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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
3.サイコパスの青春
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真夏のランデブー 後編

長い…短くする為に前編後編に分けたのに長くなりました。

時刻は20時を過ぎたが、私達のランデブーはとどまるところを知らない。


『私のもう一つの能力を聞いてくれますか?』


もうお腹がいっぱいではあったが聞いておかねばなるまい。


『その能力も気になっていた 話してくれるか?』


『はい!』


いい笑顔にいい返事なのだが、いい報告ではないのだろうな……


『実は私……異形タイプの能力を持っていたんです!』


『そうなると多能力者(デュアル・アビリティ)という事になるのか?ただでさえ希少な非接触形探知能力者なのにそこに別の能力も持っているとなると!…その価値は計り知れん』


『私の価値って如何ほどのものなんですか?』


『そもそも非接触形探知系能力者はどの組織も最重要能力者として探し続けていた 私達の組織は一番上に位置付けていたぐらいだ』


『そんなになんですか?もっと凄そうな能力とかありますよね?』


『ワタシのような能力は危険過ぎるから見つけたとしても処理するだろうな その点探知能力者は危険度が数段落ちる』


まあ時間操作の能力は組織の方針的に処理したと見せかけて手元に置いておくだろうがな。


『なるほど……物理的な戦闘力は皆無ですからね。』


しかしそんな能力でもミヨが持つことで危険度が跳ね上がる。もう死神(私達)ぐらい世界中から危険視されているだろうからな。


『それで異形能力はいつ頃に気づいた?ワタシと初めて会ったときには気づいていた……訳ではないのだろう?』


『オリオンさんと話してようやく自覚出来るぐらいでした。それぐらい表面に分かりやすく能力が出現しなかったので。』


『だがミヨは気づいた それは何か身体に変化があったからじゃないのか?』


『……前に私が左手が勝手に動くって言ったじゃないですか?』


『ああ』


『それでオリオンにそれは異形能力の可能性があるって言われてから意識し始めたらこう……何て言ったら良いのでしょうか。腑に落ちた?』


『感覚的に理解出来たのだな?』


『そうですね。そんな感じです。』


『そうするとどういう系統の能力か気になるな』


『参考になるかは分からないんですけどこの前に手合わせした娘から速すぎるって言われました。まるで能力を使ったみたいだと。』


『……誰に言われたんだ?』


私は先生に京都での出来事を話した。


『まてまて……一度に沢山の情報が来たぞ 天狼と竜田姫が絡んでいるのか……しかもキョウトと来たか』


『京都ってそんなにヤバい場所なんですか?天狼さんも京都はあまり良い印象を持っていなかったので。』


『あそこは能力者を駒のように使っているクズの巣窟だ 組織の戦力を上げる為に目をつむって来たが ミヨに何かをしようものなら……いっその事滅ぼすか?』


京都が核の炎に包まれる光景が私の頭の中に浮かんだ。


ヤバいヤバい!不穏な雰囲気を出し始めた先生を宥めるために天狼さんとの約束を教える。


『天狼さん達とは協力関係になっていて敵ではありません!天狼さんが京都の上の人達を蹴落としてトップに立ってもらう為に私が力を貸す話をしていまして!』


『ーーーそれは…良い考えかもしれない 天狼なら悪い方向には進まないだろうし策を講じるタイプでもない』


良かった……何とか宥められた。先生なら核爆発させて処理しかねない。


『それでどうでしょうか?私的には天狼と仲良くやれないかなーって思っているんですけど…』


『良いのではないか?彼女の事は小さな頃から知っている 東京支部の方で仕事している理由もあらかた予想は出来ている 力になってあげなさい』


まさかの好印象だった。先生は他の組織の人達にはあまり興味が無いんだと思っていたけど結構見ているんだね。意外だ。


『それで天狼さんに稽古をつけてもらう話をしていてこれからはある程度の頻度で京都に行こうと思ってます。』


『それは良い事だ 彼女は異形能力者だからな その点も良く見て学んでくると良い』


『先生は天狼さんの能力を知っているのですか?』


思っていたより詳しいな……私のレーダーが反応している。もしかしてああいうのがタイプなんですか?


『知ってはいるが……教えない方がミヨの成長に繋がりそうだな なのでワタシからは言えない 稽古をつけてもらいながら自分で考えるといい』


うーん……この反応はグレーに近いホワイトかな?


