第18話 撤退
「ここだ!!」
『ギャウゥ』
ドッチさんが抑えていてくれたサーベルタイガー2頭はなんとか倒すことができた。
だけど、先ほどまでの全能感というか、湧き出てくる力がなくなって来た。ガーディさんも1頭倒したようで、残りは4頭だが、無事に切り抜けることができるだろうか……
「っ……!!」
ーガキン!ー
隙をついて飛びかかってきた一撃をなんとか剣で受け流しながら距離を取る。
ダメだ、集中しないと!もともと僕の方が弱いんだ、油断なんかしてる場合じゃない!
「ブレイブ!油断すんな!まだ終わってねぇぞ!!」
「あと少し!がんばるっす!」
「はい!!」
ガーディさんとリンスさんが中心になって、1匹は後もう少しと言ったところまで追い詰めている。
「ブレイブくん危ない!!『ファイヤーボール!』」
『グルッ!』
少し頭がぼんやりとして来たが、ハーミットが貴重な魔力を使って魔法を放ち、1匹の隙を作ってくれた。絶対に逃さない!
「ここだ!!このっ!!」
ーーザシューー
首元に剣を突き刺すと、少しだけ暴れるが、すぐにおとなしくなる。
「ありがとう、ハーミット!」
「うん、ブレイブくんも無理しないで……」
「兄貴!今っす!!」
「おらぁ!!」
あっちも1匹仕留めたようだ。残り2匹。
『グルルゥ……ギャウギャウ!!』
『ギャウ!!』
流石に劣勢と見たのか、2匹はこれ以上は戦わず逃げていった。
「はぁ、はぁっ……」
「な、なんとかなったっす……」
「流石にやばかったな……」
周囲を警戒しながら、一息つく。
「それにしてもブレイブ!なんすかあれ!!別人みたいだったっす!」
「ブレイブの活躍がなかったら全滅もあり得たな……」
「ブレイブ!よくやってくれた!」
「あ、あれは……なんと言うか、よくわからないんですけど、みんなを守らないとって思ったら……頭がスッとして、力が湧いてくると言うか、なんでもできるような気がして……」
「そうか……なんにしても助かったぜ!」
「みんなが無事でよかったです!」
ドッチさんの傷も出血はひどいものの、命に関わるほどのひどい怪我ではないらしい。ただ、薬草などを使って手当を早めにして、化膿を防がないと大変だと言うことで、橋で待ってくれているハイターさん達の元に戻ることにした。
「サーベルタイガーはどうするんですか?」
「もちろん持って帰れる分は持って帰るぞ、これも貴重な食糧であり、材料だ」
「材料ですか?」
「こいつらの爪や牙は薬になるって言われてるっす」
「死にそうな目にあった割に肉はあんまり美味しくないらしいけどな!」
肉の味はともかくとして、薬はリッツさんも欲しいって言ってたからな、今日の狩猟でお肉しかとってこれなかった分、思わぬところで手に入った薬の材料ということで一安心ではある。
「なんにせよ、早いところ撤退するぞ!ピーター達には申し訳ないが、これ以上は怪我人も出た以上進めねぇ」
「分かりました……僕が進みたいっていったせいで……ごめんなさい」
「いや、結局みんな行くつもりだったっす!結果誰も死んでないんすから気にしちゃダメっす!」
「リンスさん……」
「それでも気になるなら、ブレイブじゃなくて、最後に行くぞって決めた兄貴が悪いってことで勘弁してやるっす」
「なんだリンス!俺が決めたことに文句でもあるってのか!?」
「ね、ねぇっすよ!?」
「「わはは!!」
なんだかみんなに気を遣わせちゃったな……でも、本当にみんな進もうって言ったことには気にしてないみたいで、帰ってからあれがしたい、これがしたいと楽しそうに話している。
「ブレイブくん!ガーディさんが魔法で水くらいなら出してもいいって言ってくれたから……その……」
「ん?あ、飲んでいいってこと?ありがとう!」
「いや、あの、それもいいんだけど……違くて……血だらけだから……」
「ああ!そうだね……ごめんね?汚くて……」
「そんなことない!!ブレイブくんは私を守ってくれたんだもん!すごく!すごく……かっこよかった……///」
「ハ、ハーミット……///」
ハーミットが返り血で汚れた僕を綺麗にしようとガーディさんに話をしてくれたみたいだ。その気遣いも嬉しいし、あんなに心配をかけてしまったけど、守ることができてよかったと思う。
「お前ら!休んでねぇでさっさといくぞ!!それとブレイブ!血だらけの顔どうにかしろ!そんな姿アーネスさんに見られたら俺が殺されるだろ!」
「兄貴も姉御は怖いんすね……」
「「あはは!!」」
ガーディさんに言われてハッとする。やっぱり母にもたくさん心配をかけてしまってるだろうな……
ピーターさん達のことはもちろん心配だけど、でも帰ってちゃんと伝えたい。僕は戦えたんだって、それに、ハーミットやみんなを守ることもできたんだって!
「今行きます!!ほら、ハーミットも!」
「ま、待って……ブレイブくん!」
僕は返り血を洗い流してもらい、ハーミットの手を取ってガーディさん達の元へ走っていく。




