異形VS探知
早めに投稿しました。
硬かったな…皮膚や骨とかの外側より内臓類というか中身が硬かった。間違いなく人間の硬さじゃない。しかも衝撃を殺された。
(咄嗟に後ろに引いたか。)
硬いだけなら割るように殴れば良いのに生き物特有の柔らかさもあるから衝撃を受け流されるな…
取り敢えず今分かっている情報をまとめてみたけど、一番欲しい情報である相手の能力詳細が分からないのは辛い。まあ分からなくてもゴリ押しで勝てる相手ならそれでもいい。
このフロアにも監視カメラがあるね…出来たら監視カメラに写っていない死角に入って“銃”か“怪腕”を使いたいな。相手にコチラの情報を流したくない。最悪監視カメラの映像を外に中継でもされていたなら目も当てられない。
いや、壊してしまうか…
腰から拳銃を取り出して監視カメラを潰していく。数は2つだけだ。
「そんな事をしなくても俺達の闘いを邪魔しには来ないさ。」
壁に埋まった身体を這い出すように抜け出し脱出する巨漢の男。見た感じダメージはそこまでかな?
「私の能力を知られたくないだけ。あなたの増援が来る前に殺しちゃうからそんな心配はしていないよ。」
「はァッ!良いぜアンタッ!名前を聞かせてもらっても?」
「…あいの風。あなたは?」
「あいの風…?あいの風か…良し、俺は大門寺剛毅!」
カッコいいね。マンガの登場人物名みたいだ。
「見た目まんまって感じの名前だね。両親は先見の眼でもあったの?」
「俺に両親は居ねえ。自分達で付けたんだ。」
「羨ましいね。私も自分でカッコいい名前を付けたかったよ。」
「カッハッハッハッ!そんな事を言われたのは生まれて初めてだッ!良い名だろッ!」
「名前負けしていなかったらもっとカッコよかったよ。」
「ハッハッハッ!言うなぁお前ッ!」
男のベルガー粒子に変化が起きる…臨戦態勢に入るって訳か。まあ、本当はこのまま勝負を決められるんだけど、能力の詳細を処理3課に報告したほうが報酬が増えるし見届けようかな。
様子を伺っていたら男の皮膚に変化が生じた…肌の色に密度が出て来たと思ったら皮膚自体に密度の変化が起きる。厚く硬くヒビ割れてまた固まるを繰り返す。まるで岩石の塊みたいに。
「これが俺の本気だッ!俺はこの力を“ゴーレム”って呼んでいるッ!」
「大門寺ゴーレムって改名しなよ。そっちの方が面白いよ。」
結構凄い能力だな。外殻を作って全身鎧みたいに纏っている。指を折っていた筈だけど外殻を固めたから折れた方の拳で普通に殴ってきそう。
“ゴーレム”と名付けるからには外殻に自信があるとみて良いよね。ヤツの能力は肉体に内と外で2つの骨格を持ち合わせるって感じかな。外骨格だけなら割るだけで済むのにな。
あの外骨格の硬度によるけど私の銃でも貫通出来なかったら綺麗に殺せないな。報酬の為に外傷は出来るだけ少ない面積で済ませたい。あれだけ変化した肉体は良い研究資料になる筈。
「本当に面白いヤツだッ!!」
お、早いッ!見た目に反して動きは素早い…流石は異形型能力者。
指が折れたはずの右腕で殴りかかってくるあたり、負けず嫌いそうだな。そういうのは嫌いじゃない…ぜッ!
私も右腕で受け立つ事にした。左足を素早く踏み込み腰を回す。この動作を入れるだけでも先程とは比べ物にならないぐらいに威力が増し完璧なモーションから繰り出された拳は岩石の様な拳とぶつかり室内の空気を破裂させる様に震わせた。
「うおッ!?マジかッ!」
嘘だろ!?この状態のパンチを正面から弾くのかよッ!?しかも拳を完全に押し戻された…!?堪らねえッ!もっとだ!もっと殺ろうぜッ!!!
