万事わたくしにお任せください、ご主人様?~俺が追放されたのは自己責任で納得してるんだって。だから付いてこなくて良いのよ、リリベルちゃん?~
俺は負けた。
己の弱さに、甘美な誘惑に。
俺は負けたのだ。
「アルスよ。
ランドーン男爵家当主として長男であるお前に言い渡す。
本日をもってお前を廃嫡とする。
またランドーンの姓も剥奪し、男爵家から追放とする」
だからまぁ、この度の『廃嫡』も『男爵家からの追放』も納得している。
苦汁の決断とばかり心を痛める父や母には申し訳ないが、ここにきて心の内を素直に告白出来ないのもまた、俺自身の弱さ故だろう。
「齢にして10になったばかりのお前を追い出すのは、ワシとしても心苦しいのだが……。
お前の【呪い】を悪く言う者もおる。
屋敷に居るだけで災いをもたらすやも、と。
餞別は弾もう。許せ」
この世界へと転生して10年と+a。
前世の10数年と合わせた人生の中で、成長しきれなかった俺自身の弱さ、人間性の弱さ。
「次期当主候補の弟のためにも、どうか素直に受け入れて欲しい」
全てはそれが招いた結果。
明確な自己責任の帰結である。
「当主様! 私は納得がいきません!」
だから、その……。
「どうしてもアルス様を追放するとおっしゃるのであれば……!
私も! 私も今日を持って辞めさせていただきます!
どうぞ私もアルス様と一緒に追い出してください!」
こんなどうしようもないヤツのところに付いてこなくて良いんだよ、リリベルちゃん?
◇
前世の記憶がはっきりとしたのは3歳のとき。
自身の名前、ランドーン男爵家の長男という立場、聞き馴染みのある名称の魔法、そして見覚えのあるプレイアブルキャラクターの立ち姿。
「今日からアルス様の身の回りのお世話を担当させていただく、ランドーン男爵家メイド見習い、リリベルです!」
これらを知覚したとき、一気に【前世の俺】が頭の中に流れ込んできた。
そうだ、これはゲームの世界……。
前世の世で大人気だったコンシューマのレトロRPGゲームの世界。
まさか、アルス?
俺が、ゲームの主人公、アルス=ランドーンなのか?
「さぁ、アルス様。お着替えですよ?
お手を。鏡の前までお連れいたします」
鏡に映るその姿は幼い。
それでも銀色で跳ね方にクセのある髪型、青い瞳。
ゲームの主人公アルス=ランドーンの幼少期と言われれば、それはもうそのままだった。
「それでは上のお召し物から失礼します。
はい、両手を挙げて、バンザ~イ。
はい、アルス様、バンザ~イ、です」
そして目の前で甲斐甲斐しく世話を焼く、メイド見習いのリリベル。
彼女の姿もまた幼い。
それでも整った顔立ちに赤い瞳、さらに赤みがかった長髪をポニーテールにしてメイド服を纏った姿は、まるで現実感のないアニメキャラのよう。
「アルス様、その、不思議そうにまぢまぢと見られますと、その……。
どうかお慣れください。
少しでも歳の近いメイド見習いが付くのは、お貴族様の慣習ですので……」
彼女はいわゆる仲間キャラ。
ゲームでは主人公を幼少期から知る古株として共に冒険の旅をするストーリーキャラクターであった。
「もちろん私も精いっぱい、お世話係を務めさせていただきます!
ですから──」
だから例え幼くとも。
その立ち姿はゲームキャラのリリベルの幼少期と言われれば、それはもうそのままで。
「万事わたくしにお任せください、ご主人様?」
その決めゼリフもそのままで。
それらは俺がゲームの世界に転生したと推測するのに、十分過ぎる程の説得力を有していた。
◇
男爵家の当主である父親から正式に『廃嫡』と『追放』を言い渡された後。
俺は自室に戻り、屋敷を出て行く準備をしていた。
傍らでは今や17歳に成長したリリベルが、先程の遣り取りに「廃嫡など不当だ、狭量だ」と息を巻いている。
「たしかにアルス様は【短命の呪い】により、先行きに不安があるやもしれませんが!
