第13話 初めての狩り
「痕跡がありましたぜ!」
「でかした!!」
前を歩いていたドッチさんから獣の痕跡があったと報告が入って来た。
みんなで足早にその場に向かい、周囲を警戒しながら近くまでいく。
「これは?」
「こっちがボアで、あっちはバンビですぜ」
少し大きめな平たく地面が沈んでいて、2つの爪のあとのようになっているのがボアで、ボアより細長い形で浅めに地面が沈んでるのがバンビか……
爪の形が少し似ている分最初は少し戸惑うな……
「どっちを追うんですか?」
「ボアはブレイブもいるしちと危ねぇかもな」
「ですぜ、痕跡も少し古いですし、おとなしくバンビを追いやしょう」
「それじゃあいくぜ!ついてこい!」
ガーディさんは痕跡が見つかった途端前の人を率いて進んでいく。
「この先だな……」
「音とかで逃げないんですか?」
「ああ、昔はよく逃げられたが、今じゃあ簡単なもんだぜ!」
そういうとガーディさんは石を2つ拾うと1つを奥の茂みに投げ、もう一つは思いっきり振りかぶっている。
ガサガサッ!
奥の茂みの上の方に石が吸い込まれると、バンビはびっくりしたのか、こちらに向かって飛び跳ねる。
「おら!」
ゴウッ!と風を切るように投げられた石はバンビの腹部に命中する
「ギュ!」
バンビは短い悲鳴をあげると逃げようと足に力を入れるが、痛みでうまく動けないみたいだ。
「今だ!やれ!」
「おう!!」
少しだけ目を背けてしまったが、無事にバンビは狩ることができたようだ。
「獲物を狩るところを見るのが初めてならしょうがねぇが、そんなこと言ってたら生きていけねぇぞブレイブ」
「わかってます……」
「それに、罪悪感なんて持って狩ろうとして、手傷を負わせて、やっぱりできませんなんて見逃されてみろ。今この場は生きられても、他の奴に食われちまう。それは俺たちが痛みを余計に与えてるだけ可哀想ってもんだぜ」
「……そうですね……」
僕たちは生きてる。それに、生きていかなければいけない。だから命を狩って、感謝して食べなければいけない。ダンジョンアイテムからの食糧を食べていたからこそ、そんな当たり前のことにも実感が湧かなかったのだ。
「わかったなら切り替えろ」
「はい……」
その後は周囲を警戒しながらバンビの解体作業を教えてもらった。やっぱりお腹を開いたり、血が出てくるのを見るのは少し嫌な気持ちになってしまったが、先ほどよりは前向きな気持ちで受け止めることができている。
「これだけやっても全然足りないですよね……」
「当たり前だろ、でも取らないよりはマシってもんだろ。旦那も俺たちだけで全員分を賄えるなんて思ってねぇはずだぜ」
「最終的にはかなり大型の獣をいくつも狩るか、ダンジョンアイテムにかけてダンジョンを踏破するしかねぇだろうな」
「ダンジョン……」
父が消えてしまったことを思い出し、胸が痛む。
母や街のみんなをまずは守れるようになる。そのために狩に来たんだ。いまはやるべきことに集中しよう。
「よっと……こんなもんすね」
「リンスさん、なにをしてるんですか?」
「これはバンビの内臓を使った罠でさぁ」
「……なるほど、内臓を食べようとすればロープが絡まって吊り上げられるんですね」
「よく分かりやしたね!」
「なんとなく、近くにロープがあればそうなるのかなって……でもどうやって作ってるのかはわからないです」
「それはですねぇ……」
リンスさんはバンビの内臓を餌にした仕掛けの構造を丁寧に解説してくれた。
これは大型の肉食動物用だが、ロープを細くしたり、仕掛けを小さくすることでいろんな種類の動物が狩れるようになるみたいだ。
この辺りではメジャーなタイプの罠だけど、魔物の場合は力でロープを引きちぎったり、餌に興味を持たなかったりであまり効果はないらしい。
「おし!解体も罠の設置も済んだし、次に行くぞ!」
「うす!!」
「はい!」
引き続き森の中を進み、何度か同じような作業をこなし、リンスさんに、罠を教えてもらいながら設置したりしているうちに、背負ったカゴがいっぱいになるくらいに肉は確保することができた。
「今日はこの辺で切り上げるぞ!明日は罠の様子を確認しながら、もう少し奥まで進む!いいな!」
「うす!!」
「わかりました!」
「帰るまで気を抜くんじゃねぇぞ!肉の匂いに寄ってくるやつもいるかもしれねぇ!」
「はい!」
こうして僕たちのチームの今回の狩猟は概ね成功と言っていい結果で終わることができた。リッツさんの屋敷に戻ると、成果を報告し、母やお屋敷の人に加工してもらう。
なるべく日持ちがするようにこの後燻製にしたりするそうだ。いろいろとお手伝いをしているといつのまにか18時になっていた。
しかし、ピーターさんやグレイさんのチームが18時を過ぎても帰って来ていない。
「ガーディさん!ピーターさん達は!?」
「あぁ……ちとまずいかもしれねぇな……」
「どうしましょう……」
「向かったのは西側だが、なんせこれから夜になる。闇雲に出てっても迷うのがオチだ……旦那に相談するしかねぇ」
そう言ってガーディさんと僕は急いでリッツさんの元に向かった。




