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水野忠短編集

器用な神様と不器用な神様 【短編完結】

作者: 水野忠
掲載日:2021/08/08

 そこはたくさんの神様が暮らす天上世界。


 神様たちは、いつも私たちの世界を気にかけ、

 困っていることがあると、そっと手を差し伸べてくれます。


 日照りが続き作物が育たない時は雨を降らし、穂を実らせ、

 人々が飢えないように、様々な生き物を作りました。

 牛、豚、鳥、鹿、猪、それ以外にも、魚や植物を作ってくれているのです。



 ある日、器用な神様が、

「たまには食べ物になるものばかりではなく、見て楽しまれるような生き物を造ろう。」

 そう言って、青空に浮かぶ白くきれいな雲をちぎると、

 羽を付け、色を付け、空を自由に飛べる生き物を造りました。


 それは、人々の間で「蝶々」と呼ばれて、愛されました。

「神様はなんて美しい生き物をお造りになるんだろう。」

 人々は蝶々の絵を描いたり、着物の柄にしたりしました。


 それを見ていた不器用な神様が、

「器用な神様はきれいな生き物を造ったものだ。よし、私も一つ手伝ってやろう。」

 不器用な神様は、曇り空の雲をちぎると、

 見よう見まねで羽を付け、色を付け、空を自由に飛べる生き物を作りました。

 せっかくならいっぱい増えてほしいからと、たくさん卵が産めるようにしました。


 それは、人々の間で「蛾」と呼ばれて、嫌われてしまいました。

「神様はなんだってこんな気持ちの悪い生き物を作ったんだい。」

「幼虫が庭の草花を食い尽くして全部枯らしてしまったよ。」

 人々は蛾を嫌い、駆除するようになっていきましたが、

 普通の生き物よりも多くの卵を産むため、どんどん増えていってしまいました。


 不器用な神様は首をひねって考えました。

「どうして人々は、私の作った生き物を嫌うのだろう。」

 そして、考えて考えて、

「そうだ。見るだけじゃなく、聞いても楽しめる生き物を作ろう。」

 そう言って、不器用な神様は、再び曇り空の雲をちぎると、

 見よう見まねで羽を付け、色を付け、空を自由に飛べて、

 それでいて鳴き声で楽しめる生き物を作りました。


 それは、人々の間で「蝉」と呼ばれて、また、嫌われてしまいました。

「神様はなんだってこんなやかましい生き物を作ったんだい。」

「うちなんか隣が林だからやかましくって仕方ないよ。家族と話もできない。」

「それに、死んでるかと思って通り過ぎるといきなり鳴き出すし、怖いわ。」

 駆除するほどでもなかったのですが、人々はあまり蝉を好みませんでした。


 それを見た器用な神様が、

「鳴き声のする生き物か、それはいいね。」

 そう言って、青空に浮かぶ白くきれいな雲をちぎると、

 羽を付け、色を付け、空を自由に飛べて、

 それでいて、美しい音色で鳴く生き物を造りました。


 それは、人々の間で「鈴虫」と呼ばれて、愛されました。

「秋にこの鳴き声を聞くと、とても穏やかな気持ちになるよ。」

「神様はとても素敵な生き物をお造りになられたね。」

「とても心地い音色ね。そのままゆっくり眠れそうだわ。」

 人々は鈴虫を庭に放ち、夕涼みをして、その音色を聞きながら家族団らんをしました。



 またある日、器用な神様が、

「今度はカッコいい生き物を作ってみるか。」

 そう言って、青空に浮かぶ白くきれいな雲をちぎると、

 羽を付け、色を付け、空を自由に飛べて、

 雄々しく猛々しい角を付けた生き物を造りました。


 それは、人々の間で角を持ったのは「カブトムシ」、

 ハサミを持ったのは「クワガタ」と呼ばれて、愛されました。

「わぁ。神様はなんてカッコいい生き物をお造りになられたんだろう。」

「見てみて、僕のカブトムシ、角が大きくてかっこいいだろう?」

 子供達が喜ぶ姿を見て、器用な神様はにこにこと笑っていました。


 それを見ていた不器用な神様は、

「よし、今度こそカッコいい生き物を作ってみせるぞ!」

 そして、真っ黒い雨雲をちぎると、

 見よう見まねで羽を付け、色を付け、空を自由に飛べる生き物を作りました。

 カブトムシやクワガタはカッコいいですが動きが遅いので、

 すばしっこくてどんな隙間にも入っていけるようにしました。

 それでいて、いっぱい増えてほしいからと、たくさん卵が産めるようにしました。


 それは、人々の間で「ゴキブリ」と言われて嫌われました。

「駆除しても駆除しても出てくるんだよ。」

「気が付くと部屋にいてさ。あの黒光りが怖いんだよな。」

「神様はなんだってあんな生き物を作りやがったんだ。」

 人々はゴキブリを嫌い、駆除するようになっていきましたが、

 普通の生き物よりも多くの卵を産むため、どんどん増えていってしまいました。

 駆除しようにもあまりにすばしっこく動き回り、

 隙間があればどんどん隠れていくので、人々は疲弊しました。



 器用な神様は、

「なぁ。神様にだって得意不得意はある。君はもう、生き物を作らないほうがいいね。」

 そう言って不器用な神様を諭しました。


 不器用な神様は肩を落とし、

 別の仕事をしようと去っていってしまいました。


 終わり

お読みいただきありがとうございます。


作者は虫が大の苦手です。

職場は自然豊かなもので、

毎年様々な虫さんが来訪します。(笑)


少しでも気を紛らわそうと書いたお話でした。


ブックマークと高評価、

どうぞよろしくお願いいたします。

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