その才は紛れもなく天下一品!
なればこそ男爵家の総力を挙げて【呪い】の解明をするべきでしょうに!」
短命の呪い。
原因は不明。治療や対処の方法も不明。
それでも確実に他人の数倍の早さで成長し、あと10~20年程度で死に至る。
男爵家お抱えの医師、聖教会の神官、魔術師の権威。
それらお歴々方が出した、10歳の俺の現状に対する結論だ。
そう。
呪いと呼ばれるその原因不明の事態により。
10歳のはずの俺の身体は青年、およそ20代中盤の成人男性の姿にまで成長していたのだ。
鏡を見ればあらやだ、素敵。
さすがは主人公、イケメン好青年である。
「まぁまぁ、リリベル落ち着いてよ。
今の俺が『10歳です!』って自己紹介したとして誰も信じないでしょ」
「それは、まぁそうですけど……」
「弟も特段に不出来という訳で無し。
早や死にするだろう俺を見限るのも、男爵家として理に適っていると思うよ」
「アルス様はなんでそんなに落ち着いてるんですか!」
リリベルは納得がいかないと俺を睨むが、当の俺はすでに諸々を受け入れている。
キツい視線は俺を責めるようで、その実、それは全く正当なんだけれど。
廃嫡も追放も全ては俺。俺が悪い。
リリベルはそれを分かった上で俺に対して責めた視線を向けているのではない。
たまたま的を射てしまっただけ、俺が勝手に圧を感じているだけ。
でも居たたまれないのでそろそろ勘弁して欲しい。
そもそもとして俺には分かっていた。
これは呪いなどではない。
全ての原因は、俺が己に負けたこと。
自発的な怠惰の証明の姿だと。
いや。ある意味で呪いなのかもしれない。
解っているのに止められない。
そんな怠惰な本能に根差した呪いなのやも。
「──なんて、自嘲していても始まらないな……」
どちらにしろ。
俺としては原因は明らかであり、まさに自己責任の帰結。
それが分かっている。
「リリベル。
君にはちゃんと説明しておくよ」
だから話すことにした。
ゲーム開始前のシナリオにない主人公の追放。呪いと呼ばれるものの正体。
すでに壊れてしまった物語の本筋と、それを踏まえて今後、俺が主人公としてどう動くつもりか。
忠義で付いてきてくれるという彼女に、その全てを話すことにしたのだ。
「いいかい、リリベル?
心して聞いてくれ。
俺の現状の姿は【短命の呪い】などでは断じて無い」
「──え? アルス様……?
げ、原因をご存じなのですか?」
「……ああ」
「すごい! さすがはアルス様!
数々の識者が原因不明と匙を投げ──」
「──全ては、あと5分」
「……はい?」
「俺が毎朝目覚めるとき! あと5分だけ!
あと5分だけで良いから寝かせてくれ!
そう願い! そうやって日々、睡眠時間を引き伸ばしてきた結果が──この様だ!」
「──はい?」
「枕がいけない!
ベッドが、布団がいけない!
寝起きのあれらは俺を怠惰に引き摺り込む、まさに凶器!
それらにひたすら負け続けてきた姿!
