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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
3.サイコパスの青春
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ラプラスの悪魔

作中では珍しい美世より格上キャラとして蘇芳を出しましたけど取り扱いが難しいですね。

「あなたの言ったことは間違っている。だって私の目は見えているもの。」


「それは美世の能力は確定されていなかったから。」


「確定?」


「能力に未成熟の期間がある事は知っているでしょ?」


「ええ。」


確か先生にそんな話をされたような気がする。


「本当だったら私と同じ能力になるはずだった…しかし死神が関与したせいで能力の成長先が変わってしまったの。その結果が【探求(リサーチ)】。」


「先生がそんな事をしたの?」


「いや、死神も知らなかった。美世がまだ未成熟の期間だった事も自身の時間操作能力を貸し出したことで美世の脳に与える影響もね。」


蘇芳はただただ見たものをそのまま口に出しているような話し方だった。まるでその場に居て全てを理解しているみたいな…


「その場に居なくても知れるなんて便利な能力だね?」


「そうでもないよ。その場に居る人すら知らない事を知っている弊害は結構あってね。色んな人から恨まれたり恐れられたりするからね。」


「私を番犬代わりにしたいんだ。」


クスクスと口を押さえて笑う蘇芳さんは年下である筈なのに凄みがあった。


「美世との会話は楽しいわ。全てを話さなくても私の真意を理解してくれるしユーモアがあるわ。」


褒められているのか?それとも馬鹿にされている?


「絶賛よ。私がこんなに同じ人と話しているのは初めてですもの。」


「私より陰キャじゃん。」


お互いにクスクスと笑ってはいるが腹の探り合いをし続けている。その証拠に彼女達の目元は一切笑っていない。


美世はまだ蘇芳の事を信用しきっていない。寧ろ今まで会った能力者の中で一番警戒をしている。


そしてその事を知っている蘇芳も美世を警戒している。何故なら蘇芳は貧弱で美世の一撃で簡単に死んでしまうからだ。


お互いに警戒し合い牽制代わりの会話を続ける。


「私を守ってくれるなら美世が欲している情報を提供する。Win-Winの関係じゃない?」


「あなたから提供される情報が絶対に正しいっていう確証が得られないからその関係性は破綻している。適当な事を言っていれば良いんだから。」


「それなら大丈夫だよ。だって美世は善人で優しいんだもの。」


ニコリと笑う蘇芳さんはとても恐ろしいものに思えた。…そして人の言葉がこんなにも怖いと感じたのは生まれてはじめての経験で、彼女の言葉は欠けたピースを埋めるかのように私に填まっていく。


「私は真実だけを言っていれば良い。信頼を得ようと言葉を積み重ねる必要もない。だって美世は頭から相手の言葉を否定はしないから。」


蘇芳の言葉は麻薬のように私の脳を侵食し幸福感を生み出した。


「私が言った言葉に信用と信頼を与えるのは美世自身。私の言葉の裏取りや本当にそうなのかと考えてくれる。美世は真実しか興味無いものね?」


ああ正しい。彼女は正しい事を言っている。全て彼女の言う通りだ。


「だから現在(いま)でなくこの先の未来で信用を勝ち取ればいい。だって美世は私の事を今すぐには殺さないしどんどん私を気に入り始めている。あなたのお気に入りになるのは簡単。利益を与えれば良いのだから。」


正し過ぎて嫌になる。そうだ…私は利益を優先にする。だから私は先生の事が好きなのだ。先生が一番メリットを提供してくれるから。


「何で死神に取り入るんじゃなくて私に取り入るの?」


「私は死神に殺されるから。()()()()()()()()()()()。」


蘇芳は未来の事まで知っている?それに二巡目?


