京都への侵略
突然始まった京都編です。ここで組織がどういった集団でどういう人達が居るのかを描けたらと思っています。お楽しみに。
蜃気楼が椅子から立ち上がり帰りの支度を始めた。もう帰るつもりなの?
「では、私は失礼するとしよう。」
「本当にこれだけだったんですか話って。」
「本当はいくつか聞いておきたい事があったんだが、やぶ蛇は勘弁だからな。上の方には上手く言っておくよ。」
えぇ〜めっちゃ良い人じゃん蜃気楼さん!…てな訳ないか。
「またね!」
竜田姫さんと私が手を振って蜃気楼を見送った。…蜃気楼さんは私と直接会って話をしたという事実が欲しかっただけだったんだろうな。多分これで筋は通した事になるから上の人達には文句は言われない。しかも証人を二人も用意する徹底ぶり…侮れないなあの人。立ち回りが上手い。
「では次は私達の番だ。移動しよう。」
天狼さんが私を誘ってどこかへ向かおうと提案してきた。話するならここで良くない?
「移動?どこへ?」
「京都だ。」
京都?京都ってあの京都だよね?私が修学旅行で苦い思い出を作ったあの場所?
「あの、今日中に帰らなければならないのでいきなり京都っていうのはちょっと…」
「あのゲートで向かうから時間の事は気にしないで!」
竜田姫さんが部屋の壁に備え付けられたワープ用の扉を指さして転移で移動すると教えてくれたけど竜田姫さんも京都行くの?
「京都に行く前に2〜3質問に答えて欲しいんですけど…」
「着いたら説明する。行くぞあいの風。」
天狼さんが強引に私の手を引いて扉の前まで連行した。やだこの子大胆だわ。手汗とか大丈夫かしら。強引なのも嫌いじゃないけど優しく、優しくしてね?
「天狼さん〜どこにワープします?」
「実家の方は避けて宿舎の方にしてくれ。」
実家?天狼さんのご実家は京都の方?
「天狼さん京都弁で喋ってもらえます?」
「京都人に京都弁で話せというのは軽い挑発に聞こえるから口に出さないほうが身のためだぞ。」
私の手を握っている天狼さんの指に力が入って…いだだだだ!痛いです天狼さん!
「ごめんなさい許してください手が潰れてしまいます。」
「ふん…このぐらい大丈夫だろう。お前の手はそこまでヤワではあるまい。」
「痛い痛い痛い痛い痛い!天狼さん堪忍やでッ!」
ギュッーーー
「Aaaaaaaaaaaaaaa!!!」
「天狼さんもあいの風さんもう仲良くなったね!」
姫様違うんですよ!この痛みはガチのやつでネタとかでは無いんです。優しい絡みとかそういう次元では無くて本当に私の指の骨が折れちゃうやつです!
「では行こうか。」
天狼さんに引っ張られて扉に入りその後に竜田姫さんも続くように入って私達3人は京都に向かってワープしたのだった。
「あいの風さん!ようこそ“組織”の京都支部へ!」
扉の先を通ったらそこはTHE和風といった木製の廊下だった。私達が使った扉以外にも似たような扉があるから良く使われる転移先なんだろう。
「修学旅行以来です。京都は。」
「あ、では来た事があるんですね!」
「流石に組織の建物には来た事が無いので案内と目的を話してもらえますか?あと天狼さん手を離してくださいもう子供ではないので迷子にはなりません。」
「いやお前は子供だろう?」
おい、今どこ見て判断した?胸か?身長か?私の隣には私より子供体型の姫様が居るんだぞ。比較しろ比較を。
…あれだぞ?私とお前を比較するんじゃないぞ?ダブルスコアぐらい差があるからね?比較するのはあくまで竜田姫さんとだからね。
「今年で16になります。法律ではもう結婚出来る歳になるんです。手を離してください。」
私の手を離した天狼さんは神妙な顔付きで私の目を見ながら忠告した。
「その発言は今まで居た東京では何も問題無いがここは京都支部…昔ながらの考え方と古臭い風習が残った土地柄だ。結婚とかそういう事は口に出さないほうが良い。無事に帰りたいだろう?」
何?ここは結婚っていうワードがタブーなの?未婚のアラサーとかアラフォーの人達がいっぱい居るからヘイトを買うぞって意味?
