裏ワザ
ギリギリセーフで投稿間に合いました。連勝記録は続いています。
能力の行使は無事に終了し足が元に戻った彼女が確定された。
「…わっ!?誰?」
「落ち着いて!私はあなたを助けに来たOK?」
この状況を見た人からしたらどの口が言うんだと思うかもしれない。でも考えてみてほしい。彼女は無傷だし彼女は私に何かされた記憶も事実も削除されたから実際彼女に対しては何もしていない。つまり私は無罪だ!
それに彼女は監禁されていたと言っていたしさ…これって私が助けた的なやつなんじゃないの?そういう事で良いじゃないの!?
「で、でもあの男達が…あれ?」
「あなたが目を離した隙に倒しました。大丈夫。」
これちゃんと伝わっているよね?私の英語変じゃないよね?
「…これあなたが、やったの?」
兵士達の惨状を見た瞬間、少し身を引いて私から離れる彼女。失礼な!助けてやったのに!
「あなたを助けるに、必要。…あなたの名前は?」
「ハ、ハーパー。…あなたは何者なの?」
なるほどハーパーと言うのかこの残念美女は。…惜しいな。美人ではあるんだけどおどおどしていて残念なオーラーが漏れているのがマイナスポイントだ。雪さんとは真反対の位置に居る美人さんって感じ。
「ハーパーね、よろしく。私は…あいの風。アイって呼んで。」
「…アイ。一応助けれくれたのよね?ありがとう。」
恐る恐るとこちらに左手を差し伸ばしてきたので私も応える為に左手を差し出して握手を交わす。向こうから歩み寄りして来たのは有り難い。これで話が進められる。
「時間が無い、から聞きたい事、あなたから聞く。あなたを保護してもらえるように連絡する。…その後にOK?」
コクと頷いてくれた時に金髪の髪が前のほうに垂れた。ハーパーと話した感じは本当に一般人って感じだ。…歳は何歳なのかな?海外の人って見た目で歳が判断しづらいんだよね。
「ハーパーはどこの国出身?歳は?」
「…アメリカ。ニュージャージー州出身でスタンフォード大学に通っている大学4年生。ねえ!私帰れるの!?」
緊張の糸が切れたのか、押し込んでいた感情が溢れ出した彼女は私に詰め寄って逆に質問をし返した。気持ちは分かるけどここは落ち着いて欲しい。
「あなたの質問は後。私は、ハーパーの事、何も知らない。助けたいけど上手く出来ない。だから私の質問に答えて。」
それからいくつかの質問をして彼女の置かれている情報を入手する事が出来た。簡潔に説明するとこうだ。大学4年生で22歳の彼女は就職活動をしていてその時に仕事の話が舞い込んで来た。給料の額に釣られてOKを出したら捕まって軟禁状態にされた。それからは今みたいに能力で人目がつかないエリアを創る事を強いられていた。
まあ、可哀想にとしか言えないね。運が悪かったとかもう少し立ち回りを気を付けたほうが良かったとか、そんな事言っても仕方ないし結果論にすぎない。
でも普段から能力を乱用していたのはどうなんだ?静かに読書したかったとかレポートに集中したかったとかアホ過ぎる。周りに影響を与える能力を乱用すればいつかバレるしこんな奴らに捕まりもするだろう。ハーパーは残念な美人さん、覚えた。
「助け呼ぶからここに居て。」
ジャミングの装置らしき機械類に近付き破壊活動に移る。これ以外の方法で止める術を持たない私にはこんな野蛮な方法しか取れない。だからハーパー、私を見て引くな。お前を助けるには仕方がない事なんだよ。
「おらっ!」
取り敢えず機械を殴って蹴って剥がして落としてみた。ケーブル類も引き千切って潰して投げつけた。
「さてさてソマホは繋がるかな〜っと…ヨシ!繋がった!」
ソマホで組織に電話をかけて事の顛末を説明する。ハーパーを保護してもらえるようにお願いし私は敵の本丸に殴り込みに行く旨を伝えたらいつも冷静な処理課電話担当の人が慌てふためいて面白かった。