『先生って天狼について結構詳しくないですか?』


『天狼は組織の中でもワタシに次ぐNo.2だからな 世界から見ても五本指に入る能力者だと思っている』


へーやっぱり天狼さん強いんだね。強いとは思っていたけどそこまでとは。


『…なるほど。先生が詳しいのも納得です。それで少し話を戻しますけど、私の異形能力の系統なんですが心当たりありますか?』


露骨に話を逸して天狼から私への話題にシフトチェンジを図る。


『素早い異形能力など珍しくもないからな……その速度がどれ程なのかもワタシは見ていないからな』


『じゃあ……こんな感じです。』


その場で出来るだけ素早くステップを踏んで先生に見せた。これが私の最速の動きです!


『……確かに速いがこれより速い異形能力者は居るからな 例えば天狼はこれより圧倒的に速いぞ』


また天狼が話題に出てきた!許さないぞあのアマ!


『やはり天狼に見てもらうのが良いかもしれないな 彼女は異形能力の頂点に居るからな 異形能力者の身体の成長にも詳しいからアドバイスや相談を受けてみると良い』


『先生がそう言うならそうします。』


その後、先生と簡単な近況報告をしその日は解散になった。楽しい時間はあっという間に過ぎていく。


光源の多い明る過ぎる東京の夜を歩いている美世は正に絵になるような美しさで通り過ぎる歩行者の視線を集めていた。


(今日は楽しかったな。久々に先生と会えたし疑問をぶつけられたし。)


そう疑問……いや疑惑と言っていい。私はある疑惑を持ち続けている。


私は先生にある質問をした。


ーーー『…前に私が左手が勝手に動くって言ったじゃないですか?』


『ああ』ーーー


私はそんな事()()()()()()()()()


だけど先生はその事を知っていた。もちろん先生がその場で話を合わせただけの可能性だってあるし、私の記憶違いの可能性もある。でも前に言ったのは“能力が勝手に発動する”だったはずだ。


何故ならその時に先生が能力を使ってから異常は無かったかを聞いてきたから、私は能力の事だけを答えた。その時は左手が動く事は銃を創り出す工程の1つだと思っていたから、それ自体は能力と関係しているかは分かっていなかった。


だから私は左手の事は言っていないのだ。なのに先生は疑問を持たなかった。考えられる可能性はオリオンさんが話したか、そもそも知っていたか。


「まあ別にどっちでも良いんだけどさ。」


道路沿いに設置されている照明灯に照らされながら夜道を歩いている彼女は感情が抜け落ちたような無表情でまるで人形のようだった。


疑問が生じたから解消しようとしただけ。先生の事は100%信頼している。だけど後1%信じたい。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


ずっと考えていた可能性だ。先生がお母さんを殺した可能性。100%無いと言えるが後1%信じたい。


もし先生がお母さんの仇なら私は敵対を選ぶ。天狼と手を結ぶ事にした理由は私の戦力を上げる為でもある。天狼……というか処理課の人は基本的に先生に対しては敵対寄りだからちょうど良かった。私と組織No.2の天狼が組めば先生とも良い戦いになるはず。


でもこれはあくまで保険。私は先生の事が大好きだし敵対なんてしたくない。これが私の本心。


しかしお母さんを殺したやつを絶対に殺すというのも私の本心。優先されるのは後者。絶対に必ず殺す。


(…怪しいのは先生よりもオリオンさんだけどね。)


オリオンさんの事も信用している。99%は…だから後1%信じたい。話さないと言ったのに先生に告げ口したのならあなたと私の間に信頼関係は築けない。


オリオンさんとは今度フレンチに行く約束をしている。これから何回も会えるだろう。


信用したい……だから疑う。私の思い過ごしなら良いんだ。考え過ぎなら改めよう。でも……もしお母さんの死に関わっていたのなら容赦はしない。


歩道を歩いている美世の進行方向が不自然に空いていく。向こうから歩いてくる歩行者が脇に除けていくからだ。


その理由は彼女から発される異様なまでの色気で周囲の人間の視線を集めたせいで彼女の表情を見ようと覗いたから。


整った顔立ちの美世の顔は狂喜に歪んでいた。口元は三日月のような弧を描き目の焦点は合っていおらずマトモではない。


皆がギョッとし不自然に顔を背け距離を取る。そんな光景が帰宅する間ずっと続き彼女の凶気が東京の街を侵食し始めていた。

美世と先生との間にフラグ(戦闘)が立ちました。

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