つまり! それこそが今の俺なのだ!」
「──はいぃ?」
◇
幼くして前世の記憶を取り戻した俺は、その立ち振る舞いから神童と呼ばれた。
夢か現実か判らない世界ではあるが、ベースは前世でやり込んだことのあるゲーム世界。
レベルが有り、魔法が有り、シナリオも全て理解している世界。
そこにゲーム開始のずっと前、子供時代の主人公として俺は存在していたのだ。
主人公としての戦闘力を鍛えない訳がない。
そうやって調子に乗れば流石は主人公。
その立ち位置に相応しい高スペックである。
基礎身体能力、魔法の素養、まさに主役。
鍛えれば鍛えるほどに目に見えて結果に出る様はチートと呼べる身体性能で、精神的に中身は大人で落ち着いた言動をする。
それこそ周りの目には『天才的、他に類を見ない神童』に映ったことであろう。
そんな中でも特に俺自身がチートと思ったのは【アイテムBOX】の魔法。
それは『この世界と別の空間をつなぎ合わせ、自由に物を出し入れ出来る魔法』である。
本来はレトロゲームの世界のインベントリであり、特に説明も無いまま根本的なゲームシステムとして組み込まれていた、まさに『仕様』と呼べる代物。
推測でしかないが、そんなレトロゲーム特有の無限に武器・防具・アイテムを持ち運べるシステムが現実に照らし合わされて『収納量無限』『出し入れ自由』『時間経過無し』という壊れ魔法【アイテムBOX】になったようなのだ。
俺にしか使えずに、あまりにチート性能。
これがバレたら些事が山のように舞い込む。
戦略級の使い方すら可能で、俺自身が拘束される恐れまである。
そんなことは容易に想像が出来た。
だからこの魔法に気付いてすぐ、俺はアイテムBOXの魔法の存在を秘匿することにした。
とはいえ。
お蔵入りさせて使用しないなんてのは、流石にもったいない性能。
ついつい、ついつい。
こっそり、こっそり、ひっそり、と。
将来の攻略に有用そうな武具やアイテムから、間食にお菓子や飲み物まで。
個人的な出し入れに留めて使い込んでいくうちに、このアイテムBOXとやら。
更にヤバい性能があることに気付いたのだ。
【俺】が入れる。
アイテムBOXの魔法を検証し始めた頃に『生物は入らない』ことは解っていた。
だから自然と無生物だけを収納する魔法だと、いつの間にか決め付けてしまっていた。
だが、どうだ?
他の生物は入らなくとも自分自身を試してみれば、なんと入るではないか。
俺が入ったとき、アイテムBOXの中の空間に時間を感じた。俺が入ったことにより時間の経過が始まったのだ。
その後、アイテムBOXから出て気付いた。
逆にこちらの世界の時間が止まっていた、と。
俺がどちらの空間に居るかによって、時間停止する世界が切り替わる。衝撃だった。
想像してみてくれ。
嫌な人物に会う。会わなければいけない。
目の前のドアを開ければ居る。
急ぎだ。すぐ。
今にもすぐ、会わなければいけない。
そう仮定して。
誰にも気付かれず迷惑を掛けることもなく、心を落ち着かせる、腹を決める、そんな時間が取れたら? 取れるとしたら?
家庭教師の授業を受けたくない、勉強したくない。そんなことより、今読んでいる本の続きが読みたい。読んでいたい。
朝。起こされて、まだ眠い。
あと一眠り。あと一眠りだけで良いから寝ていたい。
それが叶うなら?
俺は即、アイテムBOX内に寝具を揃えた。
「──という訳なのだよ!」
「……さ、最低な理由ですね。
そうやって、ちょこちょこ現実逃避をしてたからアルス様だけ時間が進んで成長していた、と。
あ、あらためて最低な理由、ですね……!」
◇
「……こう言ったらなんだけれどさ。
正直、よく付いてきたねリリベル……」
「……いや、まぁ。
本心を言えば幻滅しましたけど!」
ここは街の宿屋の食事処。
俺はリリベルと夕食を共にしていた。
追放され、今や平民。
庶民の宿屋、初めての夜である。
「……アルス様。
あらためて確認させてください」
「ん? なんだい、リリベル?」
「アルス様はその、【呪い】ではなく【アイテムBOX】、つまり現実逃避の繰り返しで成長してしまい、男爵家を追放された訳ですよね?」
「まぁ、そうだね。
弁解しようのないほど自己責任だね」
「そして、この世界はゲーム? とかそういう物語の世界でアルス様は『主役』。加えて私も『脇役とはいえ重要な役どころ』だと」
「そうそう。
ゲームって物語の絵だとドットっていう粗い見た目の絵なんだけど、ちゃんと描かれた公式の立ち絵だとリリベルのファンも多かったよ」
「ドット? 公式? ファン?