「ーーーという事なので後はよろしくお願いしまーす。…ハーパーすぐに助けくるから待っていて。」
ハーパーにここに居るように指示してから私は通信機の軌道を認識して本丸の居場所を特定する事にした。この通信機は敵が使用していた物でハーパーの話からも2時間前ぐらいまで頻繁に使用していた事を確認しておいた。
通信機にベルガー粒子を纏わせて軌道を創り出す。この通信機は無線タイプだから電波を…
「アイ…そろそろ能力の限界が来てるんだけど解いちゃ駄目?」
「ワタシエイゴワカリマセーン!シャラップ!」
電波を飛ばして通信を行なっている筈だからこの電波の軌道を追えば通信している相手の位置が分かる筈なんだ。例え電波が人の目には見えないとしても電波の軌道自体は視認する事が出来る。
(これって結構な裏ワザだから誰にも言えないし知られないようにしないと。)
この裏ワザは色んな情報のやり取りを過去から掘り起こせるという事だからね。犯罪に応用出来てしまうし様々な人達の反感を買ってしまう。私はこれ以上のヘイトを買うつもりは無い。結界が張られている間に行動に移ろう。
…2時間前の軌道なんて簡単に認識出来るしマッピングしながら軌道を追って行こう。…その前にちょっとだけハーパーに触れておこうかな。
「ハーパー!ヘーイ!」
「へ!?ヘーイ!?」
ハーパーとハイタッチして私のベルガー粒子を纏わせた。これで彼女の身の安全を守ってあげられる。ヤバくなったら軌道を固定するなり転移で飛ばしたり出来る。
「そしてバ〜イ!」
手を振って別れの挨拶を済ませた私はガラスの壁をブチ破り外に躍り出た。…だって階段使うの面倒くさいんだもん!
「バ、バ〜ィ…ハハッ…。夢でも見てた、のかな?それとも…まだ夢の中?」
彼女は目をパチクリとしながら先程までのやりとりを思い出す。…夢ではない、よね?助かった…のよね?
「アイ…か。」
(また何処かで会えるのかな彼女と。)
嵐のように過ぎ去った不思議な人…年上の私を思いやれる優しさと人を殺せる残酷さを兼ね備えた変な子だった。歳は私よりかなり低いと思うのに年上の人みたいに頼りになる。でも年相応の無邪気さもあって何もかもあべこべな女の子だった。
…いつかちゃんとお礼を言いたい。…私を助けだしてくれた小さな騎士様。
「ハーパーは船に乗ったって言っていたよね。」
ハーパーは飛行機で来日してからホテルで数日過ごしてたらしい。それで昨日は港に向かって船に乗り込んで色々と話を聞いたとか。でも内容を理解できなくてほとんど覚えていないって…だから就職活動失敗するんだよハーパー。
私も港の方に向かって歩き続けていたら人が歩いている通りまで辿り着いた。ここはハーパーの射程圏外なのだろうね。
(電波の軌道もこっちの方角だし間違いない。)
2つの情報を元にマッピングを続ける。船と言っても色々とある。ハーパーはアホなのでデカい船としか答えなかった。デカい船なんて個人差があるだろう!フェリーでもデカいと思う人も居るし豪華客船でやっとデカいと感じる人も居る。そういう所が面接で落とされる原因だと思うよ私は。
ハーパーの悪口を愚痴りながらデカい船を探す為に小1時間歩き回っていたら怪しい船を見つけた。船の中には一般の船員とは思えない人達が小難しい機器が積まれた一室の中であれこれと頑張っている様子を視認出来た。
「…ごめんハーパー。デカい船だったわ。」
フェリーでも豪華客船でも無かった。そこに居たのはコンテナを数多く積んで地上からでは全てを見通せない程の大きさの貨物船だった。
「でもさハーパー…貨物船なら貨物船って言おうよ。」
ハーパーはかなり後の方でまた出演します。




