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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
3.サイコパスの青春
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寝首をかく

今週は何とか投稿出来そうです。良かった良かった。

三船の身体には鋭利な刃物で斬られたような切り傷をいくつも負っていた。だがこの切り傷は刃物で斬られたからではない。あいの風の突きや蹴りによって切り傷を負わされたのだ。


「ハァー ハァー…お前、()()()()()。」


「重傷を負わせたり殺したりするのは禁止なんでしょ?」


「やり方が怖いんだよ!天狼さんが言っていた意味と違うからなッ!」


致命傷を負わせるような攻撃は禁止、だから他の傷はオッケーと考えているあいの風のやり方には恐怖を覚える。私もコイツを殺す気だったけどそのぐらいのつもりで挑むという意味で使っていた。本当に殺すつもりなんてない。これは模擬戦なのだから。


でもあいの風はそこら辺の境目が人より歪だ。模擬戦や稽古で流血させる攻撃は普通はやらない。なのに全く躊躇せずに裂いてくる。


「あなたは敵でこれは戦いでしょ?なに今更生易しい事を言っているの。」


そう言い放ったあいの風の瞳は真っ直ぐなものだった。ただただ私を真っ直ぐ見ている。


彼女は私を敵として認めてくれて、この戦いに挑んでいる。……嬉しい。あのデス・ハウンドが私を敵として見てくれている。


…天の邪鬼だとは自覚している。私は先を越された事に逆恨みをして彼女に最低の態度をし続けていたけど心の奥底では彼女の事を尊敬している。あいの風がこれまでしてきた仕事の成績を知れば当然だ。私がこれまで思い描いていた理想を体現している。意識しない訳が無い。


まだ組織に所属していない私達の元まであいの風の情報は回ってくる。その情報を得る度に私達候補生は彼女に対して尊敬の念を募らせていた。


だけど…それと同じぐらいに悔しい気持ちがある。今まで同世代の中で私が一番であり続けていたのにぽっと出の年下の同性に先を越されてしまったんだ。ライバル視して何が悪い。


「…そうだった。今はまだ敵だったわ。」


「分かってくれて何より。」


彼女はそう言って間合いを詰めて来た。決着をつけるつもりなのだろう。だったら受けて立つ!


手刀を縦方向に振るあいの風から横に逸れるようにステップを踏んでカウンター気味に横腹に向けて拳を放った。


しかし拳が入る直前にあいの風が瞬間的に加速しその結果、空を切るだけでカスリもしない。


(…今の動きは生き物として速すぎた。まるで能力で加速したみたいな速さ…まさか本当に?)


その疑問を晴らす為に再び胴体に向けて突きを放つが、また直前になって躱された。…いやいや本当におかしい。避けれるはずが無いタイミングだったのに何故だ?あいの風は探知能力者のはず。なのにあの急加速は一体…


「あいの風、あなた何かした?」


「色々と試し試しにやってるけど、どの事?」


何とあいの風は戦いながら色々と試しているらしい。私には何を試しているのかすら分からない。


「…その急加速だけど、能力で加速しているの?」


その発言に天狼と竜田姫が反応した。あいの風が能力について詮索される事を嫌っている事は処理課の中では周知の事実なので、地雷を踏んだかと心配しあいの風を見たが、本人はあまり気にしていないようで良かったと胸を撫で下ろした。


能力については死神が絡んでくるのでその場合、あいの風が狂暴になる可能性が非常に高い。二人がほっと息をついたのも頷ける。


「いや、普通に反射的に動いているだけだよ?」


「…え、虫みたいに速かったけどあれが素なの?」


「おい、今お前が思っている虫は黒くてカサカサしているやつじゃないだろうな。」


「…」


お前…!


