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私は殺し屋として世界に寄与する  作者: アナログラビット
3.サイコパスの青春
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怪腕の使い方

投稿時間遅くてごめんなさい。今週の平日は遅くなりそうです。

最上階に行きたいけどエレベーターはあいつらにコントロールされているから使えない。パイロキネシスに出待ちされていたら嫌だしね。


私は辺りを見回し窓を見つける。


(外から向かってみるか…?)


…出来るかは分からないけど私の身体能力と“怪腕”なら最上階まで行けるんじゃないかな。…ここに居ても仕方ないし試してみよう。


窓ガラスを割って外に上半身を出し上を見上げる。…下は見ない。落ちるイメージを持ちたくないから絶対に見ないもん!…例え落ちたとしても死ぬことはないとは思うけどさ…死なないよね?


上を見て使われそうな所を探しているとちょうど良さそうなものを見つけた。ルートはあそこが掴みやすそう。一階ずつにベランダが設置されているからそこを伝って行けば辿り着けるね。


窓枠に足を掛けて全身を外に出す。このマンションは40階建てと思われるからその真ん中辺りにいる私は20階ぐらいの高さに居るのかな?もしそうならここは50〜60m程度の高さか?あはは…怖い。


(恐がっていても仕方ない!ヨシ…行くぞ!女は度胸!)


足に力を込めてベランダの塀に捕まろうとしたら普通に足を滑らした。


(あ、死んだ。)


重力に引っ張られ落ちる。どこかに捕まろうとしても手が届かない。背筋が凍りつくような感覚で身体が硬直してしまう。


いやっ!こんな事で死んでたまるかッ!


落ちていく感覚から生じる混乱と恐怖を度胸だけでねじ伏せて能力を行使する。


「怪腕ッ!!」


身体から…左手の掌から延長するように怪腕を出現させた。そうする事でリーチを延長させてマンションの壁に捕まろうとした。私は敢えて怪腕の軌道を削除させずに再現し本物の腕のように操作した。


壁に鋭い指先を突き刺すように引っ掛けて落下を防ごうとした結果、数十cm程度の引っかき傷を塀に作る事になったが何とか地面に落下する最悪の事態は防げた。


「ハァーハァーハァー!し、死ぬ…!冗談抜きで死んだかと思った…!」


この怪腕の使い方が完全にスタンドっぽいけど許してほしい。私の血液にはジャンプが流れている。ついでにビル風に煽られて足も流れそうだ。今の状態は左手から延長した怪腕で塀に捕まっているだけで、足は宙ぶらりんの状態だ。地に足を着けて生きていきたい系女子の私からしたら耐えられないシチュエーション。


どうにか怪腕を上手く操作して最上階まで登れないかな…ていうか怪腕って肩から以外でも生やせるのか。知らなかった。そういえば肩以外から生やすイメージをした事が無かったな。


腕は肩から生えるという固定観念に囚われすぎていたのかも。本物の腕じゃないんだからそれこそ足からだって生やせるはずだ。元は身体中に巡らせたベルガー粒子なんだから。


意識を集中させると怪腕と私の腕との位置関係に変化が起きる。掌から生えていた怪腕の付け根が手首に移り、二の腕へ、更に肩から胸の位置に移動した。そして怪腕が私の内側に移動するように引っ込む事で塀と私との距離も近くなり自身の手と足で塀に捕まる事が出来た。今の怪腕は肘から先しか再現されていない。さっきまで肩から先まで再現されていたけど、不必要だったから短くした。


(怪腕ってこんな操作が出来たんだ。ただの武器みたいに扱っていたから思いもつかなかった。)


怪腕は私の腕と重なっても干渉し合わないから私の行動を邪魔する事が無い。これもさり気なく便利だ。…便利なんだけど怪腕は物体や私を触れられる。…なんだこれ?頭がバグりそう。なぞなぞかな?


…いやこの際どうでもいい。実戦でしか使ってこなかった弊害が今起きているけど後でいくらでも実験出来る。今は最上階に行く事こそが最重要。


怪腕の出現位置を肩に再現する。今の私は怪腕だけでぶら下がっている状態だからその関係で私の高度がその分下がっているんだよね。鉄棒にぶら下がっているような体勢だ。


私は怪腕に意識を集中させてある軌道を再現する。そのある軌道とは懸垂のような動作だ。


まあカッコよく懸垂って言ったけど私が脳内でイメージしたのはプールから出る時に勢いをつけて腕を伸ばすアレだ…。そんな貧相なイメージしか湧かなかったけれどもその効果は絶大だった。


怪腕の速すぎる軌道の影響で掴んでいたベランダが全壊し、一瞬で私の身体は真上に打ち上げられた。各階のベランダと私の鼻が擦れるんじゃないかって距離を維持しつつ真上に飛び続ける。


(怖い怖い怖い怖い!!!ベランダを過ぎたと思ったらベランダベランダベランダ…速すぎるよ!!!)


全壊したベランダの破片が地面に落下する前に私が最上階にたどり着いた…と思ったらそのまま通過してしまった。100m以上地上からかなり離れた上空で停止した私は…そこからは重力にお誘いを受け、了承した身体が地面へ向かっていく。


(本当に死んじゃう!!!)


空中で姿勢を崩した事と風に煽られた影響でビルから数メートル離れてしまった。怪腕で延長したとしても届かない!


