新しいお客さん
「んぅ」
ここどこなの?なんでこんなところで倒れてるんだろう。なんだか体が思うように動かない。
とにかく、家に帰らないと、また怒られちゃう…
「はぁ、はぁ」
壁に手をつきながらなら、なんとか歩ける…
「早く帰らないと、早く」
ーーー
なんとか帰ってこれた。家に入ったらお父さんに謝らないと
ガチガチ
「あれ?鍵が閉まってる?」
トントン
「お父さん?僕だよ、開けて」
僕は全然力が入らなくて扉を強く叩けないけど、なんとかお父さんに気づいてもらうために頑張った。
「どうすればいいんだろう」
結局お父さんは出てくれなかった。もしかしたらまたどこかに出かけたのかもしれない。
お父さんは結構な頻度で出かけることが多い。今までは僕が家の中にいてるときに出ていたので、今日みたいなことは初めてだ。僕が遅くなっちゃったのが原因だろうけど
お父さんやっぱり怒っちゃったのかな
どこか、いくところもないし兎に角お父さんを待たないと
「んしょ」
僕は、家の扉を背にして座り込んだ。
「遅いな…」
僕は座り込んだまま意識を手放した
「ちょっと、起きなさい!」
ドカッ
「うぐっ」
扉の前で眠っていたぼくのお腹を誰かに蹴られた…
「えほ、えほ、えっと、お姉ちゃん誰?」
お腹を蹴られて咳き込みながらも顔を上げるとそこにはお姉さんが立っていた。大学生さんくらいかな?
「はぁ?何言ってんのよ!私は今日からあんたのご主人様になる人よ!なのに名前も分からないわけ?」
「え?ご主人様?」
「ほら、さっそと来なさい」
「うっ」
ご主人様?お客さんってことかな?ならいつも通り奉仕しないと。でも、思うように体が動かない…
「あぁ、もうめんどくさいわね!さっさとしろ!」
「ご、めんな、さい」
だめだまた目が見えなくなってきた。お姉さんはどこに行ったんだろ。分からない
「もういいわ。そこで大人しくしてて。動かないでね?」
「は、い」
なんとかお姉さんの声を聞き取れた僕はその場で待機させられた。
僕って今どうなってるんだろう。しっかりと立ててるのかな。分からない
「あの、大丈夫ですか?」
「ん?」
なんとか意識は保ててる。にして今の人は誰だろう。声からして女の人だろうけど。
「顔色も悪いし。よかったら私が」
「お待たせ!」
女の人が何か話そうとしてたけどそれを遮るようにさっきのお客さんが声をかけてきた。
「あれ、白石さん?」
「あら、村上さん。奇遇ですね」
「うん。それよりも大変なのこの子が体調がすごく悪そうで!」
「大丈夫です。この子は私の弟なのですぐに病院に連れていきます。さ、行きますよ」
「あぐっ」
無理やり手を引っ張られたせいか頭に激痛が、痛いよ…
「本当に大丈夫なの?」
「一刻も早く病院に連れて行かないとですから、ここで失礼しますね」
「うん。気を付けてね」
はぁはぁはぁ
ダメだもう激痛でおかしくなりそう
「はぁ、危なかった。本当にこいつ従順ね。さっさと車に乗れ」
ガチャ
「うっ」
お姉さんに急に後ろから押された。車に乗せられたのかな
バタン
「これからが楽しみだは。まず…」
もう無理…
僕の意識はそこでなくなった
ーーー
「ん?」
ここはどこだろう。心なしか体が楽になった気がする
ピ ピ ピ
腕に何か管が繋がっている
「あ、起きましたか?」
お客さんだ。ここはお客さんの家なのだろうか?
「点滴もうすぐ終わるからね」
点滴?なんだろうそれは。この管のことだろうか
「ありがとう。お父さん」
「別に礼なんていらないよ。娘の頼みだ。当然のことだよ」
「これで、あの子の病気は治ったの?」
「あぁ、病気と言っても風邪が悪化していただけだからね。あとは薬を飲んでおけば治るだろう」
「わかった」
しばらくして僕の腕から管が抜かれた。何をされたのかは分からないけど体の調子がいい
「さあ、車に乗りましょうか」
バタン
もしかして僕を治してくれだのだろうか?こんな僕を治してくるなんてこのお客さんはとても良い人なのかな?
「ご迷惑をおかけしました」
「本当よ。あの男。調子のいい言葉ばかり並べて。イライラする」
カリカリカリ
お客さんが苛立っているのか爪を噛み出した
「まぁ、いいわ。さっさと家に帰って払った分働いてもらうわよ」
「はい」
ーーー
「さてと。まずこの首輪を着けて」
「はい」
この人はどんなことすればいいのかな?
「着けました。えっと僕はどうすればいいですか」
「今からあなたは私のペットよ。分かった」
「ペット、ですか?」
ペットってなんだろう。一度TVで見たことるような…確かワンちゃんのことだったような気がする。
「まずは四つん這いになって」
やっぱりそうだワンちゃんになればいいんだ
「そう、素直ね。じゃあ次に足を舐めて」
ぺろぺろ
「あぁ、またイライラしてきた!」
バキ!
「うっ」
僕がお客さんの足を舐めているとまた何かに苛立ったのか僕の顔を思いっきり蹴り飛ばしてきた。このお客さんは暴力を振るってくる人か…痛いから嫌なんだけど我慢しなきゃ。
「あの、クズ私を気持ち悪い目線で見てきやがって。まじイラつく。誰がお前みたいなやつと付き合うかよ!」
バキ 「ぐっ」 バキ「っ」
蹴られすぎてもう声が出ない
「なあ、お前もそう思うよな?」
お姉さんが倒れている僕の頭をぐりぐり踏みつけながら問いかけをしてくる。
「はぁはぁ、だいぶスッキリしたわね。ご飯にしよっか」
しばらく僕を蹴ったり殴ったりしたおかげかだいぶ苛立ちがなくなったようだ。良かった。ちゃんと役に立てたみたい。
「さてと片付けしといてね」
「はい」
お客さんはそう言い残して部屋から出て行った。体が痛くて立つのも辛い。でも早く片付けないと。
「おぉ、綺麗に片付けてるじゃん。これご飯ね」
「ありがとうございます」
なんだろう。白い液体?煙が出てる
「これ、なんですか?」
「え?知らない?シチューだよ」
「?」
シチュー?聞いたことない名前だ。
ごと
お姉さんはそのシチュー?が入った皿を床に置いた。這いつくばって食べればいいのかな。
「さてと」
べちゃ べちゃ
「私の足で食べさせてあげる。感謝してね?」
「はい。ありがとうございます」
わざわざ食べさせてくれるなんてやっぱりこのお客さんはいい人に違いない。