(腕が痺れた…生き物の硬さじゃないよゴーレムくん。)
衝撃自体は防げないから私の肉体に響く。骨は…折れていないけどバカ正直にやり合うとコチラばかりダメージを食らってしまう。でも相手の拳の表層は割れた。強度はそこそこって感じだ。これなら本気出せば割れるな。
「大門寺さん、今の体重いくつ?」
「あぁ?何だ急に?」
「床抜けたりしないの?」
「それなら心配いらねえよ。ここで一回トレーニングをした事があるがその時は床は抜けなかった。下の階の連中から苦情が来たけどな…」
「じゃあこのまま殺り合っても問題無いですね。」
「ああッ!殺り合おうぜッ!!」
そこからは激しい格闘戦が続いた。お互いに拳を放ち、蹴りを放つ。どこかに当たれば衝撃音が鳴り響く戦場。
「あいの風ッ!テメー体重いくつだッ!おかしいだろッ!」
「女性に向かって体重を聞くのはマナー違反だろ!」
重たいって言いたいのか!事実だけど!私は重たい女だという自覚はある。だけど人に指摘されるのはまた別問題であり業腹だ…貴様には死んてもらう。
「ふぐぅ…」
相手の姿勢が低くなったタイミングに左手で裏拳を放ちゴーレム君の側頭部に決まった。相手はたまらず姿勢を崩して床に膝をつき、私は裏拳を放った勢いのまま一回転して右手で相手の後頭部目掛けて殴りかかり床に叩きつけた。
体重が300kg近くある巨体が床に叩きつけられた影響で床面に放射線状のヒビが入り、その衝撃でマンション全体が震えた。
(本当に硬いなこいつッ!さっさと壊れろよッ!)
動く石像に向かって蹴りを放ち壁まで蹴り飛ばす。サッカーボールを蹴るような軽いモーションだったが相手は300kg近くある生き物だ。もはや人が介入出来る次元を超えている。
(ハハ、やべえぐらいに強えなコイツ。)
意味が分からないぐらい早い…しかも硬え…もしかしたら俺より硬いのかもしれない。本当に意味が分からねえ。
(だけど…だからこそ、闘いはおもしれえんだよォ!!)
頭が、脳が開かられる感覚!懐かしい感覚だ。俺がまだ弱っちい時に格上と戦った時と同じ…こういう時は力が沸々と湧いてくる。
(待ち焦がれたぜッ!こんな強敵を待っていたんだよォ!!)
「なあッ!あいの風ッ!俺の一撃を受けてくれないかッ!?」
何か策があるのかな?う〜ん…まあ良いかな。これがコイツの上限っぽいし、岩石みたいな顔からでもすっごいワクワクしてる表情が読み取れる。受け止めてあげよう。それも女の器量だ。
「ええで。」
「感謝するッ!!!」
右肩を前面に押し出すようにしてタックルを仕掛ける。前にこれをトレーラーにやったら大破した。そのぐらい威力のあるタックルを自分より小さい女に向かってやるのは気が引けるが…コイツなら大丈夫だろッ!
一歩目を踏み出した瞬間、床が割れて破片が後ろに飛ぶ。二歩目を踏み出したら床に全体にヒビが入る。三歩目には時速60kmに達する。
…四歩目にはあいの風の間合いに入る!殺り合って分かったがコイツの間合いの絶対感はすげえ…間合いに入ったら何も出来ずに吹き飛ばされる。だから…俺の全力でコイツの間合いを崩してやるッ!
(…最後は特攻か。な〜んだ、期待外れにも程がある。)
私の間合いまで近付いてきたけど私には【探求】がある。だから間合いの測り方は多分この世界でもトップクラスだと思うんだよ。
だから相手のタックルに合わせて左足を上げヤクザキックを放った。私はその場で蹴りを放ち敵は再び壁まで吹き飛ばされて壁にめり込み大門寺は動かなくなった。
(あー…この痛みは…不味いかも。)
衝撃が尋常じゃなかった。足から頭の天辺まで衝撃が走った。特に直接タックルを受けた左足に痛みがある。多分骨が折れてるな…。
軌道を固定しても骨が折れることがあるのか…やっぱりここが改善点になるな。衝撃は防げないこの制約が文字通り足枷になってしまった。
【探求】で大門寺を確認したら意識を失っている事を認識出来ている。だから今ここで整えよう。
私が相手をヤクザキックで飛ばした軌道を認識、その軌道を【削除】このプロセスにリソースを割いて【再生】を実行する。
(焦らずに実行しろ…相手は気を失っている。確実に左足を戻せば大丈夫。)
「ふぅ〜…【再生】」
戦闘パートは一話で長く描くより一話一話区切り良く終えて投稿出来たらなと思っています。