「殺すッ!」


天狼がすかさずに反応する。


「駄目だぞ。」


この一連のやり取りは美世が先程の動きの真相を誤魔化そうと会話の流れを変えたと三船達は思っていた。しかし真相は違う。伊藤美世は真面目に答えていた。本当に反射的に攻撃を避けていたのだ。


今の今まで避けるという動作が能力の特性上不必要だったので反射的に動く事が少なかった。しかし今回は能力を制限した殴り合い。相手の攻撃を避けなければ怪我を負う自体になる。なので必然的に美世は避けるという動作を多めに使った立ち回りを強いられ、そのおかげで自身の反射神経の速度を知る事が出来た。


運動神経が幼少期から抜群だった美世が反射神経が悪いはずが無い。それに美世は探知能力者だ。空間認知能力と情報処理速度は他の能力者とは比べ物にならないほど優れている。その気になれば銃弾を掴めるほどの正確さと素早さを回避行動に活かせばどうなるかは馬鹿でも分かることだ。


「そろそろ決めにかかるけど…」


最後までは口に出さなかったが私には分かった。


もう型は出し尽くした?


あいの風が私に言いたい事はこれだろう。彼女にとってこの戦いは稽古の延長にしか過ぎない。型を出し切った私と戦い続ける理由は無い。


(だったら最後にとっておきのを喰らわせてあげる。)


流道はローリスクハイリターンを追求した武術だが中にはハイリスクハイリターンの型もある。決まれば勝ち外せば負けの実戦では到底使えないような博打みたいな型が。


候補生の先輩達がクソブッパと笑っていた型だけど私は好きだった。こういう技を持っているかいないかで生死を決める場面があると考えて練習し続けてきた。


そして今がその時、生死を決める場面だと言えるこの状況では起死回生の一撃になるはず!


私は後ろに向かってステップを踏んであいの風と距離を空け、その場で両足は脱力気味にし両手は守りの姿勢に構えて静止した。


(…カウンター狙い?)


先程まで攻撃をし続けて攻めまくってきた三船がその場で静止してこちらをジッと見つめてくる。顔立ちが良い彼女が血だらけで見つめてくるから少しドキッとした。だってとても絵になっているから。


…でも雰囲気は剣呑としている。私は武術の事は良く知らないけど彼女は達人の域に達していると思う。今まで戦ってきた中で見たら間違いなく一番単騎性能が高い能力者…と思ったけど宮沢みゆきが一番頭おかしい強さだったな。三船は二番目。


でも私とそんなに変わらない年齢のはずなのにここまで強い同性とあったのは初めてだ。彼女と戦えたおかげで向上心が刺激された。私もまだまだ強くなれると彼女の戦い方から教えてもらったからには最後まで付き合わないといけない。


例えあの見え見えの罠に正面から突っ込むことになったとしてもだ。


足の指先に神経を集中させて素早く踏み込んだ。耳には空を裂く音が聴こえて全身の筋肉からはミチミチと引き絞られる音が鳴る。現段階で素の私が出せる最高速度。そこから突きを放ってこの戦いに終止符を打つ。


三船まであと三歩の距離…そこからまた一歩…また一歩と間合いを詰めるが三船は動かない。あの構えで静止したままだ。


面白い…私とド近距離でやり合うつもりなの?もしかして掴み技や絞め技かな。狙いは悪くないけど純粋な筋力勝負なら自信あるんだけどねッ!


そして私が最後の一歩を踏み出した時、彼女は動いた。


脱力していた状態の足、つまりリラックスしていた状態から一気に力を入れ私の足先に踏み入って来た。


(!?)


私が踏み抜こうとした瞬間、足先に足を置かれたせいで()()()()()()()()()()()()


この一瞬の攻撃にも防御にも移っていない空白の時間、この時間を生み出した三船はすぐさま攻撃に繋げた。


左足を前に置いてブレーキ代わりにし、残った利き足の右足であいの風の首に狙い大振りの蹴りを放った。身体を支える軸足の左足を胸より前に置いているせいでバランスが非常に悪い。右足を相手の首の位置まで上げているからこの攻撃を防がれたり避けられたりしたら致命的な隙を晒すことになる。


当たれば勝ち外せば負けのクソブッパ…この型の名前は“寝首刈り”


私がずっと練習し続けて来たこの技であいの風を超える!

物語とは全く関係の無い話を急にブッ込みます。


ハンディークリーナーを買いました。これスゴイです部屋がずっと綺麗になります。皆さんも買いましょう。


世界を変えろーChange the world

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