「待って待って…あなたが死神に殺されるのは確定された真実?」


「もしもある瞬間における全ての物質の力学的状態と力を知ることができ、かつもしもそれらのデータを解析できるだけの能力の知性が存在するとすれば、この知性にとっては、不確実なことは何もなくなり、その目には未来も全て見えているであろう。美世は知っている?ラプラスの悪魔を。」


「知っているよ。今わたしの目の前に居るもの。」


つまりはこの時間でも蘇芳は未来を見れる…知れるという事か。正に全知全能の能力だ。代償が視力を失うだけで良く済んでいると思う。


「美世は本当に面白いね。そうだよ。私の能力【ラプラス】は全てを知ることが出来る。未来も過去も…そして一巡目も二巡目の世界だって。」


「その二巡目?の世界って何?」


「そうね…ここで言うのはどこまでが良いかな。」


テーブルに手を置いて指をコツコツと叩きながら熟考をし始めた。瞼は閉じているのに何かを見ているようにある一点を凝視している…気がする。


「一巡目の世界では私は惨たらしく殺されたの。小林さんもお母さんもね。」


左手がピクッと反応したが顔には出さず蘇芳さんの話に耳を傾ける。


「でも死神が介入する事でこの世界は二巡目になった。この二巡目の世界では私は死神に殺される。ここまではオッケー?」


「死神の存在が確定された因果を変えた?」


「そう!その通りよ美世!私はそういう存在を()()()と呼んでいるわ!」


「特異点?」


あ、そうか…因果を操作する先生は【ラプラス】にとっては天敵のような存在なのだろう。なんせ蘇芳さんが知っている未来を変化させてしまうのだから。


「一巡目の世界をα線としましょう。」


蘇芳さんが溢れたお茶に指を引いて一本の線を引いた。


「この線の中には私が惨たらしく殺された因果が含まれている。」


うんうん。


「そして枝分かれたこの線がβ線。この線の中には私が死神に殺される因果が含まれている。」


テーブルの上で伸ばした線の途中に枝分かれたした線を引いた蘇芳さんはこの世界は二巡目の世界だと教えてくれた。


「じゃあ確定された因果なのだから私が守る事は出来ないんじゃない?死ぬ前に私にとっとと情報を渡してくれない?」


役に立ってから死んでください。あなたから情報を貰う。先生とは敵対しない。Win-Winだ。私と先生が利益を得る。


「だから美世を呼んで交渉しているの。美世も特異点なのだから。」


…ああ、なるほどそう来たか。私も因果を操作する事が出来る。つまり蘇芳さんを守れるのはこの世界で唯一の人間…。彼女にとっては私だけなんだ。


「先生には勝てないよ。残念だけど私の力ぶ…」


「天狼をこちら側に引き込めば問題無いわ。」


「こちらの手札を後ろから覗かないでくれる?交渉する気あるの?」


クスクスと笑う蘇芳さん。彼女は純粋に私との会話を楽しんでいる。


「私の能力が開花したのは8年前、私がまだ6歳の頃よ。」


「その時に私を視たって訳ね。」


「その時から私はあなたに夢中だった。私が8年間何もしていなかったと思う?」


思わないね。絶対にこの女はアレやこれや動いていたはずだ。


「ずっとあなたを待っていた。私の性格も見た目も話し方すら美世が気に入るように矯正したの。」


サラッとクソ重たい事を言われた気がするけど気にしない。


「全ては死を回避する為にね。知っている?美世が私と会ってくれたから私の死期は延長されたの。死神にとって私の存在価値が少しだけ増したから。」


なるほど…蘇芳さんは死神にご機嫌を取らなければすぐにでも殺されてしまう環境下に居るのか。


「死神のご機嫌1つで寿命が伸びるなんて本当に蘇芳さんにとっては死神なんですね。」


「それは…笑えない冗談ですね。」


苦笑いをする蘇芳さんの反応は年相応に見えて何だか可哀想に思え同情をしてしまうのだった。

蘇芳みたいな何でも知っているキャラって主人公と話しても会話にならないパターンが多いんですけど美世なら会話になるかなーって思いながら書きました。


なので会話にはなっているけど内容が読み手側に伝わらないかなと懸念していますがどうだったでしょうか。次辺り

の後書きで補足を足そうかなと思っているので後書きまで読んでくださると嬉しいです。

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