そ、それはまた……よく分かりかねますが、それよりも!
……アルス様が追放された現状は、そのゲームとやらの物語から外れているのですよね?」
「そうだねぇ。
俺個人としては将来ちゃんと物語通りに世界を救うつもりだったんだけどねぇ。
まさかこんな感じにメインシナリオをぶち壊すことになるとは」
「……それでも!」
「ん?」
「アルス様は、世界をお救いになるお考えでいる、……そう思って良いのですよね!?」
「……そうだね。そのつもりさ。
世界が窮する理由も、それを解決する方法も解っているからね。
スマートには行かないから、どこに歪みが出るか分からないけど、まぁ。今さらだよね」
そこまで言った後、俺はリリベルの皿に分かり易く視線を移し、無言で促した。
話してばかりだと飯が冷めるぞ、全く。
リリベルも食べ進める俺を前に次の言葉が出ないようで、仕方なしとスプーンを動かし始めた。
しばらくお互い無言のまま。
そのまま揃って夕食を完食した。
「いやいや、中々に美味しかったね。
それにしてもさ、リリベル。
男爵家のメイド辞めてきたんでしょ?
俺としては有難いことだけどさ──」
「──アルス様は今。
ご自身の年齢をいくつくらいだと認識されていますか?」
「──うぇ? なんだい、いきなり?」
「答えてください。
私にとって、とても大事なことなのです!」
あ、圧がすごい……。
食卓を挟み、向かい合って座るリリベルは真っ直ぐ。
真剣な眼差しを正面の俺に向け、真っ直ぐに圧を押し当ててきた。
「そうだな……。
肉体年齢はおそらく20代。
良いとこ23~25歳の間ってところかな?
精神的な年齢は、ちょっとややこしいな……」
前世の記憶を辿れども。
はっきりと思い出せるのは高校生であった、というところまで。
そもそも前世の自分が死んだという記憶すらない。
「前世の記憶はおそらく17歳か18歳。
それに今世の20数年を合わせると、単純計算なら30後半から40歳ってところ。だけど……」
単純計算なら、およそ40歳。
そうなる。
でも待ってくれ。
そんな成熟した大人の自覚なぞ、まるで無い。
そんな単純な話ではない。ないはずなんだ。
「恥ずかしい話、俺には大人として生きた記憶がない。
社会的な立場において大人として振る舞ったことも、まして大人としていることを必要とされたこともないんだ。
むしろ俺の記憶にある40年ほどは全て、子供であることを強制されていた」
圧は止まない。
独白に近い俺の話をリリベルは黙って聞いていた。
喉が渇くので水を片手に、考えを整理しながら話を続ける。
「……だから、精神的な年齢を考えたら。
今の俺は前世の記憶にあるまま、18歳くらいじゃないか、と思う」
「私は今、17歳です。
私じゃ駄目ですか?」
「──ブふぉッ!」
思わず水を吐いた。
あぁ、リリベルさん。
そんな顔をしかめないで。
汚い、汚いよねぇ。ゴメン、ゴメンて。
「──急に、な、何を言い出すんだリリベル!」
片手で布巾を動かしながら、リリベルに発言の意図を問い掛けた。
俺の反応が想定と違ったのか。
リリベルは少し憮然とした表情のままに答える。
「……ここにきて、少しばかり幻滅することもありますが。
私はアルス様が良いのです。
あらためて私では駄目ですか?
アルス様は私のこと、お嫌いですか?」
「……いや、いやいや。
好きか嫌いかで訊かれたら、そりゃリリベルは可愛いし、性格も好きですよ?