「リ、【反復(リテイン)】!」


能力を使い私の身体は空中で静止させる事は出来た。出来たのは良いけどその後は?能力を解除したら私落ちるよ?馬鹿なの?


「…ここから入れる保険があるってマジ?」


ある訳が無いのに冗談を口にして冗談みたいな状況を忘れようとしたけど、私の頭は下を向いているせいで状況確認が完璧に行なえた。行なえてしまった。


き、軌道を湾曲させれば行けるんじゃないかな!?今の私は軌道の先を後ろに繋いでループさせているんだ。つまり軌道を湾曲させていると同義!真下に落ちる軌道を真横に向ければ私は()()()()()()()()()()()()()!?


頭の隅に居る理性が「軌道ってそんなアバウトなものなの!?」って聞いてくる。しかし頭の中央に鎮座している狂気が「良いんやで。」って言っているから良いんだよ!


落ちるという軌道を落ちる前に創り出し!その先の軌道を操作して因果を捻じ曲げる!これに賭けるしかない!


POISONが拠点としているマンションの最上階、能力者の3人組が共有スペースとしている一室に突然、空気の流れが乱れ空間に何も無いスペースが出来た。そのスペースに収まるように能力者3人が出現する。


「がはッ!さ、流石に2人同時に…」


リーダーである響は話している途中で頭痛に襲われその場に蹲ってしまう。声を出すだけで頭が割れそうになるぐらいの激痛だ。


それを見かねた焔が肩を貸してソファーまで移動を手伝った。


「アイツ、私の炎で焼き殺せたのかな。」


響は今は考える事も話す事も出来ない…だから剛毅の方を見て尋ねてみた。


「…いや、炎がアイツに辿り着く前に床を砕いて下の階に逃げたと思う。お前も床が砕ける音と振動を感じただろ?」


「本当にアイツ何者なのよ…私を殺すみたいな事言っていたし…」


「俺達と同じ能力者である事は間違いない。だが能力が分からない。」


自分がこの3人の中で一番戦闘面で詳しく、あいの風と長く戦っておきながら…アイツの能力の詳細が分からなかった…不甲斐ないッ!


「…分からないってどういう事だ。」


ソファーに座ったおかげで少しだけ回復した響が会話に参加する。剛毅が戦った相手の事を分からないとは、こっちが訳が分からないと言いたい。剛毅は昔から勘が鋭い。特に闘いの中での勘の鋭さは凄まじい。


「響!大丈夫なの?」


「俺の事は良い。アイツの事を話せ。分かっている事全てを。」


天井を見上げながら頭を片手で押さえて頭痛を和らげる。そうしないと会話に集中出来ない。


「敵の名前はあいの風、恐らく偽名だろう。女性で体格は焔と似た感じだ。だが身体能力は俺を上回る…肉弾戦では勝てない。」


「お前が勝てないとかどんな能力だ?身体を鋼鉄に変化でもさせたのか?」


「いや外見に変化はなかった。しかし俺より硬い肉体と俺とは比べ物にならない素早さがある…そしてこれが一番分からない点なのだが()()()()()()()()()()。」


「重い…?それは体重がって事か?」


「そうだ。俺のパンチとタックルでも1ミリもその場から動かす事が出来なかった。力が強いとかそういう次元ではない。」


ブレインである響に情報を渡して何とかこの状況を打破する手を考えつかなければ俺達は殺される。あの化け物はまだ下の階に居るのだから…


(訳が分からない。どんな能力だ?重いのに素早い?なぞなぞか?)


「あ、あとあの女!銃みたいなので剛毅の装甲を砕いたんだよ!」


「銃?そういえば剛毅の胸、大丈夫か?」


「肋骨にヒビが入っているがこれぐらい問題ない。問題なのはあいの風が使った銃だ。恐らくアレも能力だ。突然左手に銃が現れたと思ったら撃たれた。」


「それは…アイツには2つの能力があるという事か?」


「そんなのチートじゃん!」


私もみんなも1つずつしか能力がないのに2つもあるなんておかしいよ!


「1つだけでも厄介なのに、それが2つ…?」


これは…逃げ一択だな。


「ここから逃げるぞ。あと3分もすれば転移出来る。時間を稼ぐぞ。」


俺はエレベーターを使えないようにしてから2人にこの後の話をする。


「転移出来る範囲はそこまで遠くへは行けない。人通りが少ない道に転移させるから剛毅は俺を背負って出来るだけマンションから離れろ。焔は後ろを警戒しつつ剛毅について来い。」


「それしかないな。命あっての物種だ。」


「りょ〜。」


「話は以上だ。ふぅ…」


俺達3人が生き残りさえすれば何度でもやり直せる。今度は田舎のほうで活動すればあんなヤツとはエンカウントしづらいだろう。


「それにしても本当にアイツの能力何なんだろう。私の炎を直撃させれば殺れるのかな…。」


「もうアイツの事は考えるな。逃げる事だけ考えろ。」


「だってさ〜まるでスーパーマンみたいな能力じゃん。強くて硬くて速いなんてさ〜。」


「もしそうなら空だって飛べるかもな。ハッハッハ…」


3人して窓のほうを見たらコチラに向かって来る黒い服を来た女が見えた。窓を突き破って侵入して来た女は床を転がり綺麗な受け身を取り、そして立ち上がり酷く冷えた無表情のままその禍々しい眼光をコチラ向けるのだった。

ブクマ高評価ポイントありがとうございました!モチベが上がった気がしたので投稿頑張ってね作者!

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