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見張り番  作者: 柿原 凛
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落とし穴

 あれからしばらく経ったある日。

 あの日以来、続々と小さな犯罪が起こり、多額の報酬が通帳をにぎわすようになっていた。

『浅井を捕まえてしまった』という罪悪感はもはや昔のもので、今はもう平気になっている。

 ただ、ここ最近はあまり事件が起こらない。

 事件が起こらないのはいいことだ。

 ただ、俺はなぜか満足していなかった。

 犯罪を見つけ、多額の報酬を握りしめるあの快感が忘れないままいた。

 そんな状態でも、あの人からは決まってメールが来る。

『今日も剣辰屋で、眼鏡の高田という男を見張ってください。よろしくお願いします』

 指示されたようにそこに向かい、指示されたように見張る。

 それを閉店まで続けたが、やっぱり何も起こらない。

「今日は何もなしか」

 やれやれという感じで剣辰屋を後にし、なんとなく後を振り返ったその瞬間。高田が裏口の扉を閉めて、店から出てくるのが確認できた。

 そこで俺は思いついた。

“もしかしたら指定時間じゃなくても捕まえたら出来高がもらえるかも”

 俺はこそこそと高田の後をつけることにした。

 高田と同じ電車に乗り、高田と同じ駅で降りた。

 住宅街に着いたころには、もう空は暗闇に包まれていた。

 チカチカしている電灯の死角を利用しながら高田の後をつけてゆく。

 そうして着いて行った先には、小さな本屋だった。

 高田は本屋の息子なのか? いや、手つきがおかしい。

 高田の左手には、週刊誌が握られていた。

 そして右手には、定規の様なもの。

 目当ては……袋とじ……か?

 だとしたら出来高がもらえる。

 どんなに小さな犯罪でも、出来高がもらえるのだ。

 これなら出来高が貰えるはずだ。

 久々の快感を妄想して、電柱の陰から勢いよく飛び出した。


 ……はずだった。

 俺の左手は誰かに掴まれて、その場にこけていた。

 目の前にいるはずの高田の姿は、そこになかった。

「えっ? 誰だ? 誰だよ! 高田は? 高田はどうした? 出来高が……出来高がぁ!」

 俺は無意識で叫んでいた。気が狂ったように、わめいていた。

 そして、左手を掴んだままの誰かに掴みかかった。

「……お前はっ!」

 見た瞬間、ハッとした。

 浅井だった。

「お前、警察に連れていかれて……」

 浅井は黙ったまま、ケータイの画面を見せてきた。

 そこには、信じられないような言葉が並んでいた。

『今日は、剣辰屋で見張りをしている隅田という男を、閉店してからもずっと見張ってください。よろしくお願いします』

 しばらくは、信じられなかった。

「ストーカーも立派な犯罪だ。どんなに小さな犯罪でも見つけたら出来高が貰える。悪いな」

「そんな……」

 遠くから、サイレンの音が聞こえてきた。


 ポケットの中の浅井のケータイに、着信が入った。

『ご協力ありがとうございました』

 

 

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