いや、でも……。
俺のことなんて3歳の子供の頃から見てる訳じゃん?
その、本気……なの?」
「少なくとも私がこういう冗談を言わないことは、アルス様も良くご存じでしょう?
……ですから。
私は至って真剣にお話しているつもりです」
たしかにリリベルが『そういうこと』を冗談で口にしないことを俺は知っている。
俺自身も3歳の頃からリリベルを見ているし、言ったらそれ以前、前世の頃からキャラの設定を知っている。
しかし、しかしだ。今の俺は10歳。
肉体年齢も精神年齢も違うけど、この世界の時間軸でいえば年齢は10歳。
対してリリベルは17歳。
歳の差は7歳もある訳で、前世で言ったら女子高生が小学生に交際を申し込むような話で、たしかに肉体年齢的には俺の方が大人で、精神的な年齢も差がない訳で、って……アレ?
問題ない?
問題……ないのか?
「なんでまた、急に。
あれかい?
俺が平民落ちして身分差がなくなったからかい?」
「それも理由の一つです。
ですが、もっと大きな理由は私がアルス様の楔でありたい。
そう思ってしまったから、です」
「……楔?」
「このままアルス様を放置すると、怠惰で劣悪な感情に身を任せて死にます。
私はそれを黙って見ているは、嫌です。
怠慢なまま急速に老いて死ぬ。
そんなアルス様を指をくわえて、ただ黙って見ているなんて……!」
そこでリリベルは俯き、言葉を詰まらせた。
俺は俺で困惑していて切り出す言葉が見つからなかった。
しばしお互いに無言。
宿屋の夕食時の食事処。
それなりの雑多な喧騒が二人を包んだ。
正直に言う。
めっちゃ嬉しい。
なにコレ?
正直、俺、今、めっちゃ嬉しい。
水を一口、落ち着きを取り戻したリリベルが話を続けた。
「本当のことを言えば、数年前にアルス様が私の背を追い越した頃にはもう、私はアルス様をお慕いしておりました。
アルス様、私は本気です。
だから私がアルス様が怠惰に打ち勝つ理由になって、私と一緒にいたいと思って長生きをする、そんな楔になりたい。
そう心から思えたから今、こうしてお話しているのです」
ヤバい、ヤバいて。
リリベルさん、あなた美少女なんだから。
無自覚に、真っ直ぐに、そんな圧……!
リリベルさん、あなた、ヤバいって!
「あらためてお訊きします。
私じゃ駄目ですか?
私ではアルス様が長生きする理由になれませんか?」
「ほ、本気、なんだね……」
「ええ。私は本気です。
ここにきて多少、幻滅したことはありますが。
多少幻滅したことはありますが」
「──なんで2回言うのかね!?」
ツッコミだけは素直に出た。
なるほど。
長年仕えたメイドなだけはある。
主人が緊張しているのもお見通しか。
モノの見事に手玉、ほぐされた。
「……嬉しいよ。
そう真っ直ぐ言ってもらえて、俺は今、素直に嬉しい。
そうだね。
リリベルと少しでも長く一緒に居れるように俺、頑張ってみるよ」
二人で笑い合った。
なんだコレ?
やたら照れくさいんですけど!
「アルス様の楔で居れるよう、私も精いっぱい頑張らせていただきますね。
ですから──」
「万事わたくしにお任せください、ご主人様?」
◇
「おはようございます、アルス様。
朝です、朝ですよ~」
「──むにゃ? ……リリベル?
おはよう、むにゃ、むにゃ……」
「アルス様、起きてください。……アルス様?」
「う~ん……、リリベル~……。
あと5分んん……、──ぶふぉっ!?」
「駄目です、アルス様。
魔力を感知しました。駄目です」
俺は負けない。
己の弱さに、甘美な誘惑に。
俺は負けないのだ。
みぞおちが痛いから。
「──さぁ、アルス様?
世界を救いに参りましょう!」