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隠しイベントの発生

 多くのゲームには隠しイベントがある。ラスボスを2回倒すと、かなり手強い裏ボスが現れたり、特定のキャラクターに複数回話しかけると、特殊なアイテムがもらえたりする。ゲームによっては自力で見つけるのが不可能に思われる隠しイベントも存在する。例えば、僕が以前にプレイしたゲームでは、A街のモブギャラに3回話しかけた後に、B街の武器商人に4回話しかけ、最後にC街の商店街で特定の商品を買うと、隠しアイテムが手に入るというようなものもあった。数日前までの僕はらこの類の隠しイベントを最初に発見した人は何を考え、何を食べている人なんだろうとよく考えていた。でも、やっぱりいるにはいるんだよなと今なら思う。なんてったって、僕が隠しイベントを発生させてしまったんだから。

 

 新学年が始まっても特に代わり映えのない日常が続いているのは不思議なことではなかった。僕の所属する世田高校には、特進クラスなる制度があり、入学してすぐに受けるテストの結果を元に上位20%の生徒がそのクラスに振り分けられるのだが、そこから卒業まで特進クラスは固定メンバーなのだ。だから新学年の初日に顔を合わせるメンバーは、去年の今日と全く同じ、違うのは心の程よい緊張感と高揚感がないことくらいだろうか。

 さっそく話しかけてくるのはやはり金髪オールバックの熊谷だった。

「おい、ジュン!またいつもの静観系主人公気取りモードか??新学期だぞ!友達づくりの大ぃぃぃチャンス!!」朝から人に積極的に話しかけに行くようなやつはまともな奴はいない。熊谷もご多分に洩れずだ。

「うるさい。お前、特進クラスの制度を忘れたのか?今年もメンツは全く同じだぞ」

「んなことはわかってるよ。お前俺以外に友達いんのかよ。」真顔でマジレス。出たこのテンション。こいつは大声で話しかけた2秒後に突然冷静になることがある。さらに、そのモードの熊谷は非常に辛辣なことをどストレートに言ってくる。今回もご多分に洩れずだ。

 

 僕にはこの30人のクラスに友達が熊谷しかいない。このクラスはカーストやらもなく、とてつもなく平和なクラスなので全員仲が良い。少ない人でも4,5人は友達がいる。ちなみに熊谷の友達の数はもちろん29人だ。

 なんで、僕の友達は熊谷しかいないのか。ここには何も面白い事情はない。僕は単に学校でずっと寝ており、同級生とのコミュニケーションの機会を逸しているのだ。ではなぜ、熊谷は友達なのか。ここには少々、特殊な事情がある。熊谷と僕の下の前が同じなのだ。熊谷ジュンと浦田ジュン。会って初日に熊谷が

「ダブルじゃん!俺らズッ友だな!」と言ってきて以来の友達である。ズッ友なんていう言葉を日常会話の中で耳にするのは後にも先にもこの時だけだろう。

 

 ここまでなら静観系主人公の僕とエネルギッシュハイパー陽キャの熊谷を中心とした日常系作品だろうし、僕もそれを望んでいたのだけれど……

 高校2年生の4月、新学期の初日の午後、隠しイベントは発生した。

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