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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
3.サイコパスの青春
83/602

独白

そろそろ先生が何をしていたか描きたいので次の次あたりで書きたいと思います。

「私、人を殺す事に抵抗や戸惑いが無いんです。いや、最初はあったのかな?」


私の始めての殺人、あの時ですら少しだけ躊躇した気がする。お母さんの仇だと思って殺そうとしたのに身体が興奮状態になって……今思うとあれは躊躇していたんだと思う。


「最初は慣れだと思ったんです。慣れて人を殺す事に躊躇が無くなったんだって。でも昨日は殺すだけでは済まなかった。」


オリオンさんは静かに私の話を聞いてくれる。


「……コレって先生に言ったりしますか?」


「この話はここだけの話だよ。誰にも話さない。」


「私、先生にとっては迷惑の掛けない優秀な生徒としていたいんです。でも手のかかる生徒としても見てもらいたくて…矛盾していますよね。」


「矛盾する事はおかしくないよ。人は矛盾するものだし対立した考えを同時に持つものさ。」


「…確かにそうかもしれません。今の私もそんな感じです。違う考えが同時にあります。」


一貫していた私の生き方に別の考えが介入している。これは環境の変化によるものなのか、それとも能力の成長によるものなのか……


「殺意は人一倍あると思っています。でもあの時まで一度も人を殺したことは無かった。私…法を破ったり決まりを破ったりするのが本当に嫌いで苦手なんです。」


中学まで一度も校則を破ったことが無かった。信号だってちゃんと守っていたし立ち入り禁止の場所に入ろうとも思わなかった。


「それなのにここ最近の私は校則を破って建物を破壊して人を殺して…その事自体には私はストレスを感じていない…という事に対してストレスを感じてる。…変ですよね。」


何も感じなくなっている事に何かを感じている。昔と今の私との間に深い齟齬を感じ…()()()()()()()()()()()()()


「キミの精神は真っ当だよ。…キミの事は調べてた事がある。だから家族の事や学校でのキミの立ち回りも知っている。」


「はい。」


「ワタシはストレスの多い環境がキミの能力を大きく育ててしまったのだろうと推測している。その能力を上手く処理出来ていないから脳に齟齬を生んでいる。」


「はい。」


「これはすぐに解決出来る問題では無いけど、自覚する事で問題を減らす事は出来る。」


「具体的にはどうしたら…」


「言葉にする事さ。自分の事をもっと深く理解してあげる事こそが解決の糸口だと確信している。だから口に出すんだ。()()()()()()。」


不安定な年齢に加えて強すぎる能力、そして彼女の身の回りの環境が脳に悪い影響を与えている。幼い頃からストレスが多い環境だったに違いない。彼女はストレスに対して鈍感になっているだけで確実に蓄積し続けて精神を病んでいるんだろう。


(…どれもまだ子供の精神には負担が大き過ぎる。)


「………悪い奴を殺す時、清々しさを感じるんです。でもそれって悪い奴を殺したからなのか()()()()()()()()()()…どっちが正解なのか分からなくて、人を殺す事に躊躇がないって事は善人を殺す時も躊躇しないんじゃないかって思ったんです。」


「POISONの幹部達は世間一般的には悪い人達でした。でも話してみたら自分の周りの人達の事を気遣って、思いやりを持っていました。自分達が悪い事をしたんだから殺されても文句言えないって…そんな人達も私は躊躇なく殺しましたし後悔もしていません。」


「POISONの能力者3人も本当は良い子達で環境のせいで過ちを犯してしまったんじゃないかって…徹夜で調べました。彼らも被害者とも言える立場でした。……でも、殺した事に後悔はありません。」


「だってこいつら殺さないと罪の無い人達が不幸な目に合うから。私みたいな人間を生み出さない為にも、平穏な世界を生み出す為にも必要な事だと…」


私はつらつらと語った。言葉を紡いだら止まらなかった。私の思いを誰かに理解してもらえるか分からない…だから話すだけ無駄だと思っている。でも口に出してしまった。


「ありがとう。良く頑張ったね。」


「…もう高校生なのに中学生みたいな事言ってて恥ずかしくなってきましたけどね。」


思春期特有の感傷として過ぎ去ってくれればどれだけ良かっただろう。しかしその思いは勘違いだ。その証拠としてオリオンさんに自分の左手を差し出した。


「…私の左手、殺意に反応して勝手にベルガー粒子を操作してしまうんです。さっきもオリオンさんに反応してしまって。」


オリオンさんは私の左手を包むように優しく触れて何かを確かめるように脈や筋肉の強張りの感触を調べてくれた。


「ベルガー粒子が精神だけではなく肉体にまで影響を与え始めているんだね……キミはもしかしたら多能力者(デュアル・アビリティ)なのかもしれない。」


デュアルアビリティ?どういう意味だっけ…確か2つ以上の能力を持つ能力者だっけ。


「そのデュアルアビリティも気になるんですけど、ベルガー粒子が肉体にまで影響与えるってどういう事ですか?物理的干渉は無い筈ですよね?」


「その通りだよ。でも能力者はベルガー粒子に干渉出来る。キミも知っている筈だよ。異形型能力者が肉体にまで影響を与えている事象を。」


そうか。私の脳とベルガー粒子は繋がっている。だから脳と繋がっている左手にまで影響が出ているのか。


「なるほど…理解出来ました。では、私がデュアルアビリティだって事について聞きたいんですけど良いですか?」


「ワタシもキミの事を非接触型探知系能力者として捉えていた。ワタシも初めて見るタイプだったからキミが何をしようともそれが非接触型探知系能力者としての素質、イトウミヨの素質だと思っていた。でも、あまりにも出来すぎている。」


「先生にも言われました。出来すぎるって。」


「早く気付くべきだった。キミのその身体能力、まるで()()()()()()()()()()()。」


「異形型…その片鱗がこの左手。」


ベルガー粒子に反応して動いていたんだ。私の殺意、つまり脳に反応して異形型の能力が行使された結果が無意識な左手の構え。


「左手だけじゃないね。脳にも及んでいるんだと思う。殺意に反応する左手、そして殺意に反応する(意識)。これがキミが感じている違和感の正体かもしれない。」


ストンと収まった感触だ。ジグソーパズルのピースが綺麗にはまったみたいな…不可解な気持ちが薄れていく。


「…ありがとうございます。多分それ、正解です。感覚で理解出来ました。」


「その感覚は…その客観性はキミの非接触型探知系能力の本質かもね。」


「客観性が、ですか?」


「能力と脳の関係性は話したよね。能力者はその能力に適応した脳を持っている。だからその感覚は非接触型探知系能力者としての唯一の感覚だと思う。だから自分を、物事を客観的に見れてとても良く理解している。」


「…そうかもしれないです。」


確かに感覚として能力や物事を理解し始めたのは私の能力が成長して【探求(リサーチ)】に変わり、自分自身を認識出来るようになった辺りかも。…オリオンさん凄い。ほんの少し私と話しただけでここまで分かるなんて。もしかしたら先生並に凄い人なのかも。

この物語はちょくちょくジャンプネタを挟むんですけど、かなりガッツリと入れたジャンプネタに気付いた人は居ますかね?


死神と呼ばれている世界一の殺し屋、その生徒である暗殺の才能がある主人公。まるで実写映画化したあの作品みたいですね。……銀○じゃないですよ?ヌルフフフ

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