第16話 西へ
ハーミットが作った橋を渡り、対岸にたどり着き、街が東側に、くるように少し南下しながらピーターさん達の痕跡を探す。
「ん?これは……兄貴!見てくだせぇ!」
「なんだ!なんかあったか!?」
1番南側の列で痕跡を探していたリンスさんの声が聞こえてきたので、みんなでリンスさんの元に集まる。
「焚き木の跡か……」
「温度的にはかなり冷えてますんで、ここ数時間ってよりは、昼頃の出発してすぐって感じっすね」
「お昼に川を無理やり渡って、少し暖をとったってことでしょうか……」
「その可能は高ぇな……」
「つまり、川を渡るために橋をかけたりしていたら18時には行って帰ってこれないくらいの距離を進もうとしたってことですよね?」
「……ちとヤベェかもな……そこまでの距離となると俺たちも進んだことはねぇぞ……」
「どうしやしょうか……」
せっかくピーターさん達の痕跡らしきものを見つけたのに、不用意に動くことができなくなってしまった。
みんなで進むべきか、戻るべきかと議論を重ねていくが、すぐに結論が出ない。
「残る人と進む人、班を分けて捜索しませんか?」
「ブレイブ、気持ちはわかるっすけど、夜は危険っす。今もギリギリなのに人数分けるのはやばいっす」
「いや、俺もそうするしかねぇかと思っていた」
「兄貴……」
「ハーミットの探知魔法は100〜200mくらい探せるんだよね?」
「つ、使えますけど……さっきの橋を作るので結構魔力使っちゃったので……あと5回が限界だと思います……それに、合図を上げるための魔法のことを考えたらあと3回までしか使えないと思います……ごめんなさい」
「ううん、ハーミットは悪くないよ、ありがとう」
「探知魔法ってのは、どこまでわかるんだ?」
「わ、私のレベルだと、獣と人の区別がつく程度しかわかりません……」
「十分だ、獣や魔獣にさえ遭遇しなきゃなんとかなる」
「ま、兄貴がそうするってならいかねぇ訳にも行かねっすね、ハイター!ここは頼むっすよ」
「うす!」
ピーターさんを探しにいくチームには、僕、ハーミット、ガーディさんにリンスさん達を加えた8人。あとは橋まで戻り、簡易的なバリケードを作った上で、橋の高所で野営をすることになった。
「行って来ます!」
「全員無事に戻ってきてくだせぇよ!」
「まかせろ!」
こうして僕たちは西側の奥に広がる丘陵地帯へと足を進めていく。
「リンス、この丘陵地帯の先には何がある?」
「そっすね〜南は深い森に繋がってて、北は険しい山に向かっていく感じっす……西側の先にはウェスタンって街があるらしいっすけど、途中がどうなってるのかまではわからねぇっす」
「街……街か……」
「どうしたブレイブ?」
「いや、ピーターさんとグレイさんがあまり周りに話すなって雰囲気で言っていたんですけど、フローリアさん?って人がいるみたいで、もしかしたらウェスタンにいる人かもなと思って……」
そういえばピーターさんと話している時にそんな話があったことを思い出して、ガーディさん達に伝える。勝手に伝えていいものかとも思ったが、緊急事態に陥っている可能性もある以上、情報は共有しておくべきだろう。
「でも流石にウェスタンなんて日帰りで行けるような距離じゃないっすよ」
「例えばですけど、そのフローリアさんやウェスタンの人たちが街の上昇のタイミングで街を捨てて、野営しながらこっちに向かってて、何かしらのトラブルに巻き込まれてたりしたら……」
「見かけた以上、帰還するより助けに入るってか……日数的にもあり得なくはなさそうだな」
「でも、流石にそこまで先には探しに行けねっすよ」
「そうだな……だが、ピーターたちが何かあったとしてもこっちに何も知らせずに動くとも考えられねぇ。誰か使いには出してるはずだ」
「そうですね、ウェスタンから真っ直ぐ僕たちの街に向かってると考えて、移動しやすそうな道を重点的に探していくのがいいと思います」
楽園が上昇してから丸1日半が経過している。ウェスタンの街がどんな状況か、どのくらいの距離があるのかは分からないが、移動に2日程度かかるのであれば、双方向から向かっているため、中間地点あたりで遭遇していてもおかしくないだろう。
ピーターさんたち全員が無事であることを願いながら、道幅が大きく、多少大人数でも移動できそうな道を探して西に進むことに決めた。




