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Episode2



 ――足立ダンジョンセンター。


 東京は足立区にある、ダンジョンに関する業務を執り行う行政機関である。

 全国に数百あるダンジョンセンターの中でも比較的新しく、一年前にできたばかりだった。


 建物は長方形型で、横に長く二階建ての造りとなっていて、地下には“冒険者”と呼ばれる人々専用の訓練場が広がっている。



 ──冒険者。



 一言でいえば、人ならざる力を持った者たちのことだ。


 かつて人類が夢見ていた、魔法や超能力のような圧倒的な力に目覚めた者たち。


 一度剣を振るえば岩が裂け、一度走れば風となる。


 そんな恐ろしいとさえ言える力を持った存在たちが、この真下にある訓練場でさらなる力を追い求め、修練を積んでいるのだった。


 もちろん、それだけならどうぞご勝手にという感じなのだが……。


 問題なのは、俺もその“冒険者”の中の一人であるということだ。

 そしてさらに俺は、これから訓練場に向かおうとしているわけで――。



 ――はあ、気が重すぎる……。



 覚悟を決めて来たつもりなのだけれど、いざこうして目の前にすると怯んでしまう。


 晴れ晴れとした青空も、いつもなら心が弾むはずなのに、なんとも煩わしく感じてくるから仕方がない。


 それでもなんとか気を取り直して、センターの入口に向かう。


 入口の自動ドアを抜けると、清廉とした広いエントランスの向こうに各種受付窓口が並んでいた。


 頭上には巨大なディスプレイが天井から吊るされ、日々のダンジョンや冒険者に関するニュース映像が放送されていた。


 今は最新の魔道具の紹介VTRが流れているようだ。


 なにやら物体を異空間に収納させる指輪型のアイテムが開発されたらしい。

 一般販売もされる予定みたいだけど、値段はえーっと……?



 いち、じゅう、ひゃく、せん、まん、じゅう……



 は……? じ、十億……? いやいや、ちょっと待て。魔道具にしても高いってレベルじゃねーぞ!?


 余裕で家が買えてしまう。

 それもプールとか庭園とかがついてる豪邸のやつ。


 ……うん。見なかったことにしよう。


 軽い目眩を覚えながら視線を下に移し、辺りを見回す。


 本来の目的を果たす前に、ふと思いだして、ある窓口に足を運ぶことにした。


 窓口の前まで行くと、受付の職員が声をかけてきてくれる。


「こんにちは、買取でよろしかったですか?」


「はい、お願いします」


「それでは、こちらにライセンスをかざしてください」


 言いながら職員のお兄さんが小さな四角形の機器を差しだした。


 俺が右腕にはめたブレスレットをその機器にかざすと、ピッと軽快な音が鳴る。


「確認しました。611ポイントですので、24440円へと換金できますが、全て換金しますか?」


 問いかけに、俺は頷きながら「はい」と答える。


「畏まりました。では、そちらをタップしてください」


 職員のお兄さんの操作するパソコンの反対側、つまり俺に向いているモニターにこう表示されていた。



 『エナジーポイント 611 を 24440 円に換金しますか? はい いいえ』



 もちろん「はい」をタップする。


「換金が完了しました、お疲れさまでした」


「ありがとうございました」



 便利なものだな、と右腕のブレスレット(冒険者ライセンス)を見つめながら改めて思う。


 八年前に「賢者」と呼ばれる人によって発案されたこの機器の誕生により、冒険者の生活は劇的に変化した。


 まさか、モンスターが特殊なエネルギーを放っていて、それを吸収して利用することが出来るだなんて……。


 気付いたとしても、それを形にするのは簡単ではないだろう。


 本当に賢者様さまさまってやつだ。


 ともかく、これで用事は終わった。

 残る目的はあと一つ。


 再び重くなりそうな心を引き締めて、エントランスの右側、地下へと続く階段の方へと向かう。



 その途中で、



「あ、ミクルさん!」



 女性の声が俺の名前を呼んだ。


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