「あいの風さん。天狼さんの言う通りだから婚前の女性、しかも能力者が自分からその話題を口に出さないほうが良いよ。」
ここまでビックリマークが語尾に付いていた竜田姫さんがビックリマークを付けずに忠告してきた…これは結構気を付けたほうがいいかも。
「ヤベー未婚ババアが居るんですね。気を付けます。」
「…多分伝わっていないのに否定出来ないワードが出て来たな。」
「…あいの風さんって天然さん?」
あ、居るんだヤベー未婚ババア。絡まれないようにこの二人の後ろに隠れていようっと。
「まあいい。京都にあいの風を連れてきたのは実力を測るためと若手の育成だ。あいの風も組織の一員なら後輩を育成する義務がある。」
「あいの風さんみたいな若くて実力もあって結果も出している能力者と会ったら良い刺激になるんじゃないかって天狼さんと話していたの。目指すべき目標?みたいなのをあいの風に期待しているからお願いねっ!」
「私が言うのはおかしいかも知れないですけど絶対に私を目標にしない方が良いですよ。」
「なんだ、自覚があったんだな。なら何故それが普段の行動に生かされないんだ。」
「やっぱり天然さんだね!」
おい半分冗談のつもりで言ったのにマジな返しを言うな。まるで私が頭のおかしな人みたいじゃないか。もしおかしいとしたらキラーミヨの方で私自身はまともだ。
「案内してもらえます?」
「…死神も苦労していそうだな。」
天狼さんに連れられて日本の古いお屋敷みたいな廊下をあるき続けながらマッピングをして辺りを探る。建物は時代劇のセットみたいで凄いな。かなり古いよね。築…80年ぐらい行ってそう。明治とか大正時代に建てられたのかな?造り自体が今風では無い。お寺や神社のような造りだ。
「東京とは全然違いますね。ビルでは無いですし平屋です。」
「場所によっては2階3階建ての所もある。しかし土地の広さ自体は東京より広いぞ。」
「地下もあるから知らず知らず歩いていると迷子になっちゃうから、ちゃんとついて来てね。」
「私の能力を知っていますよね?迷子になんかなりませんよ。」
「そっか、あいの風さんはそういう能力だったね!」
「知らぬ土地でも迷わないというのは便利だが面白みも無いな。旅は迷ってからが本番なのに。」
そういう考え方もあるのか…確かに私の人生で迷った事なんてどちらを買うかとかでしか迷った事が無いな。迷うって意味合いが違うけど能力の性質上道を迷えないんだよね。
「旅をする時は誰かと行って、その人に付いていくことにします。」
「正解の分かっている間違い程つまらないものは無い。」
「…つまらなくてすみません。」
「天狼さん!あいの風さんをイジメないでください!」
「事実を言ったまでだ。」
腰まで伸ばしたポニーテールを揺らして歩き続ける天狼さんはとても格好良く見えた。ハキハキとした話し方も身体の軸がズレないその立ち姿も高身長な所も私にとっては憧れを覚えるものばかりで嫌な気分は一切しなかった。
「竜田姫さん。私は気にしていませんよ。」
3人で会話しながら廊下を幾度と曲がりながら廊下を進んでいたら大きくて広い道場に辿り着いた。ここが私を連れてきたかった場所だろう。
「ここが京都支部が誇る能力者育成施設だ。」
「みんな〜お疲れさまで〜す!」
「「「「「お疲れ様ですッ!!!」」」」」
道着を来た私と同じぐらいの年齢の男女が一斉に整列して挨拶を返してきた。
あ、もう無理だ。体育会系の集団を見ていると学校の体育会系を思い出してアナフィラキシーショックを起こす。陰キャにとって2回は耐えられない。
「お疲れ様でしたッ!」
処理課の3人の簡単なプロフィールを書きます。
蜃気楼 年齢50 身長177 白髪交じりの髭を生やしたナイスミドルガイ。処理のまとめ役的位置で周りの信頼も厚い。能力は不明。
天狼 年齢25 身長187 黒髪の真っ直ぐとした髪質でポニーテールでまとめている。能力は不明。
竜田姫 年齢19 身長140 茶髪のツインテールをした童顔の女性。能力は不明。
この物語の能力者は結構能力が不明の人が多いですけど敢えてです。単に考えるのがだるかった訳ではないないです。本当です。
 




