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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
3.サイコパスの青春
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仕切り直し

キラーミヨは美世に比べて好戦的で残酷で性格が悪い意味で良いです。そして良く笑います。笑いながら殺しにかかってくるから敵としては恐怖ですね。


美世はキラーミヨに比べて平和主義で争い事を避ける傾向があります。そして笑いません。無表情です。

因みに主人公はいつも無表情で生活しているので外面が良さそうに見えます。

何だコイツ…()()()()()()()


危険を知らせるために脳にガンガンと信号が流れる感覚、天狼さんと立ち合った時と似てる。


(まさか…それぐらいの手練って事なの?)


こいつを天狼さんと同等の存在として認めたくはないけど私は私自身の感覚を信じる。天狼さんにも己の感覚を信じろと教わってきた。だからコイツを強敵と見なして正面からぶっ殺してやる!


三船理華(みふねりか)は年齢は16歳だが伊藤美世と同学年の高校一年生。夢は天狼と肩を並べて処理課に所属しコードネームを貰う事。


この年代では一二を争う実力者として組織から期待されている新人であり、天狼自ら直々に稽古をつけられて日々成長を続け自他共に認められる天才…。そして伊藤美世に先を越されたと逆恨みしている少女。今回に関して言えば完全にあいの風は被害者である。


(憎たらしいあの女から感じる異様なプレッシャーのせいで仕掛けることが出来ない…)


冷や汗が止まらないなんて…まさか私が怖気づいている?そんな馬鹿な!私は実力でここまで登り詰めたんだ!死神のお情けで処理課に入れてもらったコイツに負けるわけにはいかないッ!


フェアプレーの精神と挑発の意味を込めて声を掛ける。


「眼鏡吹き飛んだけど拾わないの?待っててあげるけど…。」


「…必要無いかな。()()()()()()()()()()。」


眼鏡を外すと軌道が視えなくなる制約があったけど今は関係ない。今回は素手と素手での殴り合いだ。軌道を使わずにコイツを血祭りにあげてやるつもり。それに私のあるかもしれないもう一つの能力、異形タイプの能力を調べるのに丁度いい相手だしね。


現段階での美世自身の身体能力は本人でも良く分かっていない。ここ最近は自身の軌道を操作して立ち回っていたので純粋な腕力や脚力などの限界を知らずに今日まで過ごしていた。


もしかしたら三船という存在が自身のスペックを引き出してくれる丁度いい引立て役になるかもしれないと思考を切り替えた美世には怒りも殺意も湧いていない。


もしかしたら過程の途中で三船が壊れてしまうかもとは考えたが考慮するつもりなど微塵も存在しなかった。


「壊れないでね。」


「私はあんたと違って小さい頃から訓練してきたの。身体の頑丈さには自信があるからさっさとかかって来なさいよ。」


「違うよ。身体の方じゃなくて心の方だよ。圧倒的力量差を見せつけられても諦めないでね?」


「言ってろッ!」


三船は再びあいの風に向かって拳を放った。


「ねえどっちが勝つと思う?」


竜田姫は隣で審判員をしている天狼に小声で尋ねた。竜田姫も組織の中でも屈指の能力者。その実力はあいの風を除いて最年少でコードネームを手に入れたエリート中のエリートである。そんな彼女があいの風の変容を目の当たりにして天狼に意見を求めた。


彼女は天狼と同じくらい三船理華の実力は良く知っている。天狼と一緒に彼女をここまで育ててきたと言っても過言ではない。だからこそどちらが勝つのか分からなくなったのだ。最初は三船理華が勝つと思っていた。そもそもの話、この模擬戦はあいの風の実力を測る為と三船の鬱憤を晴らさせて稽古に集中させる為だ。


そして三船はあいの風に一撃を食らわせた。しかしあいの風はすぐに起き上がり模擬戦を継続させている。しかも三船の攻撃を上手く躱し始めた。そんな事はありえないはずなのに。


(竜田姫も何かを感じ取ったか。)


私に何を問いたいかは分かる。能力者は頭部、つまり脳が弱点だ。さっきのあいの風の入った一撃は耳の部分に直撃しているから最低でも目眩が起きるはず。最悪の場合は三半規管にダメージを負って起き上がれなくなっていてもおかしくない。しかしあいつはなんて事がないみたいに立ち上がった。まるで異形タイプのような頑丈さとしか思えない。


