そう言って父は鐘の鳴り響く街のはずれに走っていった。


「僕も母さんのところに戻らないと…」

パニックになった人々の隙間を小さな体でなんとか通り抜けながらやっとの思いで自宅へ帰ってきた


「た、ただいま…」

「ブレイブ!無事だったのね!!」

「う、うん、お母さん、お父さんがリッツさんのところに一緒に向えって言ってた。お父さんは街のはずれにいくって言ってた」

「そう…あの人ならそうするわよね……わかったわ、帰ってきてすぐで申し訳ないのだけど、ブレイブはまだ歩けそう?」


街のパニックの様子はすでに伝わってきていたのか、母は荷物をまとめていたようだ。


「頑張る」

「リッツさんのところまでは少し距離があるけど一緒に頑張りましょう」

「うん」

「ブレイブはこれを背負ってちょうだい」

「わかった」


そういって母は僕の背中にリュックを背負わせ、母はリュックと鞄を持ってリッツさんのお屋敷に向かっていった。


「だめだ!魔物がくるぞー!!」

しばらく街を歩き、リッツさんの自宅まで残り半分といったところで父が向かった方向から叫び声が聞こえた。


「お母さん!今の声お父さんが向かった方だよ!」

「あの人なら大丈夫、ちゃんと戻ってくるわ」


父のことが心配になり、たまらず叫ぶ僕を母は震えながら抱きしめる


『母さんのこと頼むぞ』


別れ際の父の言葉を思い出し、母を抱きしめる

「そうだよね、行こうお母さん」

「えぇ」


父の無事を願いながら、再びリッツさんのお屋敷に向かって歩き出す。


リッツさんのお屋敷にたどり着くと正面の入り口は解放されていて、中からは大きな声が聞こえてくる


「報告!西と東の区画の押さえ込みは完了とのこと!」

「よくやった!負傷者は一度下げ、動ける者はそのまま南の増援に迎え!!街の中まで侵入されているから警戒を怠るな!」

「了解!」


慌ただしく飛び出していった武装をした人たちを見送ってから中に入っていく


「リッツさん!」

「おぉ、アーネスさんご無事でよかったです。ブレイブも怪我はしてないか?」

「大丈夫です!」


僕達のことを心配してくれ、武装をした人々に指示を出していた逞しいおじさんがリッツさんである。


「アーネスさん、あいつは?」

「あの人は先に南区のほうに向かったとブレイブから…」

「ろくな装備も持たずに行ったのかあいつは!」

「お父さんは大丈夫でしょうか…」

「あいつは一流の戦士だから大丈夫だろう…とは言っても相手は魔物だからな…救援が間に合うといいのだが…どこもかしこも人手不足でな、あいつだけ特別扱いもできん…」

「私に手伝えることはありますか?」

「アーネスさん達は屋敷の二階で休んでいてもかまいませんが…」

「いえ、あの人も戦っているんです。私も戦います!」

「ありがたいですが、アーネスさんに何かあったとなっちゃあいつに顔向できんからな…そろそろ怪我人も運び込まれてくるから手当をおねがいできますか?」

「わかりました!ブレイブも手伝ってね!」

「わかった!」


その後すぐに大量の怪我人が運び込まれてきた。

手足を失った者や全身が焼け爛れている者、見るも無惨な状況に思わず目を背けるが、父の無事を信じながら必死に手当をする母を見て奮い立ち、お湯の準備やシーツの交換などを手伝う。


半日ほど経った頃日が暮れ始め、空に浮かぶ島に光も遮られ、真っ暗になってきた頃、魔物の襲撃が止んだとリッツさんから皆に伝えられた。

怪我をした人も含め、屋敷が壊れるのではないかと言うほどの歓声を上げる中、リッツさんは母の元へ向かい、「あいつが行方不明になった」と伝えると母は泣き崩れた。


 父は南区の最前線で何体もの魔物を打ち倒し、近隣の住人の避難が終わるまで時間を稼ぐように戦っていたようだ。


しかし、周囲の兵士含め、ろくな装備もない状況では魔物を抑えきれず、仕留め損った魔物が徐々に街に侵入する姿を見ると、近隣の兵士たちに大元を叩いてくると伝え、単身でダンジョンに向かっていったらしい。


父が道中に攻撃したのか、襲撃してくる魔物の中には手傷を負った魔物が混ざるようになり、しばらくするとダンジョンが崩落したようで、魔物が現れなくなったが父の行方が分からなくなってしまったようだ。


母は泣きながらも僕を抱きしめて

「大丈夫、大丈夫」と頭を撫でてくれる


『母さんを頼むぞ』


父の言葉を思い出し、僕は母だけでなく、父が守った街に住むみんなも守ると、そして行方不明になった父を探しにいくと決意した。


「お母さん、僕は大丈夫だよ。これからは僕がお母さんや街のみんなを守るから」

泣いている母をそっと離し、僕から母を抱きしめる。


母が泣き止んだころ、そっと母を離してリッツさんの元へ向かう

「リッツさん、僕に戦い方を教えてください」

「あぁ…あぁ…任せろ!そのかわり、俺もリッツには手伝ってほしいことがある」


ーーこれから始まるのは世界が変革していくなか、人々の生活を支える柱となる「ギルド」と「冒険者」の物語である。ーーー


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