それにあいの風から発せられるこの異様なまでのプレッシャー。能力者だからこそ確信をもって感じられる。こんな奴は今まで一度も会ったことがない。彼女もこのプレッシャーを受けていつもの口調では無くなっている。まあこっちが素だから別に変ではないけど。


「あいの風が何かをしでかす時は私が介入する。だから落ち着け。」


それにしてもあのベルガー粒子の禍々しさは何だ。この中で正確に視認出来ているのは私とあいの風ぐらいだろうがアイツのベルガー粒子は異常だ。色んな能力者のベルガー粒子を見てきたがベルガー粒子は文字通り粒子だ。量の多さと動きぐらいしか違いはない。しかしあいの風のベルガー粒子は見ていて禍々しさを感じる。


(でも、何か変だ…粒子の動き自体は抑えようとしているのかあまり動きが見られない。)


ちぐはぐな能力者だ…死神は彼女のこの部分を知っているのか?もし知っていて指摘していないのなら指導者として許せない。今の彼女は異常だ。こんな能力者は見たことも聞いたこともない。


天狼は静かに死神に対して憤り、あいの風を手元に置いて自身で鍛え上げようかと考えていた。そのぐらいあいの風の動きは凄まじく見ている者を惹き付ける何かを持っていた。


そしてそんな感想を周りに抱かせるほどの動きを見せていた美世は三船の動きを見てあることに気付く。


(…分かってきた。コイツの動きには型がある。)


格闘技や武道には色々な型があり、そのほとんどは最適な動きを目指した先に辿り着いた合理的な動きだ。三船の動きには合理性がある。彼女は私みたいにただ殴りかかったり蹴りを放ったりしない。全ては最適にされた無駄の無い動きの連続。見ていてとても心地良い。


特にあの足運びだ。足の指先すら考え尽くした正解の動きを再現している。これは合理性の塊…。間合いの調整や踏ん張りを活かした打撃の連打。


今までの敵は能力を駆使する事はあったが体術を駆使する事は無かったし私もその一人だ。怪腕で殴れば近距離戦は負け無しだったから。無駄なことはしない主義の私が体術を覚えたって無意味な事だと考えてきたけど、彼女の動きを見ていたら価値観が変わった。やれる事はやるべきだ。


例えベルガー粒子が低くても能力者特有の身体能力を鍛え上げ武術を習得すればここまで戦えるようになる。これは良い事を知った。天狼さんと竜田姫さんと三船には感謝の言葉を言わないと。


(良い経験値を用意してくれてありがとうってね。)


急激に動きが良くなったあいの風に異変を感じた三船理華は思考を巡らせる。


(…コイツ急に捕まらなくなった。私の攻撃を見切っているとしか思えない…。)


私が行なっている攻撃は組織が生み出し能力者だけが習得出来る武術、“流道(りゅうどう)


この武術は能力者が他の武術を使用すると逆に動きに制限がかかって弱体化する問題を解決する為に開拓された武術だ。柔道や空手道は人間の身体能力の基準にして形作られた動きの型ばかりで能力者の身体能力では余計な足枷にしかならない。しかしこの流道は違う!組織のメンバーが実際に使用している実戦的な武術であり天狼さんも愛用している素晴らしい武術だ。


対能力者に開発された流道は能力者相手でも通用する…筈なのに何でコイツには当たらないんだ!


さっきから全ての動きを見てから反応して避け続けている。しかも一回も反撃してこないのがムカつく!


「ハァーハァー…クッソ当たれよ!」


声を荒上げても攻撃はあくまで基本に忠実、攻撃の動きは小さく纏めて隙の少ないリスクを負わないのが鉄則。


背後を取った瞬間に肘を突き出してあいの風の首元を狙ったが、それすら見透かされた様な最小限の動きだけで躱してくる。天狼さんでもここまで見切れるものだろうか。


あいの風はこの武術を知らない筈。だって流道はここで教わる以外に目にする事はない。だから外部の能力者は流道を使わないし彼女が組織の人間と戦ったなんて情報を聞いたことが無いから初見の筈なのに…


「もうこれだけ?反撃していい?」


息も切らさずに避け続けた挙げ句にこの言い草とは噂通りの女って訳ね…絶対に殺すっ!

一応三船理華は伊藤美世のライバルキャラとして出しましたが実力は拮抗していないので三船が一方的にライバル視しているだけの関係性です。

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